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とある人物達が歩んできた道 ~ 予定は…狂っていく ② ~

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侍女の後ろを付いて行きながら寝ぼけた脳みそを起こして、冷静に立ち回れるように神経を研ぎ澄ましていく。

流れる様に案内される…応接室という名の監獄に!だけどね、私はすぐに出ていくわよ!この監獄からね!!だってね!無策ってわけじゃないのよ?

この状況を打開してくれる頼みの綱がある、今日は予定があるのよ!
相手が王族であろうと、のらりくらりと躱して私を連れて行ってくれそうな気がする存在!姫ちゃんよ!

策なんて大層なものじゃないわよ?私が思い描ている道のりはこうよ。
時間になったら、予定していた取引先へ行くという報告をね、律儀な姫ちゃんなら絶対にしてくるわ、こういった大切な要件とかを使用人に託す、なんて行為はしないわ!たぶん!
挨拶がてら絶対に、応接室に来るわね、扉を開けようが開けなかろうが、ドア越しからであろうが!声を掛けてきた時!その時が千載一遇の逃げるチャンスよ!
姫ちゃんから見て因縁の相手っということは、相手からしても姫ちゃんとは何かしら縁がある相手!お互い、会いたくない相手だったら、事はすんなりと行くと思わない?

その時が来たら、さりげなく?強引に?どんな方法でも構わないわ。一緒に取引先に出るのでお暇しますと、囁く様に流れる様に強行突破をするだけ!そうすれば逃げれるわね…後の事?まぁなんとかなるでしょ?きっと。

純粋に予想外なのよ、まさか、あいつが、ここ迄、積極的というか、最終手段というか、外堀を埋めるために、王族としてあるまじき行為、貴族の家、しかも本家ではなく、側室の家に訪問するなんてね、普通はあってはならない出来事なのよ?王族であれば、私達のような下流貴族なんてね、呼び寄せればいいのよ。…だから、彼がここに現れる何て微塵も考えていなかったわ…

監獄に案内される直前に最後に呼吸を整え、覚悟を決める、が!その覚悟も部屋に入った瞬間に砕け散り、直ぐにでも逃げ出したかった、部屋に入ってきた瞬間に聞こえてきた会話が。もろに引火寸前の爆弾だったから…

お父様?身内の恥部というお言葉をご存じあられませんか?何処のどいつが、王族に娘のお見合いについて相談するのよ!やめてよ!一番話を振ってはいけない相手でしょ!!

末席の!貴方も貴方で何真剣に話を聞いているのよ!!立候補させないわよ?絶対にさせないわよ?周りから固めてきたら二度と王都には近寄らないようにする!!

嗚呼、いけないわね、心を切り替えないとね。心臓が落ち着かないと冷静な判断が出来ないじゃない。それに、こういった場で感情を露にしては指を指されてしまうわね。
お父様の為にも、しっかりと切り替えていきましょう、表情は常に凍り付かせ、相手に感情というか存在を感じさせないようにする、私はただの飾りよ、そこにあるだけの置物。呼吸すら静かに…

私の全てを側室の娘へと切り替えていく。

貴族同士の会話に口を挟まないようにそっと、気配を殺しながら存在感という物全てを空気に融かして歩み寄る…目的の場所は、お父様の傍。
側室の娘として正しいポジションとして、お父様の傍に立ち、表情を凍らせて世界の色全てを抹消させ…待機しようとしたら
「聖女様、そんな、お立ちにならないでください、どうぞ、お掛けになってください」
末席が立ち上がって慌てながら自分の隣に座るように声を掛けてくるけれども、貴方の隣はダメでしょ、座るのであれば、お父様のとな…お父様の隣に椅子が無いわね。仕方がないわね
この来客室である応接間を使うのはお父様しかいないから、お父様用の一人用の椅子に、来客用の大きめのソファーしかないのよね。

ちらりとお父様に視線を向けると『座りなさい』という視線と共に頷かれるので拒否権は無いわね…

大きめのソファーに淑女らしく優雅に座ると、末席が笑顔で口を開く
「今回は、突然の訪問だけでなく、貴重なお時間を作っていただき、誠にありがとうございます」軽く挨拶をしてから、どうして自分が訪問したのか理由を話してくれた
完結に説明してくれる内容だけれど、困ったわね、これは、どうしようもないわね。
訪問理由も至極まっとう、呼び寄せないのも当然よね、これは下手に呼び寄せれない、友人が帰省してきたので、気兼ねなく挨拶に出向いたという体を取れる、だからこその、アポイントメント無しでの訪問ってことね、彼としても予想外な点があるとすればお父様がご在宅だったってことでしょうね。

少々強引で尚且つ危険な行動をしてくれた勇気は認めるわ、だけどね、大きな問題があるのよ。

政権争いに、私が参加するわけにはいかないのよ。それは出来ない。絶対に。

そう、あり得ないことである、王族が、直に足を運んで、これから起きる政権争いに個人的に支援の申し出をしてくるなんてね、あり得ないこと、してはいけないことよ。
権力も伝手も何も側室の娘にお願いする内容じゃないわよ。

聖女としてのステータスが欲しいってことなのね、今にして思えば私をそれに仕立て上げたのも、これを見据えて、ってことなのね、そして、聖女として活動していた私が傍にいて彼に対して声明を出すということは、教会の全てが彼を支持しているとことに繋がる。司祭様の様な方が直接、誰かの肩入れをするのは良くないけれど、あのひと時だけでも医者として活躍し、見た目も伝説の聖女様のような雰囲気を持つシスター…教会に正式に所属していない、けれども、教会の保護下にあるような雰囲気を持たせてってとこ?

複雑な思惑があったのね。民衆の支持を得るのは良い事だけれど、今更、何を活動するのよ?王位継承というのは既に現王が次の王を決めていて、後はもう儀式だけでしょ?
…なら、わざわざ、頼みに来る必要なんてないわよね?考えられるとしたら、今回の王位継承、次代の王を決める方法はいつもと違う可能性がある?

事情を全て知ってしまうと後に退き返せないわね、どうしたものかしら?

考えている時にお父様が険しい表情を一瞬だけしたのが見える。それは、そうよね、お父様の派閥は…残念ながら末席側ではない。

つまり、お父様としてもこの話題は危険な話題なのよね、敵の派閥のTOPが頭を下げに来ているという状況…自分の派閥の人がこの状況を何かしらの方法で知ってしまったらどう思うのかしら?お父様としてはも、敵の情報を得る降ってわいた幸運でもあり一歩間違えれば危険な状況ってことね。

私の返答次第でお父様の進む道は変わってしまうのでしょうね。そういう意味も含めて、政権争いに私は関われないわよ。

今の状況で、私が自分勝手な考えで、政権争いに参加するという表明をすること、それ即ち、家との断絶を意味する。
この状況下で参加するなんて言えば、末席からすれば、娘さんを引き抜いたという部分、その部分を王族として責任を取るということ…それ即ち、側室確定なのよ…そうしないと私と、お父様の立場が危うくなるから。

はぁ、これも一種の搦め手って捉えられてもおかしくないわね…

そんなに私が欲しいの?

そんな風に思うのは自意識過剰じゃないかって思うでしょ?違うのよ、あいつから受け取った服が、本当の本気っぽいのよ、一生傍に居たい相手に送るものなのよ。
姫ちゃんの13歳、その誕生日会に着て行ったら、後日、姫ちゃんから教えてもらったのよ、ある土地の風習で、その色を特別な箇所に添えて服を送る、その行為には【あなたの事を想っています、添い遂げたいです】って意味が含まれているのよ…知りたくなかった、知ってしまったら、どうしても、意識しないようにしても、ふとした瞬間に意識しちゃうじゃないの…

お父様も、これには、どう返事を返すべきか悩んでいる、それはそうよね、お父様の派閥は遠からず…アレの派閥側だもの、お父様としては中立を演じているけれども。遠回しに、ね。下手な判断をしようものなら…命の保証ができやしないわ。

全員が、今この瞬間、この場で、命を預ける場所を選べと言われてしまっている状況。
お父様と派閥とか、貴族としての立ち位置とか、今後お父様としてどう動いていくのか、その様な未来の話をしたことがない、そんな状況で、突然、こんな決断を迫られるなんてね。
お父様もこちらをチラチラと視線を向けてくる辺り、私の意見を聞きたいのね。なら、答えは決まっている

「無理よ、私は」わたし は そのひ は だめ よ あいつを ころす ひ だから
「あの街に所属する以上、何処かの派閥に与することは出来ないの」そう くみした けっか わたしは しんだ
「大変嬉しいお誘いですが、私の背負う物を考えて頂けると幸いです」おんな と して いきた けっか うらみは はれない

私の言葉で周りが静まる。
そうよ、あの街に所属する手前、何処かの派閥に与するわけにはいかない。派閥に与し失敗したら最後なのよ、あの街は王都管轄だもの、肩入れした相手が政権を握るのであれば、問題は無いわよ?でもね、失敗したら、私達の街に迷惑をかけてしまう。迷惑で済めばいいでしょうけれど、それ以上の最悪の結果に繋がるでしょうね。特にアイツが時代の王になってしまったら、もう、死ぬしかない未来が待っているのよ。

それにね、政権争いにさんかしちゃったら 自由 が 減る、相手の裏を取れない、来る日が来たのね、試練の時が、おはよう、未来の私。

【おはよう おろかな かこの わたし】

コンコンっと監獄に誰かが訪れたのかドアを叩く音がする…
この場所に来る人なんて決まっている姫ちゃんだろう、当初の予定通り ひめちゃん あのこは きけん この重苦しい状況から逃げる為にも利用させてもらうわよ。
思考に割り込んでこないでよ、そうね、ええ、そうよね、あの子が、私達の目的を知ったら、絶対に身動きが取れないようにするでしょうね。そう あのこは かしこい

末席の王子がドアをノックした相手に部屋に入る許可を出すと、ゆっくりとドアが開き姫ちゃんが丁寧なお辞儀と共に入ってくる。
その姿を見た末席の王子は驚愕の表情で見つめている?やっぱり二人は知り合いだったのね。

姫ちゃんが珍しく丁寧なお辞儀と共にフルネームを名乗ると、末席の王子が椅子に座っていたはずなのに、即座に片膝をついて首を垂れる!?どういう状況!?

お辞儀を終えた姫ちゃんが王族を見下ろす、あり得ない光景にお父様も私もどうしたらいいのかわからない、流れを見守るしか出来ない。
「そう、やっぱり教えは守っているようね、教会と共に歩んでいる、その時点で可能性が高いと読んでいたけれど、読みは当たっていたわね。良かったわ、私の名前を聞いても反応が無ければ、それはそれで、良かったのにね、貴方も私も」
姫ちゃんとは思えない程、心臓をわしづかみにされたような感覚、なにこの強烈なプレッシャー?迂闊に発言したら握りつぶされそう…そんな状況で、末席の王子は汗を薄っすらと浮かべながら頭を垂れている。
頭を垂れながらも、困惑しているのか震える声が上下関係を明白にしているのが伝わってくる。
「滅相もございません、我が一族、例え王族と混じろうとも、使命を忘れることはありません。まさか、不敬ではあると思いますが言わせていただきます、巫女様が生きていらっしゃるとは、知りませんでした。過去のものだと、巫女は、昔に、滅んだと…」
その言葉で納得がいった、姫ちゃんが持っている巫女たちが残した遺産、所持しているだけで王族をひっくり返すことが出来るほどの遺物…
そんな大層な物を持っていれば、絶対に王族は監視する、なのに、それらしき人物に会ったことがない、つまり、王族は、巫女が滅んだと判断していた。

そして、遺物は何処かに消えうせたか、王族が知りえる巫女の末裔が死んだときに写本を手に入れ燃やしたか…

だから、姫ちゃんは自由に動けていた、そして、巫女の一族である聖女の名を語る人物がいても、慌てる必要がない、だって、それが偽物であると知っているからこそ、放置しても問題が無いと、今後、聖女の名を語る者、その全てが偽物だと断定できる。

姫ちゃんがフルネームを滅多に言わない理由、込み入った事情があったのね。
名前の一部に知る人ぞ知る内容、寵愛の巫女である証しが含まれていたと、考えるべきね、だって、姫ちゃんの名前を聞いて末席は確信に至っていたもの。
王族が警戒するような名前、そりゃ、フルネームを名乗るのを躊躇うわね…
「巫女である私が、力を貸すわ、その代わり、ある条件を飲んで欲しいの」
とめろ
思考に急に割り込んでこないでしょ、ぇ?急になに?姫ちゃんを止めるの?

「貴方は王の座を諦めなさい」
とめろ
ど、どうやって!?姫ちゃんを止めればいいの?でも、どうやって

「貴方が王の座を狙えば、無用な犠牲が王都の礎になる」
とめろ!
む、無理よ…この状況を止めるなんて力づくしかないじゃない、そんなの、無理よ、愛する娘に手を上げるなんて

「で、では、僕は、どうしたらいいのですか?」
とめろ!!
駄目よ!!母としてそこだけは絶対に譲れない!!それに気が付かないの!?

姫ちゃんは片時も、私達から視線を外していない、迂闊に動けば即座に殺されるわよ?
…この殺気は本物よ、人型と対峙している時、それ以上、明確に、何かあれば、私を殺す意思を感じる。

「決まっているでしょう、アレの元へ下りなさい」
その一言で私の中の獣が暴れ出す、想像できない程の怒りの感情が膨れ上がっていく。
怒りだけじゃない負の感情全てが、留まるところを知らない、怨念、怨嗟、怨讐、ありとあらゆる負の感情で心が染まっていく。

ゆるせない

私の意識が染まりかけた刹那、声を荒げて今すぐにでも負をばら撒き世界を呪いの渦中へと誘おうとする私の代わりに末席が声を荒げる
「できません!あれを野放しにしては、あれに権力を渡せば世界が滅びます!」
先ほどまで膝をついて頭を垂れていた人物が足を震わせながら立ち上がり勇気を振り絞り反論するために立ち上がる

その姿を見ても、姫ちゃんは表情を崩すことなく淡々と告げていく。自分の思惑を
「ええ、そうね、だから、貴方が鎖となりなさい、あれの鎖となって、動けなくしてあげなさい、それが出来る王族は私が知る限りでは貴方以外に居ないわ」
「いくら、みこさま!!っっ…」一瞬だけ声を荒げたかと思えば、直ぐに沈黙する
「…うん?あれ?。巫女様、あの、申し訳ありませんが、ご説明をいただいてもよろしいでしょうか?」
末席の王子は姫ちゃんの言葉の意味を瞬時に理解したのか、自分が考えていた内容と食い違っていたのか、荒げた声がすぐに冷静な声に切り替わる。

その一言に姫ちゃんもニヤっと悪いそうな笑みを浮かべ、ほらほら座って座ってと末席の王子を座らせ、よりにもよって私の膝の上に座ってくる。
この子は、恐れを知らないの?今の今まで貴女を殺そうとした存在の上に、それを知ったうえで、すわ…なるほど、二つの意味があるのね。

私が変な動きをすれば殺すし、私がそんなことをしないと信じて身を預けてくれたのね。

後者であれば、どうしようもないじゃない。

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