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Dead End ■■■■■儀式 D●y ●日目 (5)

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長い間、話し合ったというのに、結局のところ、確たる答えは出なかった。
だけれど、成果はある!あったはずよね?だって、今後の方針は固まりつつあるのよね。
話し合いの末、方針として、【どんな人物で在ろうと命は無下に出来ない】という方針が決まった。
無意味に命を奪われるのは教会としても王族としても避けるべき事態、由々しき事態ということになる、これに関しては誰が何と言おうと間違ってはいないと思う、思いたい。

今後は、各自、出来る範囲で貧民達に救いの手を差し伸べる、王子側としては王政とは関係なく個人で自由にしても良い金額の範囲で、教会としては資金繰りが厳しくならない程度にという条件を付けてではあるけれど、人を救うという方針は良きことだと思います。
日常を過ごすうえでギリギリの賃金で生きていて、病院に通えない人達もこの機会に、救いの手を差し伸べるべきという話にもつながり、第一歩として私がシスター服を着て診察や診療、相談などを行うことになってしまったんだけど…これってさ正直に言うと、やってしまったってちょっとばかし後悔してしまった。


自ら、二人の事情に巻き込まれるどころか進んで足を踏み込み過ぎているという部分、これのせいで、街に帰るという選択肢を失ってしまった。
引き受けてしまったので投げ出すわけにはいかないので、ひと段落が付くまでは此方で可能な限り頑張るとしましょう、向こうで何かあれば手紙が来ると思いますし、私も何かあれば手紙で応援を呼べばいいわよね?


さっそく、本日の予定としては、少し休憩をとってから各々、昼ごろから行動を開始することが決まったのはいいのだけれど、本当に私ここで良いのかしら?
ベッドの前で悩んでしまう、そりゃ、確かに、ね?休憩室を我が物顔で寝ているっていうのは、シスター達に申し訳ないっというか見せられない姿ってあるじゃない?だから、何処で寝ればいいのか相談したら、案内されたのがここ、なんだけど…この間、こっそり入ってしまったお部屋。

各々が仮眠をとるために各自の部屋に戻って寝る、それについては睡眠をとることは大賛成だけれど、私って、本当にここでいいのかしら?大切な人の部屋じゃないの?
思い返してみても笑顔だったわね、部屋を管理しているであろう司祭様が遠慮せずお使いくださいって、笑顔で案内してくれたこの部屋、誰かが使っていた大切な部屋じゃないのかしら?

部屋に備え付けられている物に出来るだけ触れないように気を付けて、ベッドをお借りするのだけれど、定期的に掃除しているみたい、この部屋に入ったときも感じていたけれど、かび臭いことも無く、埃も無く、何時でもこの部屋が利用できるような快適に状態で保存されているのよね、おかげさまで寝ることが出来ました。



久しぶりのベッドのお陰か快適に眠れたわね、少しだけの仮眠とはいえ質のいい睡眠をとれたおかげもあってか、頭痛も鳴りを潜めている。
外に出るために身支度を整えるのだけれど、部屋の中が薄暗い、理由は明確にして単純なのよねカーテンを閉め切っているからなのよね。
着替えている間くらい、一般的な部屋であれば太陽光を部屋に入れて明るくするのが当たり前、だけれど…
部屋の中をクルリと見回すと、この部屋が如何に大切に丁寧に管理され、保存状態が良いのだとわかる。

この部屋の状況を見ると流石に、ね?カーテンは空けるのは躊躇うわね、綺麗に保存されている空間に太陽光を入れるのは躊躇ってしまうわよ。
きっと、司祭様か、教会にとってこの部屋は、理由は知らないけれど特別な部屋なのだろうと感じる。

部屋に何気なく置かれている日記の様な小物ですら後生大事に管理されている、大事にされている部屋に住んでいた人が突如、帰ってきたとしても、直ぐに時の流れを感じずに馴染めれるように配慮が行き届いている、何かしらの理由があって突如出て行った、そのままにして、何時でも帰ってきていい様に保存しようとする努力が随所に見られるもの。

机の上に置かれている日記、日記の表紙が色褪せていないのを見る限り、相当、神経を尖らせて綺麗に管理しているのだと伝わってくる、この部屋にいた人物の事を大事にされているのだと肌で感じる。

そんな部屋のカーテンを開けるわけにはいかないので薄暗い中で軽くお化粧をして、頂いたシスター服に着替えて外に出ると、すでに準備が終わっていたみたいで二人が待ってくれていた。準備は整っているのか声を掛けると二人の準備は万全みたい、お待たせてしまって申し訳ないと謝ると女性の支度を待つのは男性として当然ですよと紳士的な発言が出てくる、流石ね社交界なれているわね。

全員の準備が万事問題ないと確認した後、司祭様と王子と私の三人+αで貧民エリアに赴く。

馬車での移動かと思っていたら以外にも、移動は主に徒歩、理由をお聞きしたら、そこまで遠い場所でもないし、貧民エリアの一部では馬車が通れるほど綺麗にできていないので徒歩推奨ってわけなのね。
向かっている最中に、司祭様がすっと何かを渡してくれたけれど、これは何かしら?小さな綿?使用用途を聞いてみると鼻栓?…嗚呼、なるほど、異臭問題があるのね。

王子も突如準備を始める、手にはグローブ、鼻栓をくっと入れてからスカーフで鼻と口を覆っているわね、司祭様も同じようにしている辺り、その装備は必須なのね、私も同じようにスカーフを巻いて手袋もお借りして準備万端!ちらりと後方を見ると王子を警護するための騎士一人、侍女一人も同じようにしっかりと装備を整えている。

貧困エリアと呼ばれる場所は以外にも歴史がある場所で、つい最近できた場所ではない。
日々を生きるのも危うい人達が自然と集まってできてしまったエリア…

この直ぐ近くが農村エリア、その二つが会い重なってしまい、この辺りは非常に臭いがきつく、平民達でも用事が無い限り絶対に近寄らないエリア。
そのせいもあってか、不穏な仕事を生業にしている人達が闇に潜むためにこの辺りを根城にしているのでは、という噂もある為、王都にとっては膿とも呼ばれているエリア

そんなエリアに入る前から腐敗集?発酵臭?嗅ぎなられない異臭がふわっと香ってくるわね、鼻栓をしてスカーフを巻いていても匂いを感じるっていうのはよっぽどね。

覚悟を決めてエリアの中へと進んでいく…
エリアの中をぐるっと視察するように見て回っていく、エリアの中にいる人達の多く、いいえ、全員が項垂れている…もしくは横になってピクリとも動かない。
当然ながら、このエリアにいる人達全員は、栄養状況も悪そうだけれど、何よりも衛生面が酷いわね、こんな状況じゃ直ぐに病魔に浸食されて生きる屍へと変貌してしまう…何故かわからないが、私はこの悲惨な状況を見て、少し懐かしいと感じてしまった。
懐かしいと感じてしまったのは、たぶんだけど過去の経験からかしら?

私達の街にも同じような人達がやってくることがあるのよね、人員補充としてこの大陸にある各村等から生贄のように送られてくる人達にはこういった人達が多い、明日を望んでいなくて、今にもこと切れそうな心も体も死んでしまっている人達。
傷ついた体も、心もしっかりとケアをしてあげている、私達の街に来たのだから絶望の中で生きてもらうよりも明日を望む活力あふれる様にしてもらいたいと騎士様が懸命に率先して暖かく出迎えていたものね…
その心は今も引き継がれている、騎士様に導かれた人達はその心を引き継いで、あの街に送られてくる悲運の人達に明日を生きる活力とする為に心も体に栄養を満たしてあげている、その紡がれてきた流れによって、あの街に送られてきた人達は見違えるように生き生きと活動するようになった…

この場所もそういった、助けてくれる人達が必要なのでしょうね。明日を生きたいと、未来を考えたいと思えれるような導き手が必要不可欠なのでしょうね。

この様な現状を放置している王政に疑問が湧いて出てくる、確かに王子が言う通りこのエリアを放置してきた王は何を考えているのか理解が出来ないのも頷けるし、この広大なエリアが不法占拠されている状況を解放するというのも必要なのはわかる。手段が強引過ぎるのは納得できないわね。
王政だけじゃない教会側にも不信感が湧いて出てくる…
声なき悲鳴がこのエリアには立ち込めている、怨念にも怨讐にも近い何かが感じられるエリアに神の手を差し入れようとせず、困惑し困窮した人々を助けようともしない教会は何をしているのだろうか?
平民を助けるのは貴族の務めでもあるのに、貴族達はどうして手を差し伸べないのだろうか?貴族の末の末、何の権力も無い私ではどうこうできる問題ではないけれど、見過ごしていい事ではない。あの頃の若い自分ではこのエリアに立ち入るのは危険だから近寄ってはいけないと教えられていたから、ここまで酷い現状だとは知らなかった…知らないからと言って見過ごして良いわけではない、同じ王都に住むものとして考えないといけないことだったのね、この状況を学院は生徒たちにどうして伝えなかったの?

様々な疑問や過去の教えが色々と思い出され、今後、この人達を助けるにはどうしたものかと、考えながら現状を見て回っていく、みてまわっていくけれど、かさいのあとはみあたらないわね…噂で聞いたような状況は何処だったのだろうか?何処にも、焦げ付いたような、ここ最近で焼けたような痕跡は見当たらない。

それだけじゃない、私が創造していた以上に、思ったよりも人が…少ないと感じるわね、たすけたひとたちはどこにいったのだろうか?

自分の中にある湧き上がってきた疑問を感じていると、ふと視界の中で司祭様が足を止めていることに気が付く。
何かあったのか、どうしたのかと近寄ると困った表情をしている。

どうやら、立ち上がるのも困難な人が司祭様に縋るように服を掴んでしまっていて、司祭様はこの状況をどうしたものかと悩んでいるご様子って感じね。
司祭としてあるまじき行動を起こすわけにはいかないし、この状況で一人だけを助けるわけにもいかない、一人だけ助けられるのを見たら、助けを求めている人達は選ばれなかったという部分でさらに心が病んでしまう。

なら、私が動くのが一番よね。

服を掴んでいる人の傍に歩み寄り、膝を曲げて声を掛ける。
どうやら、命乞いをしているみたいね、助けて欲しい助けて欲しいって具体的に何を助けてあげればいいのかわからないので、困ったことがあれば、教会にまで足を運びなさい、出来る範囲で協力はすると声を掛けると足が痛くて歩けないと消え入りそうな程、小さな声で、救いを求める声が聞こえた。

視線を痛みがあるであろう足を見ると、腫れている。
よく観察すると、傷口から白い膿が出ている辺り、感染症にやられてしまったのね。
一番安上がりで、未来を考えない短絡的な考えで在れば、足を切り落とすという判断を下す医者もいるだろう。だけど、そんなことをしてしまったらこの人は死んでしまうし、このままほおっておくと、どの道、感染症で死ぬでしょうね。

さて、困ったものね、助けを求める人を救わないのは教会として、どうなのよってことよね
ちらりと司祭様に視線を向けると、此方を真剣に見つめている?しょうがないわね

本当はこの人、一人だけを助けるなんてね、不公平感が強いからしたくないのよね、だって、この人同様に困った人が溢れているのにこの人だけっていうのはね?良くないことだけどれ、見捨てるわけにはいかないわね。

こういった状況での最適解として、姫様が編み出してくれた回復術式があると直ぐに傷口を防ぐことが出来るのであるといいのだけれど、あの陣は私では描けないのよね、構造が複雑すぎて…
回復を促すものっか、何かないかしら?術式で回復を促すもの、そういえば、姫様が持たしてくれたやつが…ポケットの中を探ってみると術式が施された紙の感触が伝わってくる、無意識のうちにもしもに備えて常に携帯する癖のお陰でシスター服でも持ち歩いていた。
そうよ、あるじゃない、これを使えば一時的とはいえ、傷口は回復できるわよね?痛み止めは、持ってきてないわね、う~ん、荒療治になるけれど仕方が無いわね。

司祭様に協力をお願いすると頷いてくれたので、護衛の騎士にナイフが無いか確認すると持っているみたいなので、ナイフを受け取り、侍女から火を起こす道具が無いか確認すると小さなランタンを持っているので、それを使って蝋燭に火を灯し、それを火種としてその辺に落ちていた乾いた木々や布を使って火を起こす。
ナイフを火であぶり痛みを訴えている人の口に布を咥えさせて、傷口をナイフでこじ開け、腕の力を使って絞り出す様に膿を全て取り出す、当然、暴れない様に抑えつけるべきなのだが、暴れる余裕もない程に困窮しているのだろう、叫び声すら上げることなく伝わってきた痛みによって直ぐに意識を失ったみたい。
手早く膿を取り出し、回復術式が刻まれた紙を取り出して全力で魔力を注いで開いた傷口を塞ぐために回復させる、失った血液とかはどうすることも出来ない、彼?彼女?汚れすぎていて、肉体も細すぎてわからないのよね、彼でいいかしら?その彼には栄養が必要…歩けるようになったら炊き出しのエリアに来てもらうのが一番かもね。

司祭様に炊き出しが可能なのか尋ねると、明日には用意すると快く了承してくれたので、その事を書いた紙を彼の手握らせ、その場を後にする。
足関節付近しか膿が無かったから、歩くだけなら何とかなるでしょう、手厚く介護してあげたいけれど、一人だけ特別扱いするわけに居もいかないのよね、医療道具も持ってきていないし

身なりが綺麗な人が何かをしているという事に視線が集まってきている、幸いにも先の行為は医療行為に見えていないみたいで助けを求めて人が集まってくるような感じはしなかった、下手をすると身なりの良い人達が痛めつけている様に見えてしまったかもしれない、そうなると、これ以上、ここにいるのは宜しくないでしょうね、早々に離れたほうがいいでしょう。

助けを求めるような視線と、此方の出方を伺う様に見ている様な視線を感じつつ、貧困エリアから離れ教会に向かうのだけれど、全員が満場一致で大衆浴場に行きたいと懇願される。その意見には私も賛成という意見しか出てこないわね。
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