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王位継承戦 Side-S 5日目 ②
しおりを挟む屋敷に着いたので、馬車から降りると耳だけ、こっちに向けてくるかまってちゃんの鼻を撫でてあげるとご満悦になったみたいで嬉しそうにしている、ブラッシングもしてあげたいけれど、今日は時間が無いのごめんね、鼻を撫でた後、ばいばい、また明日もお願いねと声を掛けてその場から離れる…ぁ、背中、噛まれなかった、うんうんやっぱり、賢いんだね君、そうだよね、私が急いでいるときはあんまりちょっかいかけてこないもんね。
家主に挨拶しに行くと、辛そうな表情をしているので何事かと話を聞くと、昨日、飲み過ぎて、更に、今日も飲み過ぎたせいで完全に二日酔いで気持ちが悪いだって、あっそ。
心配して損しちゃった、取り合えず、医療班から持たされている薬で頭痛薬と、胃薬と…二日酔いって何が効くの?えっと、しじみ?みそ、しる?…うん、無い!代用としてアロエベラってのもいいかもね、ぅぅん、そっか、そうだよね、折角、他の世界の知識を知りえることが出来るんだから、そっち方面でも活用できるよね?うん、調味料とかも革命起こして稼いじゃうか。
部屋に置いてある荷物から薬を取り出して、筆頭騎士様に水と一緒に渡してあげると凄く感謝されちゃったけれど、奥様達は何もしてくれないのかな?
お母さん連合とお孫さん達は食事の席でご飯を食べているので軽く挨拶をしてから、使用人の部屋に戻ると、ベテランさんと、奥様かな?が、いつの間にか部屋で待機していてる。
「お疲れ様です姫様」立ちあがって手を上げて挨拶をするけれど、あの街では貴方の方が先輩だから敬うようにしなくてもいいのに。
「ねぎらいの言葉ありがとうございます、先輩を顎で使って申し訳ないです」
畏まって話をしてくるのであれば、私もそれに倣わないといけないよね、近くの椅子に座りながら挨拶をすると
「いやいや、先輩とか関係なしですよ、あの街はもう姫様無しでは運用できないですから」
うーん、何時もの様にフランクに話してほしいけれど、隣に居る人が居るからかな?
何処から話を切り出せばいいのかと悩みながらチラチラと視線を向けると
「ぁ、えっと、はじめまして、その」
「ああ、紹介が遅れました」
私の視線に気が付いたのか二人が同時に話始めて、仲睦まじい夫婦だなぁっと眺めながら話を聞いていると、内容は予想通り、奥様みたい、噂はある程度把握していたけれど、噂よりもお淑やかというか、綺麗な人。
これが、本当に噂通りであるならば、剣技に関してはベテランさんよりも上だっていうんでしょ?
信じられない気がしたけれど、腕の筋肉を見て納得しちゃった、あの筋肉の付き具合を見る限り運動欠かさずしている、運動内容も武器を持っての運動ってなるとそういうことだよね。
結婚して子供が出来たから剣士は引退って考え、一ミリも考えていない、何時だって常在戦場ってこと?
それとも、ベテランさんが不祥事を起こしたときに自らの手で裁くため?…いつか街に戻ってきて、人類の敵と戦えるようにするため?
心が強い人、根っからの自分の中にある正義を第一とする騎士道を歩む人って感じがする。その為には努力は惜しまない。
こういう強かな人は敵に回すと怖いから、機会があればしっかりと縁を結んでおこう。
仲睦まじい夫婦と、差しさわりのない会話をしながら、二人と一緒に協力してくれている親戚一同からの情報を受け取っていく。
民衆からの支持は相当、高まっていて、教会と病院での噂は王都全土に広がっている。
街の中心での出来事なんて、死を待つだけの貧困層には届かないのに、届くはずがないのに、貧困層にも噂が届いているのか、誰も助けない、関わりたいと思えない、どうしようもない人達にも希望という光を与え、光に包まれた人達全員が目に希望を宿して、今の状況から抜け出そうと彼らのペースで藻掻きながらも明日へと向かって動き始めている。
彼らの支持も得られるってだけでも、投票であるなら、大きいアドバンテージとなるし、その姿を見て貴族としての本来あるべき姿を思い出してくれる可能性もあるからね。
うんうん、それを聞けたのは良かった、貧困層エリアには私が赴く時間が無いし、中立エリア外での行動はリスクしか生まない。
なので、それらの情報は非常に欲しかった!それだけじゃない、彼らが明日を望むという意志が宿ってくれると純粋にマンパワーへと換算できる!これで未来の戦いに備えるための人材を確保出来る算段がつくよね。
奥様は、家系的に貴族との繋がりが豊富みたいで、貴族周りの情報を集めてくれていたみたい。
貴族達からの評判とかも上々で、数多くの派閥が私を支持するように動いているみたい。保身として、革命として、その両方の側面を考えて、ってこところかな?色んな思惑や思想が入り乱れているから貴族の考えは読み切れない、読み切ってはいけない、逃げれないように繋ぎ止めればいい。
今の王政に大きく不満を持っている人もいるみたいだし、アレの黒い噂を知っていてアレが王位に就くことを恐怖と感じている人達も数多くいるのね。
一蓮托生、その領域にまで貴族達を引っ張り上げないといけない、一丸となるのは難しいかもしれないけれど、それくらい意識は高く持って欲しいかな。
隠密部隊、隠者代表も部屋に入ってきて報告してくれる。騎士という名称を受け取りながらもこんなことに付き合ってくれる彼らには感謝という言葉しか出てこない、いつか、彼らに何かしらの褒美を用意してあげないとね。
報告内容を聞き取りながら渡された書類に目を通す、丁寧に書面にも誰が何処の派閥なのか、どういう繋がりがあるのか明記してくれるのは凄く助かる。
どうやら、私がウロウロとあちこち移動しているのを執拗についてくる一団が居たので手あたり次第に捕縛して、拷問して得た情報によると、どうやらアレが私を監視しているみたいだね、正確にはアレの直轄じゃなくてアレを支持する派閥。
まぁ大きく見ればアレの末端組織でしょ、私達の思惑を知らない下位組織が出張ってきただけなので放置でいいかな。
当然、一団なので、全員個別にしっかりと捕縛して情報を吐いてもらったけれど、偶々偶然、居合わせた数多くの色んな派閥から派遣された人達が偶然にも会しただけってことね。
その一団を漏らすことなく捕縛できたからこそ、関係性もある程度把握できるってこと、王族が私の行動を気にしているみたいだね。
さらっとゲロするあたり、木っ端なんだろうね、使い捨ててもいい駒かぁ…一応私の所で囲んだ方がいいのかな?そんなことを考えたけれど無駄だろうな、たぶん、捕まった彼らは生かされていないだろうな。
うん、これ以上時間をかければかけるほど無意味に人の命が減っていく。作戦の最終段階に移行してもいいかもね。
隠者からの報告を受けている間に、MMさんも部屋に入ってきていたみたいで、ベテランさん夫婦と楽しそうに話をしている。
そっか、三人とも戦士部隊に所属していて戦士長の愛弟子だもんね、面識はあるよね。
挨拶が終わった後は、MMさんから報告を受け取る。
騎士団達から得た情報によると、王都の黒い部分を野放しにしている腐敗した王政を毛嫌いしている人もいるけれど、事情があって騎士団を離れるわけにはいかない人達も結構いるみたい、血の繋がり、歴史、家族、自由に動けなくなってしまう理由なんて各々、そりゃ色々あるよね。
そういう人達は、表だって声明を出せない立場だけど、陰ながら私の活動を応援してくれているみたい。
もし、王族以外への投票とか可能なのであれば、協力は惜しまないと言ってくれている、つまり、民間、貴族ですらない平民という立場からの、初めての王を目指すのであれば命を賭すという覚悟を決める、そこまで言ってくれる人もいたんだね。
そうだね、私の命が普通の人と同じくらい長ければ立候補してもいいよ?
13歳、女性、平民(正確には貴族出身だけどね)という歴史上、今まで王政に置いて例のない偉業になるわけだ。
そんなこと、今の王が許すわけが無いし、私の素性をしれば、全力で殺しに来るだろうね、王族がしでかした悪行を握っているのだから。
そのカードは切れない、切ってしまったら内戦という道しかなくなる、この先を考えれば考えるほど、人類存続のためには切ってはいけないカードなんだよね。
そんな謀反と取られる内容の話を、普通に昨日の食事会でしていたみたいだけど、その会話を近くで一緒に食事をしているのだから絶対に内容が聞こえている筈なのに集まった騎士団全員がその会話をきいても無反応、その会話を王族批判不敬と思うのであれば剣を抜くはずだ、それが無いという事は内心、そう思っているのだろう。
それに、訓練に参加してくれた彼らの派閥からの隠者はいなかった、ということはこれらの情報を纏めて総括して判断すれば、集められたメンバーはそういう人達で固められた人達であると確信してもいいよね。
当然、そのメンバーを集めたボスである筆頭騎士様もその場に居合わせているはずだし、その様子を見ていないわけがない、止めない辺り、彼が一番、そう感じているのかもしれない。
元より、アレと仲が良くないのは確実だろうね、じゃなきゃ、ここまで協力してくれるわけが無い。
ああ、だから深酒をしてしまったのかな?色々と思うところはあるだろうね…
大変だね、中間管理職っていうのも。
後は、畜産の旦那と取引をしている商家と話をする機会があったみたいで、話を聞いてみたら、私が王に成るのであれば絶対に何を置いても応援するとまで言ってくれているみたい、商家側も情報は掴んでいて、アレが次の王になる確率が最も高く、力ある貴族たちは彼を熱烈に支持していて、対抗馬がいない、そこまで情報をしっかりと掴んでいるのか。
うん、やっぱり、アレを怖がってそれから逃げる為ならって考えてる人は多いみたいだね。
尚更、アレを野放しにするわけにはいかないから作戦を成功させないといけないよね。
MMさんからの報告も受け取り、明日の作戦への確認と流れを話し合っていると、更なる来客が訪れる。
末席の王子が寄こしてくれた密偵も報告に来てくれた、あっちはあっちで作戦は順調でもう少し場が盛り上がってきてから、参戦予定だったけれど、他の王族が動き出しているので妨害や、手を選ばずに何をしでかすのかわからないくらい緊迫した状況に向かおうとしているので、提案として早期決着が一番なので、明日決行しませんかという提案を送ってくれる。
その考えには私も同意だね、ちゃんと局面をしっかりと見据えることが出来てるじゃない良かったよかった、貴方は何かに固執すると失うタイプだから、固執せず、誰かの支えとなり目的を同じとする力ある人を補助する立場が一番輝くと思うよ?
密偵に明日、教会で次の作戦を決行すると末席の王子に伝えてもらう。
舞台は整ったってやつだね、後は、作戦通りに事が運べばいいね。
お掃除タイムのはじまりってね!!
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