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Dead End 6Ⅵ6の世界(3)

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あいつらが向かって行った街の入り口を見つめながら、呆気にとられ続ける、手紙が連絡が途絶えたと思っていたら…
まさか、あいつが、あそこまで情熱的なあいつが…新しい恋を愛を知るとは、思っても居なかったな…
あれ程迄の熱く燃え滾る愛を間近で見てきた俺としちゃぁ、驚き以外の感情なんて湧いてこねぇけどよ~…
半年近くも会わない間に、こうなるなんてなぁ…まぁ、あいつが選んだ幸せの道だろうから俺からは何も言えないけどよ、久しぶりに会ったっていうのに、ちょっと他所他所しぃのは…悲しかったな。

暑そうな服を着た教会の偉そうな人を見送り、呼吸も整い落ち着いてきたので、職場に戻ろうとすると
妻と姫ちゃんが何か話をしている…そうだな、折角だし、もののついでだ、馬鹿弟子を心配していた二人に、先ほど、馬鹿弟子が顔を見せたことを教えてやるか
近寄って話しかけようと思ったが、どうも、二人の雰囲気が、あれ、だな、うん、入りずれぇな…

なんでちょっと険悪になってんだ?

楽しそうに団らんしているのであればいいんだがよ~…そんな、雰囲気じゃ話しかけれないじゃねぇか…
今の状況は、お互いがお互いの言葉に詰まっている拮抗状態じゃねぇか…こんな均衡したというか牽制しあってそうな険悪な雰囲気に割って入りたくねぇなぁ…
うん!後にするか…女同士のいざこざに首を突っ込むのは間違いだ。

そうそう、女性同士の決して男が踏み込んではいけない譲れない闘いってのは、ある!

長い結婚生活を続けていればよぉ、否が応でも学ぶってもんでな、幾ら二人がずっと気にしていた内容でも時と場合によるってもんだろ?…幸せの報告だからな、焦って報告する内容じゃねぇし、後でいいだろいいだろ

回れ右をして険悪な雰囲気から離れようとすると
「何か用事があったんじゃないの?」
愛する妻が声を掛けてくるってことは、割り込んでも問題ねぇんだな?いいんだな?後で文句いわねぇな?飯時にぶちぶち文句言われるのはおらぁ嫌だぞ?俺が用意した飯を不味そうに食べるのを見るのは嫌だぞ?
姫ちゃんも居たんだっていう顔でこっちを見てくる、気が付ていなかったのか?仕方がねぇ、二人が気にしていたことだし、会話に混ざるとしますか
「実はな、先ほど、ばかで…ジラのやつがいたぞ」
二人が同時に驚き、前のめりにいつ!?っと、聞いてくるが、もしかして、丁度あいつのことを話題にしていたのか?
「つい先ほどだよ、荷物か何かを取りに来たのか、直ぐに王都に向かって行ったぞ」

【旦那とな】っと最後の言葉を聞いた瞬間に二人が更に驚いている、そりゃそうだわな、俺だって、いまだに信じられねぇよ。

「あの人があの人を忘れることなんてあるの?」「見間違いだよ!」
二人同時に否定してくるってのは、重々理解できらぁなぁ、否定したい感情には共感しか俺だって感じねぇよ
鼻の穴を広げて興奮している二人を宥めるように
「そりゃぁ、俺だって見間違いだって、聞き間違いだって思いてぇがよ…見ちまってんだよ、身重の状態をな。それだけじゃなく、しっかりと旦那さんがよ、教会のえれぇ人か?雰囲気的によ、そんな教会の偉そうな奴があいつの後ろを付いて歩いてんだぜ?旦那以外の選択肢はないだろ?あいつが熱心な教徒ってのは、聞いたことがねぇし、教会と深いかかわりがあるわけでもねぇのに、教会の偉そうな人と行動を共にすることなんてあるわけねぇだろ?ってことは、考えられることなんて一つしかねぇだろ?」
落ち着いた声で、パニックを起こしかけている患者に話しかけるように諭すような声色でゆっくりと語ると二人はその状況からそう判断するのは間違っていないのだと納得してくれたのか、黙り込んで反応が返ってこねぇな。

暫く沈黙が続いていると妻が納得できたのか口を開く
「そ、そうよね、教会の偉い人が王都を出るなんてそうそうない筈でしょ?考えらえるとしたら、愛する妻が必要な物を慌てて取りに来た、身重だから心配でついてきたってことかしら?取りに来た大事なモノって、何かしら?婚姻に必要なものと、か?かしら?一応、確か、彼女は貴族の出、ですものね?印とか、此方に置いていてもおかしくないものね、それなら急ぎで帰ったのも納得…出来ない事も無い…腑に落ちないけど」
最後の言葉と共に少し頬を膨らませている、妻のいう事には俺も同感だよ、恩知らずなやつじゃねぇからな、事あるごとに世話になった人達にしっかりと感謝を品物と一緒に挨拶に来るくらい律儀なやつだからな。それなのに、余所余所しかったな…

冷静に考えてもやっぱり納得が出来ないんだよなぁ…
それにしてもなぁ、あいつが結婚なんてなぁ、子供が出来たなんてなぁ…
ありえる事ではあるけどよ、あいつの性格的に俺たちに喜んで報告しないわけがないから、急な用事で急いでいたとしか考えらんねぇしな…でもなぁ、あの態度はおかしくねぇか?

考えれば考えるほど色んな違和感がどうしても拭いきれない。
けれど、今から追いかけても、定期便なんてこの時間に無いから、王都まで追いかけたとしてもすげぇ時間かかるからなぁ…後、王都には顔を出しずらいんだよなぁ。

この違和感に対してどうしたものかと考えていると姫ちゃんが突如、建物に向かって走り出すので俺たちも慌てて付いて行く
賢い姫様なら俺たちが気が付かない違和感の答えに辿り着いている、今までだってずっとそうだった、こういう時に姫様の頭脳が俺たちを正しい方向へと導いてくれる。

建物の中に入っていくけれど、ここは、俺たちが寝泊まりするための建物だけど何用だ?って、そうかそうだよな?っとなると、あれか?あいつの部屋か?
姫ちゃんの後ろを付いて行くと立ち止まるのはアイツの部屋の前
あ~、やっぱりそうだわな、あいつのドアの前に到着し肩で息をして呼吸を落ち着かせてからドアノブに手をかけるけどよ、肝心の鍵がねぇぞ?マスターキーなんて持ってきてねぇぞ?
ドアノブを捻ると「…いやな予感しかしないよ」ぼそっと呟くように聞こえた声、そりゃ鍵閉まってるにきまって…

キィィっとドアが開き、何処か悲しそうな顔で中に入っていく鍵が開いてる?
不用心だな、あいつ部屋に鍵をかけて行かないなんてな、この街に住んでいる人が勝手に入って物をとっていくなんてことないけどよ、長期間、かえって、こないのなら、かぎは…

まさか…帰ってこない、から、鍵を閉めなかった?

考えたくない、答え、そうだ、よな、子供も出来て愛する人もいたら、この街に帰ってくる理由なんて、ない、よな、だから、あんなに余所余所しかったのか?
俺たちの関係って、その程度だったのか?




ドアノブを回したら、頬を殴られたような気分になる…
嫌な予想通り、ドアにカギはかかっていなかった、もう二度とこの部屋に戻ることはないという意志が伝わってくる。
この部屋に残していったものは無価値、私達の関係は過去のモノだという意味だよね?

考えたくない感情が心を騒めかせてしまう…

部屋の中に入って直ぐにわかっちゃったよ…ジラさん、もう、私達の事なんてどうでもよくなっちゃったの?
ちらりとドアの方に振り返ると医療の父が呆然と立ち尽くしている、唐突な見捨てられたような別れ方、決別という現実を理解してしまったのか、感情が体を停止させてしまっている。
奥様も、その様子を心配して傍に寄り添っている…本当に仲がいいね…お父様とお母様を思い出すから、二人揃っている姿を見るの、少し苦手なんだよね…

視線を部屋の中に戻すけれど…直視できない、悲しいという感情が押し寄せてくる、見捨てられたという現実が胸を突き刺してえぐってくる。
悲しいよ、何も、何も言ってくれないなんて…見捨てられたとしても、最後くらい、お礼に、今までの感謝を、お別れを…言いたかったな、凄く凄くお世話になったのに、貴女が居なければ私もそうだけど、この街はとっくに滅ぼされていたのに…

じっとしていると涙が溢れ出てきそうになるので、確証を得たいのである場所へ向かう
念のために部屋を見渡す、やっぱり予想は当たっている部屋の中に大きな変化はない衣装棚が開かれた様子もない…服とか思い出の何かを持って帰った様な後は無い、予想通りアレが保管されているクローゼットが開かれている。

クローゼットの中を見ると、知る人ぞ知る、秘密の魔道具だけが無くなっている…予想と予感は完全に的中している。外れて欲しかった。違う理由で急いでいるのだと思いたかった。お産が近いとか、そういった、いや、その理由は苦しいよね、ここには医療の父が居て私が居る、不安要素なんてないじゃん。

ジラさんが取りに来たもの、持ち出したもの、あの人が大事に大事に、きっと、自分の身よりも大事にしている愛する人を保存している魔道具…
その魔道具を改良して欲しいとお願いされたから、私も知っているだけで、きっと、誰にも存在を知られないように隠し続け、大切に保管していた魔道具…

中身について、はっきりと説明を求めたことはないけれど、整備する段階で私は見て知っている…

愛する人の体の一部、血液や体液、それに少量の骨…どうやって集めたのか聞く気はない、聞ける様な親密な間柄じゃないから聞こうにも聞けなかった。
私が最もっと、彼女の傍にいれたら、周りにからかわれても気にせずに、甘えていれば、関係を深く深くかかわっていれば…

何度も何度も振り払っても、頭の中には後悔という言葉しか感情しか、出てこない。
私一人だけの一方通行の感情を向けてはいけないという、自尊心って名前の下らない感情に負けてしまった…愚かな自分を呪ってしまいそうになる…
お母様と瓜二つ、でも、考え方とか、仕草とかは深くかかわっていくと違うって感じていた。感じていた、けれども…


一人の女性として、一人の人間として、温かった…傍にいて欲しかった、一緒に過ごしたかった


私にもう一度、人の温もりを温かみを与えてくれて、やさぐれていた心を救ってくれたことに、変わりはない…
何処かの未来で死んだ私も、あの人の事を母のように慕っていた。わたしが、わたしが、恥なんて捨てて甘えていれば、傍にいてくれたのかな?…あいたいよぉ、おかあさん…

溢れ出る涙を拭いながら、考えを変えていく。
でも、幸せになったんだったら、私はそれでもう、それで…それ、で

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