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王位継承戦 Side-S 4日目 ①

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【起きなさい!!】
うん、起きるよお母さん、うん、起きる、いつも優しく起こしてくれてありがとう。
だけど、今日は、疲れちゃったから色々とね、甘えたい、部屋に引きこもっていたい気分だけど…頑張るね。

目覚めた瞬間から私の心の中は黒ずんでいるのがわかるくらいアンニュイな気分で目を覚ます。
気分を入れ替えるために軽く腕を伸ばしたりして体を動かしてベッドから起き上がる、だけれど、心の初動が遅い…辛い、心が辛い。
それもあるけれど、他にも、筋肉が辛いのもある、体の感覚が鈍い、封印術式を施す前に感じていた倦怠感に近い…あれ?ちょっと、ほんのちょっとだけ魔力を使っただけだよね?

魔力枯渇症という恐怖を払う為に魔力回復促進剤を5本開けて飲む、っぐぅぅ、つらい、つらすぎる!!

少しでも心のエナジー、活力、頑張るためのパワーを得るためにベッドの枕の下に置いてあるものを取り出す。
枕の下にこっそりと仕込んである革、あの時、お母さんの姿を写した革!それを寝る前に枕の下にセットして寝てたんだよね、夢の中でくらいお母さんに会いたかったから。

「お?姫ちゃん!っとと、姫様!おはようございます!」
お母さんの写真をぼんやり眺めているとMMさんが声を掛けてくれる、変に畏まらなくてもいいのに
「おはよう!いつも通り姫ちゃんでいいのに、畏まる必要はないよ?」
笑顔で挨拶を返すと、無言で険しい表情で近寄ってくるけど、どうしたの?

なんだろう?っと、ぼんやり眺めていると両腕でたかいたかいをされるように持ち上げられると
「つれぇよな、命狙われちまったんだからな」
今にも泣きだしそうな顔で抱きしめてくれた。お母さんと違って硬いなぁ、でも、あったかい…
そっか、私、気が付かなかったけれど悲しい顔をしていたんだ、この人は直ぐにそういうのに気がついちゃうんだろうな。
隠し事は出来そうもないな…そうだね、この人は幸せになるべきだよ、闘う体であっても闘う心じゃないだから、あんな姿はもう二度と見たくない…

暫く硬いけれども、どこか柔らかくて暖かい世界に包まれながら目を閉じて癒されていく。

気が付くと、ささっとテキパキと手早く服も着替えさせてもらっちゃった、着替えた後は椅子に座らされてボサボサになってしまった髪の毛をブラシで綺麗に整えてもらってる、う~ん、この人って実は尽くすタイプ?

私の髪を鼻歌交じりで髪をとかしてくれていると
「姫ちゃんはいいねぇ、肌も白くて髪の毛も綺麗で、お人形って感じで…」優しそうな声が聞こえてくる
「貴女は、自分の体が嫌いなの?」
私を見る目が何処か切なくて悲しそうになっているときは、もしかしなくても、自分の恵まれた体格に愁いを感じていたからなの?
「そりゃねぇ、あたいだって女さ、姫ちゃんや、先生…あいつみたいな女性らしい体が羨ましいって考えたことは山ほどあるさ」
そっか、そうだよね、貴女の体は女性というよりも男性だものね、何処からどう見ても男性だものね…
「もしもね、もしもだよ?」
この一言を言ってもいいのか悩んでしまう、今の私とお母さんであればいつかはその領域まで辿りつけると確信はあるけれど、今すぐってわけにはいかないものなぁ…変に期待させちゃうかな?でも、聞いてみたい

「今の体を捨てて女性らしい体に変えれるとしたら、かえたい?」

沈黙が続く…私がこんな”もしも”を口にするとは考えていなかったのだろう、こういった事を口にするという事は可能性があるという事、もしもだけど、理想の自分になれる可能性があるのだと感じているのだろうな。

しばらくの沈黙、私からすると長く感じるけれど、いいんだ、こういうのは直ぐに答えなんて出てこないもん。

「いや、あたいは…あたいは、確かにそりゃ、憧れが無いのかって言われたらないなんて言えないさ、でもな、この体を捨てる気はないさぁね、この体だったからこそ、あたいは…愛をしった、信愛をしった、尊敬をしった、生きるという物を知れた。それにこの体じゃ無いと旦那はあたいに振り向いてくれないからねぇ!自慢の体さぁ!」
声の感じからしても強がりとかそういうのじゃないみたいだから、いっか、そうだよね、
そっかそっか、ならいっか、そうだよね、貴女が鍛えたあげた自慢の体だからこそ、築き上げた絆があるよね、歴史があるよね。それを捨てるなんて、そうそう出来ないよね。

無粋なことを聞いてしまったのかなっと、しょげているのは良くないので
MMさんが歌う鼻歌を教えてもらって二人で歌っていると
「あーその、なんだ?楽しく歌っているところ悪いがそろそろ出るぞ?」
コンコンっと部屋のドアをノックしながら家主が迎えに来てくれたので二人で元気よく笑顔で返事をして家主と一緒に屋敷を出て、外で待っている馬車に乗り込んで出勤する!!

今日は病院でも教会でもなく、行く場所が決まっている。

私を狙う刺客が出てきたのだから、警戒する必要があるよね。
なので、敵の素性を知るまでは迂闊な行動は控えるべき、私が居ても問題ない場所に居ないといけない。
だって、攻撃対象である私がいることによって教会や病院に迷惑をかけてしまう、なので、ちょっとだけ離れた方がいいよね。

昨日その事を相談したら、筆頭騎士様から屋敷を根城にするうえで条件っというか、提案されていたことがあったので、今日はその提案に乗っかる形とさせてもらった。
昨日決まったことを直ぐに動いてくれて、今日の予定にねじ込んでくれたんだよね!忙しくないのか、迷惑ではないのか心配だったけれど、この期間中は仕事がある時とない時があるので運よく今日は仕事が無い日だったみたい。
日頃の行いが良いから天が味方してくれるんだよ。ってお母さんがここに居たら踏ん反り返ってただろうな。

そんなことを考えながら馬車に揺られてある現場に向かっている、今から何をするかって?決まってるじゃん、MMさんと筆頭騎士様が行く場所だよ?察しの良い人だったら何となくわかるよね。

王国騎士団だよ

筆頭騎士様からね、王国騎士団の皆とぶつかり稽古をしてくれると助かるのだがっと提案されていたんだよね。
ほら?屋敷を宿として利用させてもろってるからさ、こちらでも何か協力できることはありませんか?って要望が何か無いかって確認してはいたんだよね。
すり合わせた結果、可能であればっという形の条件として決まったんだよね。
今日というタイミングもちょうどいいし、色々と融通を利かせてくれてくれて本当にたすかるなぁ…

一応ね、この提案をMMさんにも事前に確認したけれど、乗り気だったんだよね。
MMさんからすると願ったりかなったりなのかな?師匠のお父さんに恩を返せれるってことで嬉しそうだし。

それに私の思惑としても、闘う事への恐怖心を減らせれるといいなっていう思惑も少なからずあるんだよね。
恐怖心で体の動きが鈍くなるのって命がけの戦いのときだと致命的欠陥になりかねないからね。
この人を闘いの場に出す気は無いかけれど、何が起こるかわからない、少しでもMMさんたちの生存確率を上げるためにもこの人が闘えないのは良くないよ。

道中の馬車の中でどういった稽古をするのか打ち合わせしつつ、私は一応、何処に隠者が潜んでいるのかわからないので、念のために筆頭騎士様の孫として見学することになる。
なので、変装という意味でちょっと大きめの麦わら帽子を被って遠目から顔が見えにくくしている、それだけじゃないよ?ちゃんと、お孫さんのお洋服をお借りしてお孫さんに扮してって形かな?

なので、これはもう、当然だよね?
「お爺ちゃん♪」
本当の孫よりも可愛らしくトーンも高めに甘えるような声で筆頭騎士様に呼びかけると照れくさそうに
「お、おう」
頬を赤らめながらもちょっと嬉しそうにしている、普段からお孫さんから素直に甘えられていないのか、はたまた、お爺ちゃん呼びに慣れていないのかどっちかな?
大旦那様って呼ばれることが多いからしょうがないのかな?使用人がそう呼んでいるから孫ちゃん達も真似して呼んじゃっていたら、その呼び方が定着したみたいなんだよね。

本人は堅苦しくなくて、ごく普通のしがらみのない間柄のように感じるからお爺ちゃんって呼んで欲しいんだろうなぁ。
厳格な家の中で育ってきたからこそ、憧れてしまったのだろう、平民たちとの普通のやり取りに…もしくは、何処かで実体験をしてしまったのかもしれないかもね、お爺ちゃんって呼ばれてしまう喜びを。

照れくさそうにしている筆頭騎士様に
「もー慣れないとだめだよー?人前でそんな頬を赤らめていたら変に勘ぐられちゃうよ~お爺ちゃん」
いたずら心で追い打ちをかけると反応が鈍いというか照れているのがわかったので、これ以上は止めておこう。

ちょっと気まずい空気が流れている最中に目的の場所に到着する。
降りると王国騎士団がしっかりと隊列を成して出迎えてくれるのは嬉しいのだけれど、なんだろ?そんな暇があれば働きなよって思うのはおかしいのかな?嘘偽りなく言葉通りに受け取るのなら、ここに集まっている兵士達は非番ってことになるけれど、50名くらい、いるよね?本当に非番だったのかな?

集まっている騎士達に挨拶をするために筆頭騎士様が前に立って色々と全員に向かって声を掛けている、その様はまさに軍隊って感じだね。
MMさんは私の隣に居て筆頭騎士様が声を掛けるまで待機って感じ。

青空の中、気持ち涼しい風が吹いている、耳をすませば鳥の声が・・・聞こえてこない、それもそう、だってすぐ近くで声を出している人がいるから、鳥が居たとしても声何てかき消されちゃうよね~。
でも、こういった広場に来るのはちょっと懐かしいかも、幼い時に、お母様に誘われて愛犬と一緒に散歩した時を思い出しちゃう。

懐かしい思い出を思い出しながら、ふと思ってしまうのはこういった話って無駄に長い。かといって筆頭騎士様の関係者として偽っている手前、欠伸とか出来ないしな~。
それに、ず~ぅっと、立ってるのしんどいなぁ…ぽけっとしてないで何かしようかな?

お母様の思い出の影響で脳裏に過るのは、お母さんとの一緒に練習している何処でも出来る訓練方法
…ん~!そうだね、気乗りしないが、暇だからね、魔力を練る練習でもしとこ~かな。

朝礼や挨拶が終わるまでの間、やることもないので視界からの情報をカット、聴覚からの情報もカットして、お母さんと一緒に練習している体内を廻っている魔力を練り貯蓄する練習をしていく。

これの訓練をしてから変化した部分っていうか感覚なんだけどね、術式に置いて不必要に魔力を消費していない気がする、必要最低限で発動できているような気がするんだよね。ゲームみたいに消費MPいくら~って出てくれたらいいんだけどね、数値化なんて出来ないからしょうがないよね。

それだけじゃないよ、微細な魔力コントロールが出来ているって実感は湧いている。
封印術式もこの1年で改良も着実に進めているから、前よりかは、術式を使うときに力を籠めなくても良くなってきているので封印術式を施す前に近い感覚で術式が扱えている。
自信はないけれど、お母さんほど巧みではないが魔力を放出してその場に留めるっという技量も多少は出来るようになった、けれど、今は、魔力を放出して留めるという訓練は絶対にしない、だって、怖いもん、危ないからしない。お母さんがいない場所で魔力を放出したら死んじゃいそうで怖いもん。

魔力を練る練習に夢中になっていたらそっと、額に何かが触れるのでカットしていた感覚を戻すとMMさんが心配そうにハンカチで汗を拭ってくれていたみたいなので
「ありがとう、大丈夫だよ」
言いたいことは表情ですぐにわかるよ、長い時間、立ち続けているのが辛いんじゃないか?ってことでしょ?

私達の会話が筆頭騎士様に聞こえてしまったみたいで咳払いをした後、訓練が開始された。

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