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Dead End 6Ⅵ6の世界(6)
しおりを挟む親衛隊と完全に分断されてしまった、つまり、ここからは単独で動くことになる。
開かれた教会の門を潜り、何とか中にはいる、魔力の残滓を…力の流れを感じ取れることが出来たら敵が何処で何をしているのかある程度は把握できる。
その為には大地と繋がる場所で心を落ち着かせて集中しないといけない…
なので、建物の中に入るのは間違っているって思うじゃん?
教会の近くで心落ち着かせて大地と繋がる場所なんて真っ先に思いつくのが墓地…敵がそこに何も配置していないわけないでしょ?それを敵が見つけづらい近くの建物で敵の配置を確かめる為に避難するのは必定でしょ!こちとら、か弱い乙女だよ?いないと思うけれども、あの大地に住まう獣クラスの敵が一体でもいれば、私一人だと勝てない!!
息を潜めながら奥へと歩いていくと…シスターの服を着たリビングデッドが祈りの間をうろついている。生前の記憶がそうさせるのか箒を手に持ってウロウロと歩いて掃除?をしている…
たぶん、あのシスターは、死んだ直後かな?外傷は見当たらない、血痕が服の何処にもない、考えられる死因は魔術の波動?敵に直視された?フィアーが限界点を突破すると恐怖に負けて心臓が停止するという事象をきいたことがある。
恐らく彼女は見てしまったのだろう、異形なるこの世ならざるモノを…悪魔を…
殲滅して進むのが正解なのだと思うけれども、明日を顧みないと決めていても!最終目的に辿り着く目処が立っていないのに、こんな雑魚に不必要な魔力を消費したくはない。
なら、やり過ごすのが一番、そう思っていたけれど…どうやら死んだ直後は生前の動作を真似てしまうのかもしれない、箒をもって教会の奥へいったり、戻ってきたりしている、たぶん、掃除をしているつもりなんだと思う…
敵の行動パターンが規則正しいのか少しの間、観察する、一定の周期で一定の動作をしているのであれば、見つからずに奥へ行けると思う
箒を片手に、服には、血痕が無く綺麗なまま、この後ろ姿だけをみたら、生きてる人にしか見えない。
普段通りのシスターにしか見えない、ちょっとふらついてお体の調子が悪いのかな?って程度、正面を向くと、顔色が真っ白で血が通っていないのが一目でわかるし、眼球の動きが人のそれじゃない、口も何も言葉を話していないのにパクパクと小さく上下に動いている…
それさえ除けば、どう見ても、人、なんだよね…そりゃ、こういうものだっという確信が無いと武器を振り上げても…躊躇っちゃうよね。人を殺したことのない善良なる人だったら、尚更、振り下ろせないよ。
観察を続けていると、ふらふらと奥へと続くドアから離れ、祈りの間までもどってきて、ふと、上を見上げている?視線の先は外れそうになっているカーテンがある?
視線が逸れて動きを止めているし見てる限り規則的な動きもしなさそうだし、これを逃すと時間を無駄にしちゃう、行こう!今が好機!
敵がずっとぼ~っと上を見上げている隙に、教会の奥へと通り抜けようとした刹那、教会が大きな衝撃に包まれる
何!?この突然の衝撃!?衝撃が飛んできた場所は何処から!?ぇ、まって、これって足元から!?ってことは、地下!地下に何かある!
地下に向けて意識を向けていると、ふと、部屋を照らす灯りが暗くなり影が私に重なる…!?
瞬時に身を翻すと地面に敵の顔がめり込んでいる!私を食いちぎろうとしたってことね!こうなったらもう、魔力を消費するしか
術式を発動しようとしたら再度、地面から何かが突き上げてくるような衝撃が上空へ向かって抜けていく!!余りにも強大な力なのか、一瞬だけ私の体が宙に浮く
シスターデッドも先ほどの衝撃のせいで上手く立ち上がれず転がるように私から離れる!
今のうちに奥へ逃げ込もうとしたけれど、足に力がはいらない!?
先ほどの衝撃が足に響いているのだろうっ!
っち、少なからず私にも影響を及ぼすなんてね…しまったな、使おうとしていた術式も法則が崩れて発動しそうにない、新たに組み立ててる時間は無さそう、敵も此方に向かって駆けよってる…ここまで接近を許してしまったらもう、駄目、か弱き乙女は血しぶきを上げて死ぬしかない。
間に合わないっか…ごめん、みんな、ここで終わる。
完全に死を迎える前に!間に合うかわからないけれど、少しでもいいから、ここ迄に得た、この世界の情報を!私が死んだという未来を過去に託す術式を発動させる!
死を覚悟して祈りを捧げようとしたとき、上から布が落ちてきてシスターデッドに覆いかぶさる…
何処から布が?落ちてきたであろう場所に視線を向けると
その運命に感謝を捧げたくなる
足に力が入るのを確認した後、直ぐに教会の奥へと駆け込む!!私達を見守ってきてくれた肖像画に感謝を捧げ乍ら足を進める
奥へ通じる通路に足を踏み入れた瞬間に直ぐに死を悟りそうになる…そうだよね、教会にシスターが一人ってわけないよね!!
隠れる場所も無い!ただの通路にリビングデッドがひとつ!こればっかりは交戦をさけられ…ん?
リビングデッドは私に目もくれず祈りの間へと駆け出していく?…理由はわからないけれど、見逃してくれるのならそれでいいよね、深く考えないでおこう。
…生前の動きとして祈りの間で激しい物音がしたから駆け寄ったとかそういう感じだと思うしね。
リビングデッドが徘徊する教会の奥は危険極まりない、何とか、墓地の様子を探れる部屋を探さないと…いや、違う。そうじゃない、目的の場所はもう把握したでしょ?
今すべきことは、地下へ通じる道を探す事
敵が地下に居るのは明白、突き上げるような魔力の衝撃、上へ向かって行くと感じた力の流れ、つまりは上空に向けて力を放つ、つまりは、魔力を注いでいるのでしょうね。
一刻も早く目的が何かわからないが何かに必要な力を送るという、儀式を止めないといけない!
まだ力を送るっていうことは、儀式は終わりを告げていない、この先がある!これ以上の悲劇が発生する!
手当たり次第に部屋に入って地下に通じる部屋を探すのは…ダメだよね、そんな時間はない、なら、何処の部屋を探るべきか絞る!
彼らは、用意周到に誰にも見つからずに息を潜めて秘密裏に行動をしてきたはずだから、滅多なことが無い限り調査されない偉い人の部屋の中って考えるのが妥当
つまり、更衣室とか、休憩所とか、物置って、書かれている部屋の中を調べる必要はない
息を殺しながらシスターデッドに見つからないように奥へ進むと、一つの部屋に辿り着く、ネームプレートが置かれているが、文字が潰れて読めない部屋がある。
名前が書かれていたのだと思われるプレート、ってことは、教会に住み込みで働く人、つまりは偉い人の部屋ってことね!
ドアノブを捻ると鍵はかかっていないので、ゆっくりと中に入る
部屋の中央では、椅子が誰かの帰りを待っているかのように哀愁漂う感じで置かれている。
椅子の前にある机の上を見ると、何か本が置かれている?
近くにより、目を凝らして置かれている日記を見る…それが何か直ぐに理解すると同時にこの部屋が誰の部屋だったのか知ってしまう…
私達の一族が王家から、教会から監視され続け幽閉されてきた部屋…短い人生を生きるだけの私達を閉じ込める鳥かご
こんな悲しい場所に置き去りにされた日誌を回収して一族の皆が待っている私の部屋に持ち帰らないといけない気持ちになるが、今はそれどころじゃない
日誌から手を離して、周りを見渡す。耳を澄ませる。状況を把握する。
幸いにもリビングデッドがこの部屋に入ってくる様子はない
つまり、生前もこの部屋には何か用事が無いと入ってこないという事
音を立てないようにドアにカギをかける。
生前の記憶通りで暫く動くのであれば、鍵を蹴破って入ってきたりはしないだろう。
部屋の様子から見て誰かが、使用していた痕跡が残っているし、掃除が行き届いているみたいで部屋の隅にも埃がない?
…ああ、そうか、ジラさんだ、ジラさんはこの部屋で過ごしていたのだろう。
っということは、うん、可能性が高いよね。
私だったら緊急時の入り口や出口を用意する。それも出来れば誰も迂闊に立ち入らず、探ろうともしない特別な部屋…ここに造られている可能性、高いよね?
床に手をついて探知術式を走らせる…BINGO、当たりじゃん、これも寵愛の加護のおかげかな?
人ひとりが通れる程度の地下へ通じる穴がある、そこから先に反応がある、それも複数人の反応
詳しく探りたいけれどあれ以上先に術式を伸ばしたら逆探知されかねないから…探れない。
個々に辿り着くまでに、結構な魔力を消耗してしまっている。
どうにかして魔力を補充したいけれど…手段が無い。
この世界には、始祖様が他の世界で見たマナポーションという、魔力を急激に回復させる回復薬は完成する兆しも無い。
今だに、材料を見つけることが出来てない、たぶん、この星には生息していないのか遠い遠い大陸にあるのか、現状では作り出すことが出来ない。
過去に考えたことがある、始祖様が早々にこの世界から旅立ったのは、魔力を回復する手段がなかったからという理由を考えたことがある
何故なら、残してくれた秘術の中にマナポーションの精製方法が残されている、つまりは、そういうことだったんじゃないかってね。
少し思考が逸れた、思考を現状打破に向けて考えをただす。
さて、現状、打てる手を考えるべきなんだけど、思考超加速は出来ない、あれは魔力の消費が激しい、身体強化に少しでも魔力を残しておきたいし、攻撃に用いる魔力を残したいし、近寄るために認識阻害の術式も魔力をまわしたい、限られたリソースで最大限の結果を生み出さないといけない。
うーん、打つ手が無い事も無いけれどまだ、使いたくない
何か無いかとポケットの中を探っていると魔力を可視化する魔道具が出てくるので、つい、藁にも縋るような思いで覗き込む
あれ?この部屋、魔力濃度が凄く濃い?
どんな魔境で在れ、ここまで魔力濃度が高いなんてことはない…そこに何の意志があるのか、何のためにこの部屋に魔力が漂い続けているのかわからないけれど、これを僥倖と考えずにどう考えるのかってことよね。
上半身の服を脱ぎ、意識を集中させる、今から行うのは一度も試したことが無いぶっつけ本番の技!ジラさんが一度見せてくれた、空気中に漂う魔力を搔き集めて吸収する術を!!
空気中に色濃く何かの意志を持っているかのように漂い続ける魔力の残滓を搔き集める!!
魔力を搔き集める術式は過去に何度もトライしている、魔力譲渡法を簡易にする為に何度も試行錯誤しているから、漂うだけの魔力に指向性を持たせて私の中にはいりこま…
魔力が体内に流れ込んでくると同時に、魔力がどうしてこの部屋に漂い続けてきたのか理解する…これは、魂の残滓だ
涙が溢れ出てくる、削ぎ落された記憶、消したくても消したくない無念の想い、悲劇を忘れたくない、恨みを忘れたくない削ぎ落された魂の残滓!!!
あいつ、あいつ!あいつぅ!!!おま、おまえか、おまえがおまえがおまえがぁ!!!我が一族を手に駆け!ジラさんの純潔を踏みにじり!ジラさんを、我が一族を魔へと変貌させた元凶はお前かぁ!!!
流れ込んでくる記憶によって心が憎悪に染まる。
どうして、この部屋に魔力が漂っていたのか、わかったよ…
叔母さん…名も知らぬ、会った事も無い血縁者の魂…
ジラさん…我が一族と近しい容姿をしていたが為に巻き込まれてしまった心優しき人の魂…
その二つが混ざり合っていく最中、攫われ、犯され、女性の全てを踏みにじられ、飽きてしまったおもちゃのように無残に捨てられた…
誰の手かわからないが、誰の所業か計り知れないが、ジラさんにはまだ利用価値があったのだろう、この魂が再起するために…
過去のトラウマを思い出させないために断片的に削ぎ落した、削ぎ落し方が雑なのか、魂を削ることでしか削ぎ落せなかったのだろう。
その魂が魔力と形と成したのだが、恨みを晴らすまで忘れたくない思いが怨念のように渦巻、いずれ我が身へと還ろうと残っていたのだろう・・・
ジラさんだったら、それくらいやってのけそうだもの、彼女は執念深いし、純粋で一途だもの。
ジラさん、任せて…復讐してあげるからね。
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