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とある人物達が歩んできた道 ~ 金襴紫蘇 ~ ①

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会議に関しては荒れることなく。終始穏やかに進んでいき、何事もなく決まった。
決まった内容としては
彼の生まれや出自がどんなのであれ、特別扱いをするっという、条件には、当てはまらないなので、通常通り新兵扱いとする。っという形で着地している。

会議の流れ的にはだいたいこんな感じ?
推薦者の圧を感じてはいる、彼の志望部署は医療班となっている…
だけれど、此方側としては、特殊技能が必須となる部隊を希望されているのであれば、条件を満たしていないと難しい。
なので、此方で定めている条件を満たしていない、推薦者が特別な方で在ろうとも、例にもれず新兵扱いとする。
しっかりと全部隊、全部署を体験してから、再度、彼からの要望を尊重した配属先を決める形とするって流れだったかな?

口のはさみようが無いし、姫ちゃんと事前に話し合った内容的に、ツッコミどころもない…強引に手を出そうとすると派閥が生まれそうなくらい亀裂が入る危険を感じていたので口に出せなかったのよね。右大臣なんて大それた肩書があるけれど、決定権は殆ど無いのよね…昔と変わらず雑用係かっての。

会議が終わって、各々の背中を見送っていたら、あんにゃろう…心配かけさせやがってまったく。
ベテランのやつが会議の帰り際に小さくガッツポーズを取り、喜びを露にしている姿を見て少し、ホッとしたわよ。
ここ数年、作られたような感情しか見せてこなかったアイツが…様々なプレッシャーによって心が擦り減って感情を失いつつあるんじゃないかって心配していた…あいつが大勢が近くにいるのに、喜びを表現するなんて、思ってもいなかった。お姉さんとして、ちょっと涙が零れそうになったわよ。

一つの不安が解消されるであろう未来が垣間見えたと思ったけれど、次の問題をどうするのかってことよね~

次の問題として、医療班の意志が統一されていないってことよね!団長の立場って一体何なのかしら?って凹んじゃいそう…私って人徳ないのかしら?…っふ、あるわけないわよね、ここ数年、医療班としてっていうか、団長として働いているのって滅多にないモノ…現場は殆ど、先輩に任せっぱなし…外勤務は古くからいてらっしゃる方達が切り盛りしてくれている。

医療班も外勤務が増えてから、常に人手不足、かといって、専門知識が必要だから直ぐにでもなれるわけじゃない。
医療班を志願する人は本当に少ない…誰もなろうとしてくれないのよね、医療の知識がある人って本当に稀なのよ。
サポートとして補助とか、陣に魔力を注ぐなどの誰でもできる仕事は、他の部署と兼任で仕事をしてくれている…でも、メインを担当してくれる人が少なすぎる…

未来の事を考えると若くてリーダーになれる素質のある人は大歓迎なのよね!!…その辺りは皆も重々理解してくれるけれど…騎士様の息子さんじゃなかったら、強引にでも獲得しようと動けたのに…

ダメダメ!しょげないの!気合入れる!皆が協力的じゃなくても頑張る!!

そーなのよねー…彼が医療班へ所属される様にしっかりと迎え入れる準備を進めて行かないといけないんだけど、右大臣として仕事が山ほどたくさん、嫌になる程!あるのよ!その忙しい中で、何とか時間を作って先輩にね、彼が医療班を志望しているのだから、その意思を尊重して迎え入れたい!って、相談してみたりしているんだけれどーー!!

先輩からすれば、「才能ある人物を腐らせるわけにはいかねぇだろ、戦士部隊に所属するのが一番じゃねぇのか?」って感じで相手にしてくれないのよ~…
止めに、医療班を志願しているのは何かの間違いだってさ…戦士長の息子さんだからって戦士としての才能があるって決まったわけじゃないのよ?志望動機を見て!って見ても、はいはいって流されるし…姫ちゃんも敵だし!戦闘に関する部署全部が敵!

はぁ、溜息が出てしまう程に、うーんって感じでよね~頭を抱えて座り込んでしまいそうになるくらい、想定以上に味方が居ないわね…

当然!医療班で戦士長と関りがあった古い人達に聞いたわよ!息子さんが医療班を志願してること!!
皆も、先輩と同じで、どうして医療班を選んだのかって何かの間違いでしょって感じで、私を含めて書類とかに不備があるのだって感じで不信感の方が強いみたい。
私が私利私欲で書類を改竄なんてしないわよ!まったく、そりゃぁ、騎士様に関係することに関しては暴走しがちなのは…間違いないわよ?
それにね、全員同じこと言うのよ…医療班よりも戦士部隊が適任なのだから、此方にくる理由って何?冷やかしで来ないで欲しい、貴女も職権乱用は良くないわよって感じなのよね…
きっと、そこの部分が引っかかってるんでしょうね…過去に色々とやりすぎたってのが、全員覚えているから、でしょうね…っく、若気の至りなんて私は何一つも欠片も!思ってないから!反省しないわよ!!あれが私の全て!青春なの!!

…こうなるのを姫ちゃんは予想していたのでしょうね~、だから私が折れさえすれば、彼を自分が欲しい部署に誘導することなんて、どうとでもできるって考えてそうね。

味方が少なすぎる、風向きが良くない、見渡す限り賛同者がいない…
うーん、考えれば考えるほど、相手のドツボに入っていきそうな気がするわね、成程、あの子って搦め手も真っすぐで真っ当な手段も清濁併せ吞む様に織り交ぜてくる。
敵に回してみてはっきりと感じるわね、圧倒的に上の存在を相手にするって感覚。
これはどうだろう?って新しい案を考えて行動を起こしていると、だんだんと、気が付いてしまう、それに対して既に先手を打たれていそうな…先回りされているんじゃないかって気がする…めげずに思考を巡らせて、新しい何かに辿り着いたかのように閃きを得たとしても、それすらも誘導されているような、手のひらの上で遊ばせてもらっている様な感覚がする、出ることが叶わない籠の中って感じが拭いきれない。

飼殺されるような、生温くジワジワと選択肢を削られていく…敵に回したくない相手って心底、感じているわね。

纏わりつく様な見えない手を振りほどく様に体を震わせてから思考を止めない様に動かす。
可能性を探る、研究者で在り探求である私達の行動原理を最大限に奮い起こす!

そうね、複雑に考えない、単純に考えましょう。
まずは、どうやって彼を獲得すればいいのかしら?って部分を探っていきましょう。

う~ん、そうよね、こう、何というか、決定的な…彼が、そう、何かが、あれば…医療班にとって、いいえ、全部署よりも医療班として彼が必要!彼しか出来ない可能性があればって、説得させるだけの特別な決定的な交渉するための材料が欲しいわね。
特別な理由があれば全部署を納得させることもできる、当然、医療班もね。

後は、後手後手になるのは仕方が無いけれど、正気の手順として医療班に所属させるとしたら…
彼が全部署を渡り歩いて、志望部署が医療班がいいですって言ってくれれば…いや、それだけで、前衛部隊を取り仕切る幹部達が納得するとは思えれない、ベテランのやつが絶対に首を縦に振るとは思えれない。
だとすれば、戦士として何かしら決定的に欠落した部分があれば、マイナス要素として交渉することが出来る、そう、志望動機の中にある自分は向いていないという部分、その理由が何かわかればってことね…後は、何か他にも理由があるのだったらそれを軸にして説得できるわね。

根掘り葉掘りストレートに聞くのは難しいわね、少しずつ少しずつ関わって聞き出して自分がどうして戦闘に向いていないのかって理由を聞き出す。
ただ、聞き出した結果、戦闘に不向きってだけの弱い理由だけだったら、ちょっと弱いわね、肉体的に不向きであればベテランのやつだったら鍛え上げようとするわね、確か、書類に年齢も書かれていた、16歳であれば、肉体的に優れていなくても鍛え上げればどうとでもなるもの。
心の問題だったら、医療班としても外での勤務が難しくなる、そうなると…研究所に持っていかれるわね。団長候補にするのは難しくなってしまう。
そうなると、外では働かない部署があるから、そちらに配属される可能性があるってことなのよね…
嗚呼そうか、成程、それを姫ちゃんは瞬時に理解して、外で敵と直接戦わない部署だったら獲得できる余地があるって考えたのね、そして、それは医療班も外勤務が出来なくても病棟や研究という立場もあるじゃない…そういう答えを導き出したとなれば、一番の敵は私ってことね、だから、私を出し抜こうとしてきたのね。

だけど、姫ちゃんも自分の欲求を完全に貫き通すような不条理な人じゃない、本人が望むことを一番に考えてくれる。

だから、彼が、どうして、医療班を志望したのかを聞き出して…本当は過去を根掘り葉掘り聞くのって、この街じゃタブーだけれど、それを軸にするのが一番でしょうね
今の状況だと、いくら考えてもダメね、でも、自分がどの様に動けばいいのか、方向性はつかめたような気がするわね。

考えがまとまってきたので、椅子から立ち上がって屈伸したり、背筋を伸ばしたりして長い時間座っていた体をほぐしていくのだが、その際も動き出した思考は止まることなく考えを巡らそうとする。

せめて、医療班全員の想いが統一されていて、誰もが心の底から彼が医療班に入るのを全力で勝ち取る!って、くらい一丸場となって動いて他の部署を圧倒する程の勢いだったらよかったんだけどねー。先輩ですら、首を傾げている状況…説得するのは難しいわね。

纏めると、見渡す限り敵しかいない、誰しもが、彼こそ長年待ちわびた戦士長を継ぐ器であると信じ切っている。
知恵の姫様、力の戦士長…この二つが揃えば、長きに渡る人類と獣達の戦いに終止符を打てると、密かに湧きだっているのも知っている…かつてない程に士気が高揚しているのだと感じているもの。

戦う部隊の人達全員が自分達の代で人類救済の救世主になれるのではないかってね…
幸いにも、あの戦いを間近で見たベテランのやつは、そうは思っていない様子だけどね、当事者でない人達は英雄譚として語り継がれるんじゃないかってくらい浮ついてるのよね。

こんな状況で私が、私だけが、彼は医療班を望んでいるなんて言ったところで焼け石に水なのよ、一瞬で蒸発して発言したことすら覚えてもらっていないって感じ。

今のところ、姫ちゃんが予想した通りに事は進んでいる。
つまり、姫ちゃんの考えている内容通りに進んだら、術式サイドとか、研究所に彼が所属するという事になりかねないんだけど、それはそれでいいのかな?って思ってしまっている私もいる、外よりも内の方が危険性が低くなるから、ケガをしたり命を落とすような出来事からも遠のく、つまりは、大事な息子が怪我をすることなく傍に居てくれるっていう打算的っていうか、親心がそれもいいんじゃないの?って語り掛けてくる。

ふぅっとため息と共に、自分勝手な想いは捨てようと思うけれど…脳裏にどうしても看取った忘れる事の出来ない胸が痛くなる光景を思い出してしまう。二度とあのような絶望を悲しみを味わいたくないっていう弱い部分は捨てれそうにないわね。

月明りに誘われて窓を開けて外を見る、今日も月は綺麗…見ようとしても絶対に見れない月の裏側にいる愛する人にどうすればいいのか相談したい。

…私はどう動けばいいのか?どうすれば、息子さんの望む未来へと導くことが出来るのか、そんな事を考えながら窓を閉め、机の前にある椅子に座る…
机の上には右大臣としての仕事が山盛り…所狭しと置かれている、こんな状況で、各部署に根回しとか交渉とか、そういった活動を、先を考えずに迂闊に動くわけにはいかない。下手に手を出して右大臣としての仕事が疎かになってしまうと、期日に間に合わなくなってしまい、より一層迂闊に手を出した自分に対して馬鹿か!っと罵ってしまうことになる、つまり、動かないといけない時に身動きが取れなくなってしまうっという最悪の事態になりかねないのよね。

長い時間考えて出した結論は…結局のところ出たとこ勝負ってところになりそうね。
彼が、この街に着いてからその場その場で考えて動く!これだとちょっと頭が悪い人みたいね、えっと、そうね…臨機応変よ!

臨機応変に動ける為にも、目の前にある私しか出来ない仕事を全て終わらせて、その先に待っているであろう仕事も予測して前倒しでどんどん、バリバリと仕事をこなす!
火のついた私をなめんじゃないわよ?体力だけは昔っから自信があるんだから!!!
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