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Dead End 6Ⅵ6の世界(5)
しおりを挟む王都に着いたみたいね、馬車が止まってドアを開けてくれる、少し目を瞑って体力を温存していたから、着いたのに気が付かなかったわね。
降りる前に同乗者を見ると、何処を見ているのかわからない、疲れでも溜まってるの?どうでもいいけどね。
馬車から降りてすぐに、教会へと真っすぐに歩く、心なしか足が速くなってしまう。だって、やっとだもの!楽しみに楽しみにずっとずっと、まっていた!
全てが揃った、やっとやっと!会える、ダーリンと会える!!
時が満ちたのだと、神は教えてくれた…耳鳴りの奥から聞こえる神の声が未来を告げる、幸せに繋がる未来へと…その全ての準備が出来たのだと。
教会に戻る前に少しでもダーリンの情報を搔き集めたいので、ダーリンが安置されている墓を暴き骨が入っている壺を取り出したのはいいけれど、軽すぎないかしら?
骨壺の中を見てみると中身は空っぽだった…ここに無いとなると、ご実家の方ってことになるじゃないの、あの場所は近寄れない、危険すぎる…取りに行けない。
「ぁ、あの、イラツゲ様」
後ろをずっと付いてくるだけのオニキスが恐る恐る声を掛けてくるじゃない、貴方には声が聞こえなかったの?何をしているの?こんなところでぼさっとしてないで準備をしなくてもいいの?
「そ、その、墓地にはもう、骨は一つも残っていません、その、儀式に必要なものでして全て、その」
…そう、なら、大事な大事な、ダーリンの骨を有象無象と一緒にしてしまったのね、無能が…
じろりと睨みつけてしまうけれど、こいつを睨んだところで何かが変わるわけでもない、ダーリンの情報は手元にある、きっと、神なら何とかしてくれる。
ねぇ?そうでしょう…
「いきましょう、始めるわよ」
「「はい!」」
いつの間にか王都にいる全ての信徒達が集まっており、私達の周りを囲むように立っていて、私の言葉に元気よく返事を返してくれる。
オニキスは同志が集まっているのが感じ取れていなかったのか、同志が何時の間に集まっていたのに、気が付かなかったみたいね。
驚いて周りを見渡している…あなた、信仰心が薄れているんじゃなくて?
墓地に人が集まったと思ったら統率されたように動き出す。
傍から見たら何か良くない集団にしか見えないでしょうけれど、この状況下で恐れるものなんて何一つ無い、警戒するモノなんて何もない。
周りの視線?不審者が集まってるから騎士団に通報?そんなもの、気にする必要性が無い、私達を止める術は何処にもない、存在していない全てにおいて、遅い。
今日で全てが【終わる/始まる】のだから
地下に入ると、各々が何も語ることなくめくばし無くとも意思疎通が出来ている。
素早くポジションに着き、祈りを捧げる姿勢をとると、事前に準備しておいた、注いだ赤き贄が急速に減っていく…集めた白き贄が砕け粉となる…
地下の広大な空間、その真ん中にある陣が赤く白く黒く…輝き始める
誰も何も言わず、決められた場所で祈り(術式)を捧げ続ける…祈りの声が重なり地下に響き渡る
呼応するために、最後のパーツである私も、陣の中央で膝をつき祈りを捧げる、私の、願いを聞き届けてもらう為に
はじめましょう…
さいかいのぎしきを
全員が声を合わせて準備が終わったことを告げてくれる。
此方も目で見える範囲で確認した限り、部隊の編成が終わり、全員が持てる限りの量産した魔道具を持って王都へ向かって行軍を開始する。
今回の作戦は私達の全勢力、全武装を持って対処する、その為に私達の街には…誰も居なくなっている、獣共のが攻めてこようがどうでもいい、滅びは確定している。
確定していても、足掻くことは出来る、最後まで人類一丸となって戦い抜いて悔いが残らないようにする。
だから、非戦闘員である医療の父などの医療班は、王都から少し離れた場所で陣を築き、王都から避難して来たであろう怪我人を見てもらう。
魔道具を扱えれる者は、王都から出てくるであろう…敵を逃がさないようにしてもらいたい。絶対に…
王都へと進んでいく最中も、儀式は進んでいるのか、王都上空に現れた目がゆっくりと開こうとしている。
完全に開いたら何が起こるのかわからない、なんとか、開ききる前に儀式を中断させないといけない…
開ききる前だったら、ジラさんを助けることが出来るかもしれない…
行軍中に、マリンさんが慌てて近寄ってきて何が起こっているのか、どうして、全部隊が医療班迄、出張ってきているのか説明を求められたので
この先に待ち受けているであろう、この大陸、最大の試練が起きようとしているのだと伝えると自分も参加すると言い、急いで装備を整えに家に戻られた。
正直なところ、彼女一人が増えたところでどうしようもないと思う、術式の規模を考えると…止めたところで彼女は止まらないだろう。
好きにさせてあげよう。生き残ることを前提に考えれば行動を共にして欲しいけれど…全滅は免れない、好きに動いてもらおう悔いの無い様に
王都手前で陣を築き、作戦とは言えない作戦を伝える
【未曽有の危機、これから先に何が起こるのかわからない、各々は独自の判断により、自分たちの守りたい人達を守りなさい】
全員がきっと何か策があるのだろうと私に期待を寄せているところ申し訳ないけれど、私もね、予想はできても確定は出来ないの
ただ一つ言えるのは
【この先に現れる敵は獣じゃない…人でもない…絶対に倒すことを躊躇ってはいけない】
私が知りうる情報で、一番可能性が高いのが、王都全ての生きとし生ける生命を捧げ、本当の意味での、【死の大地】を生み出す下法…
あの目が開いた時に王都にいる全ての生き物が贄となって捧げられ何かしらの魔術が発動するっとしか見立てれない。
だから、なんとしても…
儀式を止めないといけないと前を見据えた瞬間、遅かった、おうとの光が一際、ひときわつよく、輝いたように見えたその瞬間に
上空の目は完全に開いてしまった。
儀式は発動してしまった。
慌てて号令を出す、突撃の号令をだす!少しでも少しでも多くの人を救う為に号令をだす!
号令と同時に私も駆け出す、目指すは教会!今からでも間に合うのかわからないが、せめて、少しでも敵の情報を手に入れたい!…間に合わないと思うけれど、お母さんをまもりたい!!
教会に駆けだしている最中に、あちこちから大きな悲鳴が聞こえてくる?悲鳴が聞こえるという事は、命を吸い取る術式ではない?
もしくは、既に必要な贄は集まり切っている?なら、あの悲鳴は?何が起きている?立ち止まって確認したいけれど、立ち止まると教会に辿り着けるとは思えれない!
私の魔力残量には限界がある!迂闊に術式を行使することは出来ない!
後方から声が聞こえた、走りながらも耳を澄ませると
「したいが!死体が動き出した!?」
その言葉で状況を瞬時に理解する。
…最悪だ、兵隊を生み出すタイプの術式ってことね、始まりの先兵が民を殺し、その死体をもって次の兵隊を生み出す、そして、その兵隊が次の兵隊を生み出す為に人を殺す…それが繋がっていき連続的に兵隊を生み出す下法
今、この大地で死者となると敵の軍門に下る…結果的に同士討ちがいずれ始まるでしょうね…
商店街に入ると、あちらこちらからリビングデッド共が此方に向かって走ってくる!?
後ろから付いてきた戦士達が次々と襲い掛かってくる元王都の住民を塞ぎ込むように闘う姿を見て
「躊躇わない!切り捨てて!首を跳ねて!心臓と頭は攻撃するだけ無意味!首を跳ねて!」
心臓は既にとまっている、頭を狙うのは効率が悪い、死にたての体は腐っていないから当然、硬い。
頭蓋骨を砕いて脳を破壊するのは片手剣や、槍では難しい、なら、首を切り裂いて神経を切る!そうすれば、多少は動きが鈍くなる!その後に槌でかち割れば完全停止も出来るだろうけれど、完璧な対応は期待できない、何故なら、彼らはそんな連携したこともないし、人を切ったことも無い…
何処からどう見ても人、人類を守るために闘ってきた人達が、人類の…頭を砕く行為なんて出来るわけがない…
走っていると、後ろから悲鳴が聞こえてくる、事前に忠告したけれども、そうだよね、そうなるよね…躊躇ってしまったのね…
耳を塞ぎたくなるような悲痛な叫び声を置き去りにして前へ向かって走っていくと
前方から女性型と、男性型のリビングデッドが此方に向かって走ってくる
私は…ため…
奥歯を噛み締め決意を術式に変える!!
躊躇わない!!
術式を使って殲滅するために、敵がどの辺りを通るのか簡易的に計算し、術式を発動させるタイミングを見極める!
殲滅対象が狙いすました箇所を通過したのと同時に、指をパチンと鳴らすとリビングデッドの頭が破裂し走っていた勢いを殺しきれずに道端に頭のない遺体が転がる。
転がる物質を横目に走り続けるが、内心は術式が成功したことによって安堵している、第一プランがストレートに成功するのは五分五分の賭けだったから。
よかった、どうやら、あいつら、まだ呼吸の真似事をしている!呼吸していなかったら第一プランでは殲滅は出来なかった。
空気の流れに乗せて、ある座標に起動したら爆発する術式を流す、それをあいつらが鼻で息を吸うようにしたお陰で鼻腔内に術式を流し込めることが出来た。
指を鳴らすという発動条件によって、流し込んだ術式が発動する、内容は、魔力と酸素を限界まで圧縮させ小さな魔力の火種によって空間を爆縮し、一気に空間を膨張させ爆ぜさせる。
密閉されていない広い空間でこの術式を発動させてもポンっと音が鳴るだけの殺生能力が低く、本質は音を出すだけの術式
だけど、鼻腔程度の空間でこれを使えば圧縮する過程で周囲にあるものも引き寄せる様に圧縮される、つまりは敵の頭蓋骨の一部や肉片を引きはがして圧縮し、一定の圧が加わると爆発する…鼻腔でね爆発が起きる、圧縮した肉片と骨の一部と共にね
分かりやすく言うと、鼻の奥に爆弾でも突っ込んで爆発させるって感じ!
さぁ、急ぐよ!明日を考える必要が無い分、持ちうる限りの、ううん、全てを使うつもりで、私の願いのままに走り抜けるんだから!!!
商店街を抜けて、教会が見える広場に辿り着いた瞬間、今までの敵とは違い、どう見ても生きた人たちが襲い掛かってくる!?
地面を一度蹴るだけのただの力任せの跳躍で50メートル近くを飛んでくるなんて人を捨てたとしか思えれない!!
確実に悪魔信仰によって身も心も捧げた人を捨てた者たち!!リビングデッド以上に厄介な敵!!
一瞬、走る速度を落として敵の攻撃を掻い潜るために身構えると「こいつらの相手は自分たちが!姫様は諸悪の根源を!我らが王都をお助けください!」騎士一号が前に出て槍を構え眼前に迄、迫る敵を惹きつける。
騎士一号の後を私の親衛隊が続く様に次々と狂信者達と対峙していく…
狂信者たちも一番の狙いを武装した人間にでもセットされているのか、私の事は見えていないかの如く相手にしようとも見向きもしない。
優先順位を付けて行動する原理…地球の技術を知っている私からすれば眼前の敵は機械と何ら変わらない。
命令されたようにしか動けない、人の意志を、魂を、どの様に動くのか事前にプログラムされている。
それは、人と言えるの?
言えるわけ無いよね!なら、私がすることは殺人じゃない、救えない生き物を模した敵によって私の親衛隊を殺されたくない!なら、私が出来る簡単な手助けをするだけ!
動きを鈍らせる程度の攻撃で敵の機動力を削ぐ!
すれ違いざまに、飛んできた狂信者のアキレス腱に小指程度の太さの穴を開けていく、一つ、二つ、三つ…っち、後続の敵が飛んでいく起動をずらしやがった!
私の動きを見て何かしていると考えて空中で体を捻って左方に軌道をずらして足を狙えないようにしやがった!
厄介なことに知恵はあるってことじゃん!やっかいね…片足とはいえ少しは動きが鈍るでしょうけれど知恵がある敵だと私の親衛隊が遅れをとる可能性が少し上がってしまう。
幸いに、私の攻撃を警戒した影響もあって、敵が繰り出そうとしていた波状攻撃のタイミングをずらせれたから、瞬時に親衛隊が壊滅することは無さそう!
信じよう、これ以上、後ろを振り返れない!親衛隊が負けてしまったら狂信者はこっちに向かってくる!少しでも距離を離さないといけない!!
…だから、信じるしか出来ない!親衛隊で、あれば、たぶん…ごめんね。見捨てるような感じにしちゃって、次はもっとうまくするからね。
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