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王位継承戦 Side-S 3日目 ③

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帰る際に、隠者の一部は認識阻害の術式を使って医療班がこれ以上、危険が及ばないように待機してもらって、敵の動きを探るために一人で帰路へと歩いて向かう。
その際に、私を警護する隠者達に認識阻害の術式が組み込まれた腕輪型の魔道具を作動させて四方を固めてもらって、敵をおびき寄せるために私は商店街とかで買い物でもして帰ると馬車の人に声を掛けて、鼻歌でも歌いながら警戒心ゼロを装い、ノンビリと商店が数多くある表通りがある方角に向かって行く。
表通りに向かって歩いていくと、突如、道行く人から声を掛けられるので話をする、「何処に行くの?お使い?」って、普通に何処にでもいる恰好をしているけれど、近寄ってくる際に足音がしない奥様に聞かれたので、「うん、お小遣い貰ったから帰る前に頑張った自分のご褒美に贅沢にお菓子でも買って帰りたいの」と笑顔で答えると、このわき道を突っ切ると近道だよっと教えてくれる、わぁ露骨ー。

完全に馬鹿な少女で、何処かに与する組織、または派閥の隠れ蓑として祭り上げられた小娘って認識だー、たすかるぅ!

認識阻害の術式が使用している隠者達に合図を送る、此方からは見えていないけれど、信頼できる仲間達だったら合図を見ているでしょう。
虎穴に入らずんば虎子を得ずっていう諺が地球にはあるのよね!さぁ、虎の穴に突っ込んであげる!幼気な少女がね!口を開けてまっていなっての!

裏路地を鼻歌でも歌いながら、お上りさんよろしく田舎者全開で警戒心ゼロで歩いて向かう
裏路地にはいって10メートル程歩くと、後ろの方に気配を感じた。

うん、感じただけ、だってすぐに消えた物。後方やや、左側で物音が一瞬したけれど、直ぐに音が聞こえなくなった、つ・ま・り、はい釣れたってこと、虎の子ゲットー♪

私は何も知らないふりをして、大通りに出たついでに、先ほどの会話通り、何かお土産でもないかと物色したかった!んだけどれどさぁ、これはダメだ
大通りに出て気になる美味しそうなお菓子を扱っているお店があったので立ち止まった瞬間に大勢の人達に囲まれてしまう。

幸いにも私を囲ってきたのは普通の人達、暗殺を生業とした人達はたぶん…いないかな?
しまったなぁ、私の噂ってもうこんなにも広まっていた顔も認識されているなんて、噂の人なのに、表に出過ぎたかも…こんな状況だと自由がきかないじゃん

そして、この状態は良くないなぁ、私の後ろが狙い放題、後ろから刺されても誰が犯人かわかんないじゃん。
念のためとして用意しておいた服の下に着こむタイプの防護服とか今って着こんできてないんだよね、鎖帷子になっちゃうからごつくなりすぎちゃって、見た目からしても警戒していますってなっちゃうから囮役としてはあってないんだよね。
はぁ、薄くて軽くて丈夫な戦闘服、速く完成させないといけない、困ったな、取り合えず、ショーウィンドウを背にして作り笑顔を忘れないようにして、少しでも接近する何かがないか全力で警戒する。

警戒してる間に次々と人が集まってきちゃってる、幸いにして目に見える範囲に不可思議な動き、民衆にそぐわない動きをしている人は見当たらない、割って入ってくるような人もいない、つまり、普通の人達ってこと…ぅぅん、抜け出す方法がないなぁ、MMさんに助けてもらおうかな?でもなぁ、信号弾はまだ使いたくないなぁ。

どうやって抜け出すべきか悩んでいると、ショーウィンドウを背にしているお店、焼き菓子とかをメインに扱っている菓子職人、そのお店から人が出てきて、周りにいる人達に声を張り上げてくれて追い払うと同時に私を店内に入れ手早くドアにcloseの看板を出して鍵も閉める…
これが善意であれば良し、悪意であれば…

警戒は怠らない、不意の動作で完全に私を招き入れた人の動作を見極め切れていない、取り合えず、現状の店内含め、状態を一時保存して覚えておこう。

「店の前で迷惑だねー、アンタも何があったのか知らないけれど大変だね、座ってな」営業スマイルを崩さずに店内で軽く飲食が出来るために用意されている椅子に座らせようとする…
招き入れてくれた人の言動からして私の事を知らない?…それならそれで、安心…するわけないよね。怪しい点が多い。

取り合えず、言われたとおりに席に座るとしましょうか。ここでじっとしているわけにはいかないものね、小馬鹿な警戒心のない幼げで害のない少女を演じないとなぁ。だって、先ほどの民衆はまだガラスの向こうに居るから、下手に動けない。

「迷子かい?そんな感じでもなさそうだし、何処かのお偉いさんの娘さんかい?大勢に囲まれちまって」
ふくよかな女性は私に声を掛けながらも玄関の先にいる大勢を見て困った顔をしている。
小声でどうしたものかね~っと呟いているし敵意も殺気も感じない、焦ったそぶりも見せない。

隠者であれば、私を殺すにはもってこいだし、連れ去るにはちょうどいい場所ではある…難点があるとすれば、民衆がこちらを見ているから毒針などの飛び道具でもない限り私を殺せない、鋭利な物を取り出した瞬間にガラスなんて民衆が蹴破って入ってくるだろうからね。虎穴に入ったから舌なめずりでもしているのかしら?

笑顔は崩さずに警戒心は常に…問題があるとすれば、この状況だと、私の部隊が救援に出れないってことだよね、表立って動けるのはMMさんだけ、ベテランさんはここに押し入ってきたりはしない、直接的な危険を排除するのは別部隊の役目だもの…今頃は、たぶんだけど、裏口辺りを探っているんじゃないかな?どんなお店でも裏路地があるし、何よりも先ほど通ってきた裏路地と今の位置関係を考えれば確実に裏路地に通じる出入口がある。

まぁ、現状では、お互い、八方塞がりって感じ、かな?あ~失敗したかな?いや、あの状況で店の中に入らないのは不自然過ぎるし、警戒するべき対象が一人だけの方が生存率が高いか…混乱に乗じてとか、民衆ごと爆破されたらどうしようもなかったから、今の状況がベストかな?

幸いにも、ガラス越しに大勢がこちらを見ているので、仮にふくよかなこの店の店主?っぽい人も手を出せないと思うし、一旦様子見でいいよ、後手に回ってもどうにか出来るから。
この膠着した状態をキープするためにも、民衆がこの場から離れないように適度に軽く手を振ってファンサービスをすると、歓声が沸き上がる
「ああ、もう、なんだい?なにがどうなってんだい?」突如湧き上がる歓声に嫌そうな表情を一瞬だけしたね。隠者は注目されるのを本能的に嫌がるからね、まぁ、本当に店主だとしたら店の前で騒がれたら迷惑だから嫌そうな顔をしたって言われたらそうだよねとしか言えないかな。
商魂たくましい人だったら、自分の店が注目の的になっているのだから知名度が一時的に向上することに喜ぶけどね?

状況がよめていないのか、理解できない表情で困惑しているふくよかな女性にちょっとちょっかいかけちゃおうかなっと、何も言わないのも不自然だものね。
「ごめんなさい、ご迷惑をおかけしております。もう少ししたら彼らも満足して立ち去ると思うのですが」
申し訳なさそうに声を掛けると
「まぁ、いいさ、これで私のお店が繁盛しているように見えるから、明日から客足が伸びるだろうからね」
両腕を腰に当てて体を捻って腰骨をゴキゴキと鳴らし
「ああー、今日も疲れたね~」
疲れた声を出しながら店の奥へと進んでいく

…今のところ危険な様子も無い、足音もわざとらしく出しながら歩いている、問題があるとすれば…問題、私だったらどうする?この状況で私を殺すなら、何をする?

ふくよかな女性が隠者であれば、毒物を混入した飲み物、ないしは、食べ物を提供してくるだろう、同情の声と共に
ふくよかな女性が隠者でなければ、彼女ごと放火・爆破・毒煙によって、殺す…

この二つが警戒しないといけない可能性が高いかな?

前者は私が気を付けていれば何も問題がない口につけなければいいだけだから、問題は後者の方だね後者だったら先ほどの人物が隠者ではないってことだから命を助けてあげないといけないから事が起きたら大変だよね、まぁ、そうはならないでしょうけどね、だって、私を守るために潜伏している戦士達がこの建物を封鎖しているはずだろうから、放火などは出来ない、今も突入するタイミングを伺っているか、既に突入済みで潜伏している可能性が高い、ソナーでも打って索敵すれば潜入しているのかどうか私は見つけることが出来るけれど、魔力は温存したい。
なので、そこはもう信用問題、私の戦士達だったら大丈夫、人を殺すことに躊躇いが無い人を選んでいるもの、躊躇いがある親衛隊達の騎士達にこういったときに突入する権限は渡していない。隠者であろうと悪であろうと人という存在に刃を向けることに抵抗を覚える善良な人が騎士という存在に憧れるものね。

本当の騎士なんて血みどろで…脳裏に浮かぶ、ある騎士の姿…うん、確かにあそこまで高潔な魂を持っているのだったら騎士道ってのは憧れても仕方が無いか…

うん、再度、思考をクリアにして考え直しても八方塞がりじゃん出たとこ勝負ってとこかな?まぁ私だけだったらどうとでもなるけどね…ふくよかな女性が奥にいった今なら外に出れる、でも、外には人だかりが出来ている、動けない。外に出たところで自由がきかない悪手だね。

裏口から出る?裏口は路地裏、待ち伏せされている可能性は?それは、ある、ふくよかな女性が隠者であれば、警戒しているはずだもの。狭い店内で私が裏口へと向かうと想定しているのであれば絶対に通る場所とかあるから、そこに身を潜ませてってのもありえるか、う~ん、まぁ、それはそれで、さくっと撃退してしまえばいいだけだし、見せの玄関口で此方を見ている民衆にも見えない場所であるはずだから、手っ取り早いのはのそっちか、囮になるのもありか?
いや、ありじゃない、あれが隠者だったら、元の店主は何処に行った?人質に取られたらちょっと面倒じゃない?

建物の中には私と彼女しかいない、最悪の事態を想定して動くこと、そして、死者は出したくない、私がここに居たという事は周りに知れ渡っている、翌日に店主の死体が見つかれば要らぬ容疑がかかるので、それを揉み消すのに人員を割かないといけない、明日への作戦に影響が少なからず出る…ぅぅ、困った、想定外な出来事過ぎる。

「余り物でよかったらどうだい」
悩んでいると奥から飲み物が入ったカップに、お皿の上には、お菓子が乗せられてある、普通に善意であれば毒は無い、彼女が隠者であれば毒が仕込まれている、殺す毒じゃなくても意識を奪う程度であれば、直ぐにでも入れれるだろうし、甘い毒もあるんだよね、砂糖と同じような味の…

こんな場面で二択なんて選ぶ気は無いよ、探す、これが善意なのか、悪意なのか…
座っている席の前に置かれるので、ぴょんと椅子から立ち上がり、菓子が並べられているショーウィンドウを見る

余り物であれば、ここから取り出すはず、数は…覚えている、数が違っていればここから出してある、数が同じであれば…
問題は飲み物、一番入れやすいのは飲み物だよね、うん、お菓子の数は…減っている、ここから取り出したのだろう。だけど、どうしてそこを選んだのかってことだよね、なら、次は質問でボロが無いか探る
「色んなお菓子があるけど、みんな、貴女がつくったの?」
年相応よりも幼い雰囲気をまといながら質問をする、声だってワントーンあげて幼くしてるんだから。
「…そうだよ?私以外に誰が作るっていうんだい?」
視線は横目で相手にバレない程度に視線を向けてあるので、表情をしっかりと観察できている。
笑顔が一瞬強張った、眉毛も反応した、視線が一瞬だけ右上を見た、ダウト…っち、隠者だ。

そうなると、私がこの店の前で人だかりに囲まれている間に、本当の主人をどうにかして、出てきたってことね。生きていればいいのだけれどね。死んでいるとわかっているのであれば、隠蔽作業をお願いしないといけないのか…

隠者として確定したのであれば、時間を稼ごう、私が行動を起こさないのであれば、長引いていると判断してくれるので私の戦士が、中に突入している可能性が高くなるもの。
確実に突入しているであろう時間まで稼ぎきったら敢えて奥に行きましょう、見えない所でさくっと始末してくれるでしょう。
まぁ、私独りでもどうにかなる相手だけれど、出来れば、事を荒げたくなくないし、魔力を温存はしたい、民衆の前だと特にね…どこに術式に秀でている隠者が居るのかわかったものじゃない、認識阻害の術式を敵が入手するというのは想定しうる中でもかなり最悪な出来事だからね。

「そうなんだー!すごーい!ねぇねぇ!貴女が好きなお菓子はどれー?」
此方の意図に気が付いたのかゆっくりとこちらに近づいてくるので、少し距離を取る
「そうだねー、私のお気に入りはこの、クッキーかなー」
背中を丸めて前かがみになって焼き菓子を指さす、ふーん、クッキーねぇ…
「そっかぁ、だから、私にはお気に入りのクッキーじゃないのを持ってきてくれたんだね、残念だなー、どうせならお勧めがよかったなー」
アンタが持って来たのは、ショーウィンドウの中でキッチン側に一番近くて取りやすいもので、味が淡白なプレーンスコーンだよねジャムを添えて楽しむのが基本、そして持って来た飲み物は、香りが強めの紅茶、合わせとしては無難でしょうね、ジャムがあれがね、でもね、その合わせ方は

貴族の合わせ方だよ、平民はクッキーの方が安くて好みだからね、ショーウィンドウにあるクッキーはプレーンクッキー、ただ、粉を焼いただけの安いやつ

完全に墓穴を掘ったでしょ?平民っぽく振舞っていたけれど、趣向を飼い主に合わせてきたでしょ?
そして、迂闊に近寄りすぎたのが貴女の敗因よ
「…嫌みったらしいこだねぇ」
聞こえないようにつぶやいたつもり?聞こえてるし、聞こえても問題ないと思ってる?私が無防備に間合いに入ったからでしょ?
獲物を前に舌なめずりは三下のやることだよ、アクションが遅い

隠者が暗器を取り出す仕草に入ったので、取り出す前に隠者の目を見て
「眠りなさい」
催眠術式をぶちかます

唐突な睡魔に隠者はよろめき頭を押さえると同時に指を噛み痛みによって眠らないように食いしばろうとする
民衆にこの姿が見えないように体を使って視線をブロックしながら、甘いわね、意識が飛ばないように耐えようとする時点で貴女のまけよ、自分の意識が薄れようが消えようがそれまでに暗器でも何でも使って羽交い絞めにするように飛び掛かって命がけで殺しに来ないと私はとれないわよ?っていっても、それはもう出来そうもないわね。
「回れ右をして奥に引っ込んで寝なさいボスの命令よ」
さらにきつめの催眠術式をぶちかます

「は…ぃ、・・・・」
目がトロンとして虚ろになると同時にバックヤードに帰っていくと、一瞬だけ隠者の口元を抑える様に手が伸びたのが見える。
なんだ、もう時間を稼ぐ必要なんてなかったんだ、私の戦士が既にバックヤードで息を潜めて機を伺っていたのね、やるじゃん、優秀優秀。
そのまま、店の前にいる民衆に手を振りながら、私もバックヤードに向かって行く。

これで、傍から見たら店の店主にお呼ばれしたお嬢様って感じね、これを見て皆も諦めて解散してくれると楽なんだけどなぁ~

「流石は、姫様!お見事です」
隠者の意識を刈り取るために渡してある捕縛するための秘密道具を使ってしっかりと意識を刈り取っている私の戦士、頼りになるね、もうちょっと信頼してもいいかもね。
「そっちこそ、音もなく入ってくるなんてやるじゃん」
褒め返してあげると照れた笑顔で、隠者を麻袋に手早くいれて外に出て行った。
これで、裏口は問題ないってのがわかったし、本当のお店の方は…そう、ごめんなさいね。

バックヤードの奥にある椅子に眠る様に座っていた…意識を確認してあげたいけれど、彼もまた手招きした隠者の可能性もあるから近寄れないのごめんね。

もしかしたら、尊い犠牲になったのだと思えば、祈りの一つくらいは捧げてあげないとね、祈り乍ら裏口を出て医療班のテントに戻ると、念のために私が戻ってくる可能性を考慮して馬車が待機してくれていたので、馬車に乗り込み運んでもらう。

はぁ、疲れた、魔力もちょっと消費しちゃったな、どうせだったら、医療班の人に魔力を注いでもらってから帰った方が良かったのかもしれないけれど、時間をかけすぎちゃった、遅くなるのは良くない。

安定した日は終わりをつげ、波乱の三日目って感じ。
明日から、外で物は食べれないな、水分も。何処に隠者が潜んでいるのか、一掃しきるまでは厳重にしないといけない。
明日から警戒しないといけない日々が始まるのかと思うとうんざりしてくる。

もう、やだー、人きらーい!!
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