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とある人物達が歩んできた道 ~ 予定は…狂っていく ③ ~

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沸き上がった負の遺産が徐々に静かになっていく、その最中も、姫ちゃんが今後どう動くべきか説明を続けていく、正直に言うと説明の全てを聞きとれている自信が無い。
凡その内容は聞き取れている、そして、どうして止めたのかその理由も説明を始めていく。
無理にでも末席の王子が王座を狙った場合、どれだけの規模の人が死に、王都、いいえ、この大陸における損害がどれ程までに膨らむのか、未来の私が閉じたストーリーのその先、どうなるのかも姫ちゃんは予想出来てしまっているのね…
違うわ、知っているのか、悲劇を。それを悟ったから未来を変えることが出来る寵愛の巫女を止めたかったのね、惨劇を知る私は。

末席の王子も、姫ちゃんの意見が正しく、間違っていないと理解しているが、頭で理解は出来ていても感情では納得できていないのでしょうね、辛酸を舐めたような表情をしている。

そうよね、自分が王に成るのだと、あの時、生きて帰れた奇跡を目の当たりにし、騎士様の死を受け入れて、打倒すべき悪を見据えて…
世界をより良くする為に、目指していたのでしょう、今までの努力を蔑にする様な一言、努力の先を諦めろなんて言われたらね。誰だって、苦しい表情をするわね。

湧き上がる憎悪と向き合っていると段々、意識がぼんやりとしてくる、世界の色が、境目が、境界がわからなくなってくる…視界があいまい、音だけは、認識できている。

「最後の質問よ、貴方は、全てを失ってでも、王という席に座りたい?貴方が、守りたいものは、何?プライド?それとも」私が守りたいものは、もう、いない、いないから全て消えればいい…違うわ、守りたい物が無い、それは違う、あの人が守りたいと願ったものを守る。遺志を継ぐのよ
「その質問は卑怯です、巫女様…それを言われたら僕はもう、選ぶしかないじゃないですか」選んだ、私は選んだ、全てが滅びようとかまわない、私とダーリンが生きた世界さえあればそれでいい…死者は蘇らない、貴女の行った結果でわかっているでしょう?
「そうよ、それでいいの、正道を歩むのだけが正義じゃない、いい?ああいう手合いは後ろからやんわりと手綱を握ってあげるのが一番よ、下手に反発すれば、あの手のやつは犠牲を喜んで作り上げるわよ」正道を歩めないから邪道、邪道こそが正道、そんなものはどうでもいいのよ、そんなものは周りが勝手に決めるだけ、私はわたしはだーりんといっしょにいきたかっただけ…その結果、この大地が、いいえ、この大陸中、人が住めない大地になる、多大な犠牲を生み出すことになる、貴女の嫌悪する存在に墜ちる、その考えは間違っている。世界を愛し、人々の生活を幸福を、守ると、闘うことを決めた騎士様の誓い、騎士道に反する考えよ。愛する人の考えを否定するのは間違っているわ。

「貴方が王を目指した結果…いいの?貴方の大切な存在が不幸になっても?」

その一言で、末席の王子は全てを理解したのか「お願いします。お力をお貸しください」荒げていた声が完全に消え、心が折れてしまったのだろう。
王の道を諦める声が、聞こえてくるのと同時に、未来の私からの声が聞こえなくなってしまった。湧き上がる憎悪も燻ぶる様な火もなく、消えて行こうとする。本当にそこにいたのか怪しいくらいにゆっくりと消えていく…

たぶんだけど、未来での姫ちゃんは、この件に関わっていなかったのだろう

今、この瞬間に未来は変わってしまった。未来の私では巫女の加護程の強力な道がない、未来が変われば彼女の思念も途絶えるという事なのかしら?
それとも、彼女が歩んだ道から大きく外れてしまったから、彼女の無念を晴らす道筋が消えてから?…答えはもう返ってこない。

未来の私はもう…無念を晴らすことなく、消えてしまったってことになるのね。
消える間際に、お願い、なんて言わないでよ。貴女から受け取った未来からの情報を頼りに敵の裏を突く予定だったのに、それすら叶わないじゃない…
貴女からの声が無いと無念を晴らすのは難しい、諦めが肝心というけれど…
世界全てを巻き込むことは出来ないけれど、貴女を穢した人くらいはこの世界から消して、私も消えることを考えたりもしていたけれど…だめね、私は本当に未来が、先が見えていない、行き当たりばったり、嗚呼、だから馬鹿だのなんだの言っていたのね。その通りよ、愚かな私…何も見えていない愚かで愚鈍で馬鹿な私。

ごめんなさい、無知で、ごめんなさい、知恵が無くて、未来を予期する能力がなく、常に一手も二手も遅い、馬鹿で愚鈍でごめんなさい。

姫ちゃんが前面に出てきたという事は私では、姫ちゃんを出し抜けない、どう足掻ていも無理よ。
彼女の才覚は身近に居た私が一番知っているもの。
姫ちゃんがあのドアを開けて、正式に名乗った瞬間に何処かで、私は諦めていた、未来の私が願う未来を歩むのを諦めたのだと思う。
嗚呼、王都はダメね、私の思考がぶれる…

姫ちゃんと末席の会話を聞いていると、姫ちゃんの思惑もわかる、アレを野放しにするのが一番良くない、王という迂闊に動けない椅子に座らせて、民衆を盾にして縛る。

アレを抑える為に、民衆の総意という首輪を用意して、民衆の声を聞く立場に上り詰め、その鎖をもって裏で操り、この先に待ち受ける未曽有の危機を回避するのが正解なのね。

その考えに賛同してしまう、それが一番無血で済むのだと愚かな私でも理解できる…誰もが悲しまない未来へと導いてくれる頼もしき存在、母としては誇りと思う部分だけれど、女としての恨みは晴らせそうにもない…ごめんなさい、女としての恨みを晴らせれなくて、消えて行ってしまった未来の私、【お願い】は叶えれそうもない。

そこからもう、上の空…ぐちゃぐちゃになってしまった感情も、想いも、記憶も、ぐっちゃぐちゃで、自分がどの自分なのかもわからない。
嗚呼、姫ちゃんも未来からの情報を受け取ったときにこういった気分になったのかもしれない、だとすると、情緒があの時みたいに突然、乱れる日がまた続くのかもしれない。

私が出来るのはそれを支えて慰めて、落ち着かせることしか出来ないのだろう…

話し合いは長く続いてみるみたいで、徐々に気持ちの整理も付いてくる、短いようでとても長く感じるような、不思議な感覚だった。
壁にかかっている時計を見ても、思っていた以上に時間が進んでいない、思考が時を超えるほどに加速でもしたのだろうか?

冷静になって、思い返しても見ても、第三者として思い返してみても、アレがしたことは納得はできない出来ない!許す事なんてしてはいけない!だけど、これでよかったのかもしれないと感じている部分も少なからずある。
未来の私が残した思念、それの結末は、あっけない幕引きだな、って、思う部分もある。
本当にそれでいいのかって女の私は思う、でも、愚かな私が幾ら動いたとしても、どう足掻いても、何もできない気がする。
私が動こうとすれば絶対に姫ちゃんに見つかるだろうし、当然、全ての動きは先手を打たれて制止されるイメージしかわかない、何もさせてもらえない…姫ちゃんがたまにいう言葉の通り

詰みって、やつね。

殺すだけが罰じゃない、アレには未来永劫、姫ちゃんが用意した鎖で思うように動けずに翼をもがれた鳥の様に、足を捥がれた蟻のように地面を這いずっていき恥をさらしてくれるのであれば、溜飲が下がるのだけれど、姫ちゃんがそこまでしてくれるのかは未知数よね。

全ての話し合いが終わったみたいで、先の大まかな流れが決まったのだろう、蚊帳の外だった私とお父様は何とも言えない表情で部屋を出ていく。
部屋を出て、お客様を玄関まで見送るのは当然、当然だけれど、当然じゃない部分がある、それが、その間は終始無言、お客様を玄関に送る時、至極当然であれば、歓談でもしながら進むものよね…それが出来るほど、私もお父様も今の状況を完全に呑み込めていないのよ。

末席の王子が玄関を出る時に、思いつめたような表情で唐突に声を掛けてくる
「あの、服は、もう、着てくれては」質問の意図は理解している、突き放すのが正解、だけど、悲しそうな顔で此方を見るので、つい
「大事にしてあるわよ、普段使いなんて出来るわけがないでしょう?」その一言で暗かった表情が一瞬で明るくなるのを見て、自分の詰めの甘さというか人として嫌われる勇気がない心の弱さ、自分の発言が失敗したと感じた瞬間…
「はい!後日、改めてね!それまで変な色を出さないで準備してよね!」バン!っと、勢いよくドアを閉められて末席の王子は締め出される様に家から出ていく。
正直に言うと助かった。情に絆されるところだったわ…

迂闊な私の発言に太ももからペシペシと乾いた音が何度も聞こえてくる。姫ちゃんからお叱りの太ももビンタの音が玄関に広がりながらお叱りを受ける
「お母さん!どっち?本音はどっち?結婚したかったの?」
その言葉に首を振って違うと伝えると
「なら!相手に希望を持たせないの!相手が前に進むためにはどうするべき?」
可能性を感じさせないことです、私自身も、というか、人に嫌われるのは慣れているつもりでいるけれど、真っすぐに好意を向けられるのは初めてなのよぉ、ぅぅぅ。押せばいけると思われてはいけないのよね、うん、そうよね…
「…肝心なところで、心動かされてはいけない、相手に可能性を感じさせない、こと、です」
俯きながら、小さな声で、わかり切っていると自分自身でも理解している言葉にすると声に出す、
「なら、良し!わかっているのなら、もう、駄目だよ?そんな魔性の女みたいなことするの」
男を手のひらでコロコロと転がして、慌てふためく姿を酒の肴にするような人になれるわけないじゃない…ちょっとしてみたいなぁなんて思っていたのは学生の頃だけよ。
「はい、すみませんでした…」
良い大人になっても、こうやって正論で諭される様に怒られるのは、堪えるわねぇ…

「それじゃ、部屋に戻ろって仕度するよー」姫ちゃんに手を掴まれたので一緒に歩いて次の予定の為に一度、部屋で心を落ち着かせるのは願っても無い事。
階段に差し掛かると、お父様に呼び止められる、私ではなく姫ちゃんに声を掛ける、当然よね、お父様の派閥を考えると、姫ちゃんから得られる情報、一つ一つが値千金の価値がある。
姫ちゃんもそれを理解しているのか、コクリと頷いた後、お父様の方に向かいながら、部屋で待っててと言われるので、言われるがままに部屋に向かう

部屋の中に入ると心労なのかわからない疲れが一気に押し寄せてくるので、靴を脱いでベッドの上に転がってしまう。
その後は、何もする気が起きなかった、ただただ、ベッドの上に転がる肉の塊と化す…

横になって、何度も、何度も、声を掛けてくれた、いいえ、掛けてきたが正しいわね、何度も何度も、体の主導権を奪おうとしてきた、疎ましくて恐怖の対象だった。
あの声が聞こえなくなる時は、今ではないと彼女の目的を完遂した時、彼女の無念が晴らされた時だと思っていた。

思い出そうとすると、彼女から受け取った全てを思い出せる、断片的な部分は元々、彼女自身が記憶にないのか、興味がないのか、そういうものなのだろう。
私が前回、王都に帰省していた、あの時、未来の私がどのような行動をしていたのかも記憶の結合により知ることが出来た、幸いにも人を殺していないことがわかった。
それだけは、救いだけれど…

…とんでもないことをしでかしているのも知ってしまう。
あの人と顔を合わせるわけにはいかないでしょうね、あれは無いわ、狂人よ狂人…
あの地区に絶対に顔を出せないし、会うのは絶対にダメね。向こうからすれば純粋に怖い人よ…絶対に、会ってはいけないわね。

思い返せば思い返すほど、王都という世界に私は不必要だと感じる、この街に居てはいけないのでしょうね、来るたびに問題を起こしているような気がする。
自分では思っていなかったけれど、私の本質は、トラブルメイカーと呼ばれてしまうような、人様にとって迷惑な存在だったのかもしれない…

ぼんやりと、昔の事を考えながら、姫ちゃんを待ち続ける…
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