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Dead End 一つの星が消えた(1)

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僕が、僕を取り巻く、全ての世界から、全てにおいて、必要とされていない、そんなことは、重々承知しているし、心の底から痛感するように痛い程理解している。
周りの態度からも何度も何度も嫌という程、心の底からも、嫌という程、味わって生きてきています。


それでも、それでも…自分の居場所を求めては、いけないのでしょうか?温もりを求めるのは悪なのでしょうか?生きようと藻掻くことは愚かなのでしょうか?


ある日、僕を取り巻く環境、僕を殺したいと願う環境によって、足掻いたけれど意味も無くその日が来た、逃げられない準備をしていく最中、絶望に心が染まるように死を覚悟する…王命に従い、死地に向かう手筈を整えて行った。

手筈を整えていると、嬉しい報告が届く、幸いにも今、直ぐに出発することが無くなった…誰のおかげか、誰の思惑かわからないけれど、幾ばくかの猶予が出来た!
だけど、その猶予を有効に事を起こすことが出来なかった、幼い自分では、抗う方法を思い浮かべることが出来なかった、誰かが頑張った恩恵をどう生かしたらいいのかわからず、日々を、何時殺されてもおかしくないという状況によって追い詰められ、ストレスで胃が捻じれそうな程、毎日が辛く、痛かった…

その痛みを忘れる為に暴食の限りを尽くしていた…

っといっても、元々、小食の自分からしたら、暴食の限りを尽くしているのだけれど、他の人からすれば、ちょっと気持ち多く食べれてるね、くらいだったと、今なら冷静に思い返せれる。あの頃からもっと真剣に運動したり訓練に励んでいれば、そんな事を考えない日は無かった。


死にゆく定めの王命…それが、本当に、王の命令で在れば良かった。王が僕に期待をしての王命であれば命を賭ける事も厭わなかった…
始まりは些細な喧嘩からだった、王子として相応しくない立ち振る舞いによる罰だと割り切るしかなかった。罰を受ける覚悟はあった、でも、まさかここまで、命を落とせと言われるような事態に、どう足掻いても後に退けなくなるほどに追い詰めれるなんて思っても居なかった。

幼い私が自分の使命を見失っているタイミングで、上手い事、乗せられたのだと今にして反省しても遅いけれど、反省している…用意周到なイレブンの策略に綺麗にはまったのだろう。

その結果、俺は…のちに感謝しきれない程の恩を、生きるという事を教えてもらった大切な人達の掛け替えのない素晴らしき人の命を奪ってしまった。

情けないことに、男としても、人としても尊敬に値する人物が、愚かな幼い自分のせいで死んだというのに…
残念なことに、心のどこか、僅かな部分、ほんの少し、気の迷いであって欲しいけれど、僕は確かに彼が死んだことを悦んでしまっている部分がある。人として下衆な理由だよ…

心の底から生きる価値を見出すことが出来た、使命を思い出すことが出来た、運命の人…

運命を感じたその人が恋い焦がれるほどに強く想っている人が死んだのだから、もしかしたら、僕にも、特別に成れるというチャンスがあるのでは?
そんな下衆な考えが…僕の中には確かにあるし、ずっと離れることが無かった、彼女を笑顔にしたいという願いだけが僕の原動力だった。
下衆な考えとして俺の男としての部分が、彼女を幸せにできないかと考えずにはいられなかった、彼女の為に俺は…僕が…辿り着いた答え。

王に成らないといけない

王という特別な存在に成らないと僕たちの為に命を落としてしまった彼と同じ位置に立てたとは言えない。
運命の彼女、その彼女に傍で支えられながら共にこの国を発展させ理想とする楽園へと変えていきたい、二度と、あのような悲しみの連鎖を起こさせたくないという、淡い期待も抱くようになった…

その為の力が欲しかった…

どんな策略だろうが圧倒的力でねじ伏せれるような強大なる力が欲しかった。伝説の始祖様のような圧倒的な力が…
自分を守るための力、彼女を守るための力、民を守るための力、デッドラインの先にいる死の象徴を撃ち滅ぼす力…


未来を勝ち取るための力が欲しかった。


この大地に始祖様はいない、現状で自分が知る限り…この大陸で一番の強者は、彼しか知らない。
王子という立場であれば頭を下げれば断ることが出来ないという事を俺は知っている、だから、利用させてもらった。

向こうも快く承諾してくれたわけではなく、渋々といった感じだったからか、何度も何度も、僕の腐った性根を叩き上げるように鍛えてもらった。
心身ともに強く成ったと感じていた、けれど、未だに、抜けない僕の悪い癖は残ってしまった…
けれど!彼は非常に指導能力も秀でているみたいで、踏ん反り返るだけしか能が無かった僕でも、対人戦においてはそこそこ、うん、師匠には絶対に勝てないけれど、そこそこ、闘えれるようになった…なったけれど、強くなればなるほど頭から離れることが無い恐怖の、死の象徴…


頭の奥底にこびりついている悪魔…頭の中で何度も何度も幾度となく瞑想と共に戦いを挑んでも…一度足りとて勝ち筋が見いだせなかった。


唯一、見えている勝ち筋はあることはある。
尊敬する偉大なる騎士様が放った、忘れることが出来ない、【あの一撃】人生で、二度も、この目で見ることが出来た…
そのお陰か、どうかは…定かではないのだけれど、僕にもそれが…死の一撃が扱えれる気がする。


覚悟を決めて、目を瞑り、意識を奥底へと向けると、あるんだよ、発動すれば先は無いと感じ取れる何かが…


戦士として、騎士としての享受が何かは肌で感じた、心で把握した、頭で理解した…今の僕なら愛する人を守るだけの力量は持ちえていると思ってもいいだろう…


鍛え上げてもらえた結果、ある程度、自分自身に誇りのような、自分はダメじゃないっという、根も葉もないけれども、自信を持てる根拠が生まれ育っている、そんな気がしてきていた、実際に何かを守れたわけではないけれど、守れるのでないかと考えれるようにはなってきた。
日々が少しずつ明るさを増していき、明日を楽しみだと思えれるほど前に向きに成れるようになってきた、そんな時に、我らが王が、次の王を決める為の儀式を行うのだと我ら、少なくなった王候補に内容を打ち明けてくれた…

衝撃だった、自分の予想とは大きく違った出来事が発生したことに。

俺は、いや、僕は、てっきり従来の方法で次の王を決めるのだと思っていた…
順当にいけばというか、今の王候補の中で断トツと言えるほど王の信頼を勝ち得て仕事も任されているイレブンが…新しい王に成るのだと思っていた。
だから、僕が順調に勢力を築いて行って、誰にも負けない程の力を身に着けてから、いずれイレブンに下剋上をぶちかましてやる!そう考えていた…
だから、僕が、この未曽有のチャンスに、この波を制することが出来たら、イレブンを押しのけて王に成れる!千載一遇のチャンスがくるなんて、一度も考えた事が無かった…

思い返してみても、正直、その話を聞いた瞬間…情けないことに少しだけ、パニックにも陥ったよ…
賢い尊敬する王が、どうして、この様な方法をとるのか?意図が全くと言ってよめなかったから。
何を考えてこんなことを言い出したのか、理解が、思想が、思考が、何も予測も予想もできなかった。何も見えないものというのはただただ、不安にしか感じなかった。

王命を聞き届けた後は、王城を出て…パニックになりながら、もしかしたらという淡い期待を抱きながら、自室に戻った。
ふと、我に返ったとき、ぞくりと、背筋が凍り付きそうな程の殺気を、死の予感を感じた…

そ、そうだよ、あ、あれが、こんなチャンスを利用しないわけがない!潰してくる、全ての王候補をこの機会に一掃するに決まっている!!

奥歯が震えるのと同時に全身が凍えるように震えだす、何度も何度も死という物を目の当たりにしてしまったせいなのか、明確な死を目の当たりにすると震えてしまい動けなくなる、情けないことに…僕は、死ぬのが怖い…

死を悟った瞬間に…脳裏に浮かんだ愛する人の悲しい笑顔…

あの日、あの時、彼女が見せた、愛する人を見送るときに見せた絶望の中に咲く花のような、二度と見ることが出来ないであろうこの世のものとは、どんな言葉も霞んでしまう程の笑顔が俺の、僕の心を揺り動かす…忘れてしまったのかと己を奮い立たせる。

そうだよ、僕はまだ何もしていない何も成し遂げていない、この世に必要とされていなくても、ある人にだけでも必要とされていたい…


震える足を叩く、震える胸を叩く、震える頬を叩く、震える心を叩く!!
脳裏に焼き付いている彼女の悲しみの笑顔を、屈託のない純粋なる笑顔にする為に!ここが正念場だ!動け動くんだ!!!


恐怖、トラウマ、勝てないジレンマ、ありとあらゆる負の感情に押し込まれそうになりながら、僕は僕なりに動き続けた…
そんな僕を守るために師匠が護衛の騎士達を付けてくれたのだけれど…日に日に、騎士達は僕から離れて行った…

わかってるよ、割に合わない仕事だから…全員が言い渡された護衛という任務を嫌がっているのを、痛い程、身に沁みて、知っているよ…
陰で、言い渡された任務の内容について囁いているのを何度も何度も、耳にしているよ。

【あんなのを守る価値なんてない、俺らの仲間を大量に無駄死にさせたような奴の為にこれ以上、命を賭けてやることなんて出来ない】って、何度も何度も、耳をもぎ取りたくなるほど、耳の穴に熱湯を注ぎ込みたくなるほど、聞かされているよ…

仕方がない、あの時はどうしようもなかったなんて、口が裂けても言えない、事実は事実だから、変えようが無い事実だから…

少しずつ、騎士達が減っていった理由も、個々に別の指令が行き渡っていった…その指令を聞いた人達が心から安堵しているのも知っている…
そして、残ったのは正義感が強くて忠誠心も高い新兵、あがり?くらいの一人の騎士
戦闘に関する技量だけで言えば僕の方が上だろう、だけれども、幸いにしてこの新兵はその正義感からか、騎士同士の間では評判がいい、何か調査とかが必要になれば、聞き込みなどの操作をする駒として、優秀に働いてくれると期待しておこうかな。

少なくなったメンバー、逆に考えれば少人数の方が身軽に動けるからよかったのかもしれない。
僕と騎士と侍女、その三名で色んな場所を訪れて情報収集や、作戦会議を行ってきたけれど、誰も意見なんて言ってくれることなんて無かった。

分かっていたけれど、何処にも僕の味方は居なかった…

ふと、縋りたくなるような思いがある人物を思い出させる、それは、教会にいる司祭…兄のように慕っていたという過去がある人物。
今の状況を打破するのなら、唯一相談に乗ってくれそうなのは彼しかいないと感じてはいる、その人に相談するべきなのだろう、だけれども!問題がある、彼は王族を心の底から嫌悪しているのを知っている…

当然、僕の事も例外にもれず、表面上は穏やかだけれど僕が顔を出すと内心は荒れているのだろうと、察しがつく。

それだけじゃない、今回の件を普通に頼み込んだとしても、教会という立場がある彼が素直に協力的に動いてくれるとは、思えれない…

どうすればいいのか、どうやれば僕は、この事態を乗り越えれる?
いや、乗り越え生き残るだけじゃだめだ、千載一遇のチャンスだと考えるんだ、逃げの一手じゃない、攻めの一手だ!何度も何度も師匠に小突かれたじゃないか、僕の悪い癖だ、危険だと感じた時に、チャンスがあるのに逃げ腰になってしまって竦んでしまう、僕の悪い癖だ…

考えるんだ、考えるんだ!なんとか、なんとか!全てを好転させるような一手が欲しい、誰もが僕の願いを、想いをききとどけてくれるような
【いるじゃないか、全てを巻き込みながらも前へと進む先導者が】
突如、何処からともなく聞こえてきた声と共に脳裏に浮かぶ、真っ白な髪に清楚な佇まい、誰もが目をひく麗しく完成された美、心は慈母の様に優しく、人々を救うために医療の知識も技術も兼ね揃えた…聖女様


俺が、僕が、名前に刻まれし、運命を、決められた定めを、役割を!思い出させてくれた…聖女の騎士としての名を受け継いだ僕の、僕だけの…


あの大地で新生し古き理を打ち破った、そう、短命という宿業を背負うことが無い聖女様。


彼女であれば、司祭が…そう、教会として見過ごすことが出来ない立場である司祭だからこそ!!彼女の、聖女様のお姿を見るだけで彼は絶対にひれ伏す!
聖女様の願いを彼は絶対に断るとは、思えない!


なら、最良の一手、考えられる好転する為の手段とは!彼女が教会に訪れる事!この一手が最良となりえるはず!!
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