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とある人物達が歩んできた道 ~ 金襴紫蘇 ~ ②

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山盛りに積まれている仕事に手を付けようとしたときに、手が止まる?

そういえば、何か忘れているような気がするけれど、何かあったかしら?…
少しの間、書類へと伸ばされた手を止めて考えるが、頭に湧いて出てくるのは仕事の優先順位ばかり…ってことは、考えなくてもいいってこと?
っふ、期日が迫っているから焦って逃避行動をしてるだけね!そんなのに気を取られてないで仕事を進める!!

徹夜で仕事に取組み、翌朝に早朝ジョギングしている先輩を捕まえてお願いする。
暫くの間、仕事に追われるので医療班を取りまとめてもらう様にお願いすると何時もの様に「右大臣としての仕事が山ほどあるんじゃ仕方がねぇよ、こっちは任せな、後、適度に寝ろよ?クマが出来てるぞ?」心配されながらも承諾してくれる、先輩には迷惑ばっかりかけて申し訳ないと感じる、ぶっちゃけると前倒しで仕事をしなければ、医療班として現場に出る余裕あるんですよね…
他にも協力してもらわないと困る人に挨拶に行くとしましょう、早朝の今頃は仕込みをしているであろう人物に頭を下げに行く。
その相手とは、食堂のおば…お姉さん!食事を取りに食堂まで足を運ぶ時間がもったいないのよ、こういう時が定期的にあるので頭を下げに行くと「忙しいのなら仕方がないい」っと、承諾してくれる。
届けてもらうのにお姉さんの手を煩わせるわけにはいかないので、食堂に来た誰かに食事を届けてもらう様に手配して…準備は万端!仕事が終わるまで部屋から出ないつもりで!籠り続ける!!

彼がこの街に来るまでに終わらせる!!

朝起きて、シャワーを浴びて、軽くジョギングして、食事をとってからシャワーを浴びて仕事をする。
仕事で必要な書類を取りに行く為に各方面に走っては、自室に戻って書類とにらめっこ、集中して仕事をしていると、ふと気がつくと夜中…
部屋の前には食事が置かれているので、それをささっと食べてお皿は部屋の前に置いておく。

食事を終えた後は魔力を練る訓練を行って、筋力トレーニングをしてから寝る

これの繰り返し…本当に繰り返しだった、皆の協力もあり
「っふ、流石、私ね」
現状舞い込んでいる全ての仕事を終わらせた…後は、関係各所に送った書類の結果&報告待ち!報告が舞い込んでくるまで、私は自由よ!!

自由となった身で直ぐに行動を起こす!
事前に取り寄せておいてもらった焼き菓子やコーヒー豆を両手いっぱいに持って迷惑をかけてしまった関係各所に挨拶に行く。
溜まり溜まった仕事が人段落が付いたという報告と、ここ最近何か変わったことや、困ったことが無いかの聞き込みもしていく

全部署を回って話も聞き終えて、困ったことや、改善して欲しい内容をまとめた書類を作成して通りすがった忙しそうに駆け回っているメイド服の小娘に書類を渡して
完璧に仕事をやり終えたってわけよ!!

後は、少しでも綺麗なお姉さんという雰囲気を保つためにも美しさに磨きをかけていく!当然、一朝一夕で美なんて得られるわけじゃないわよ!
朝にジョギングしていたのもこれの為!たるんだお腹もちょっとはましになり!たるんだヒップも筋トレである程度、見栄えよくしたわよ!肌艶も良し!髪艶も良し!肉体美もそれなりに良し!

っふっふっふ、医療班として、いいえ、それ以上に頼もしく感じるお姉さん&団長像を新兵共に見せつけてやろうじゃないの!
あ”?誰がお婆さんだって?まだ大丈夫よ!!まだ…30代だもん…

そう、これこそが、私の作戦!自由に動ける時間を作って臨機応変に動いて、騎士様の息子さんと親密になる時間も作ってしまおう作戦よ!!

万全の状態で、出迎えれる!これが、今できる私の最大限の努力よ!新しい場所に来て慣れない大地で困惑する騎士様の息子を傍で支え導いてあげるお姉さんポジションでどんな悩みでも打ち明けてくれるような頼られる存在に成ってやらぁ!!


やる気も体力も完全に万全な状態で迎え入れる準備も整い待ちに待った日がくる…


今回の新兵達は数が多く、何回かに分けて到着する予定となっており、当直予定となっているのが、王家の血筋と騎士様の息子様を含めた10名ほど
昔ながらの馬車に揺られて、馬が入れる限界まで連れてきてもらい、そこからは歩いて奥へと進んでもらって、私達の街まで歩いて来てもらう手筈になっている。
なお、街の案内&先導役は比較的若手だけど、ちょっと内気で問題ありっと判断されこういった団体行動に慣れてもらいたいということで、研究塔の長候補である、奥様の娘さんが担当してくれている。

新兵達が到着するまでの間、今まで何度も何度も新兵達を迎えてきたであろう幹部達も心なしかソワソワと、落ち着きがない。

私達はというと、例も漏れずって感じね、正直、ソワソワと落ち着きがない。
私達も今か今かと到着を待ちながら、広場のベンチに座って待っている
「ねぇ?」
タンブラーにいれた紅茶を飲みながら空を眺めていたら太ももを叩かれる
「なによ?」
太ももを叩いた人物に返事を返すと
「仕事はいいの?」
っふ、その問い、余裕を持って返させてもらおうかしら?
「私を甘く見るんじゃないわよ?全力で終わらしたわよ、そういう姫様はいいのかしら?こんなところで呆けていても?」
不満げな顔をしながら
「見通しが甘かったか…謀殺しようと思ってたんだけどなぁ…」
っふ、何時かの時のように先輩を抱き込めなかったのが今回の敗因ではなくて?
「私ね、こう見えても、優秀なんですよ?ご存じありませんでしたか?姫様?」
ポンポンっと頭を撫でてやると、悔しそうな顔をしている…
この段階で姫ちゃんの策から外れているってことね、あの子の予想だと私はまだまだ仕事に追われていると判断したのでしょうね!
…まさか、ここまで完璧に見た目も雰囲気も仕上げてくるとは思ってなかったんじゃない?っふっふっふ、こういうときの私の根性と瞬発力を甘く見たわね。
悔しそうな顔をしている姫ちゃんに
「それで、どうなんですか?姫様は、大変お忙しいとお聞きしておりますが?何せ、私が調査した改善点に追われているとお聞きしておりますけれど?」
悔し紛れに用意した策が綺麗に刺さっている姫ちゃんに止めの一言を言うと
「っぐ、まさか、この土壇場に、各部署の改善点をまとめた書類を寄こしてくるなんて、やってくれんじゃんって思ったらやっぱり、そういう意図ってこと?」
恨めしそうな顔で此方を見てくる、急遽湧いた、仕事のせいで碌に自分磨きが出来ていなかったみたいで髪の毛に艶はない肌も荒れている…っふ、若い頃のように手入れをさぼってもいいなんて幻想よ?貴女も年齢を重ねて行っているのよ?

ちぇーっといいつつ、唇を尖らせながら髪の毛をいじっている…自分自身でも身支度がおろそかになっているのことに気が付いているのね。

っま、ちょっと反省してくれたらそれでいいわね
事前に用意してある鞄から櫛を取り出し
「ほら、新兵の前で演説するのでしょ?髪の毛整えなさい」
此方に背を向けるように指示を出すと、何時もの様に背を向けてくれるのでそのまま髪の毛を綺麗にしていく
「時間ないから、ほら、これで肌に潤いを出しなさい」
肌の手入れをするための乳液などが入ったポシェットを渡す

髪の毛の手入れが終わったので、正面を向かせて、薄く化粧をしてあげる。
まだまだ、若いだけあって少しの手入れで見違えるように美しくなる
「うん!いいじゃない、綺麗よ」
小さな手鏡を渡して化粧の具合などを確認してもらう
「うん!ありがとう!やっぱりお母さんが一番こういうの上手だよね!」
当然でしょ?飽くなき美の探求者として、本を出し続けているほどよ?
「さてっと、お互い準備も出来たことだし、そろそろね?持ち場に行きましょう」
ベンチから立ち上がり、用意しておいたお手入れセットを持って、控室に向かう。
新兵達が広場に集まってから、私達幹部も一人ずつ前に出て自己紹介などをするからである。

用事があって出席が出来ない幹部も普段ならいるのだけれど、今回は勢揃いしている…みんな気になっているのでしょうね。

新兵達が待っている広場に緊張しながらも足を運び、定位置について視線を前に向けた瞬間に

ときがとまったようなきがした かれ いがい なにも じょうほうがはいってこないほどに 美しかった

騎士様とは違った美の表現がそこに居た…
美しさで言えば誰よりも美しく、誰よりも…そう、女性ですら太刀打ちできない美の頂点かと勘違いを起こしてしまいそうな程に美しい人物が立っていた…

心臓が止まったように感じた瞬間、挨拶をするように声を掛けられ、止まった時が動き出す、視界も何時もと同じように周りが見える、一瞬だけ、彼だしか、世界にないのだという錯覚から覚めることが出来た…

その後は何を話したのか覚えていない…色んな人が挨拶をしているなか、私はずっと美という言葉は彼の為にあるのだと、美という文字は彼の為にあるのだと美の化身を眺め続ける事しか出来なかった。

全員の挨拶がいつの間に終わり、新兵達が各々用意された寮へと向かって歩いていくのを見送った…

呆けながらも何時ものベンチに座って、何も考えることなく永遠と止まってしまったかのうような心臓がもう一度動き出すのを待つように空を見ていると
誰かが隣のベンチに座り、同じように空を眺め続ける…

「綺麗だった」「うん、驚いた」

誰が言ったかわからないが、自然とあの時感じた感想が零れ落ちる、同じ感想を抱いている隣に座っている人に視線を向けるとお互い感じた感想が…同じ答えが飛び出てくる

「美しすぎない!?」「始祖様にそっくりで驚いた!!」

っと、思っていたら、内容が違っていた…

始祖様にそっくり?…そう、なの?
「びっくりした、ほんっと、びっくりした…演説するためにさ、所定の位置まで歩いてさ!いざ、皆の前に前に立って、ゆっくりと視線を前に向けた瞬間にさ!目の前に始祖様がいるんだもん、心臓とまるかとおもった!決めてきたセリフ飛んじゃったよ!!…すぐ、思い出して事なきを得たけれどさー、うわ、もう、ほんっとびっくりしたー!!いるはずのない人物が目の前にいるんだもん!!うわ、心臓がまだバクバクいってる、あーもう、頬があついー、なにこれ~、ねぇ?これなに?はーもう、あつー」
珍しく興奮している姫ちゃんの頬はピンクに染まっている…ピーンときてしまった、この直感はあれよね?あれよね!?あれですよね!?

誰が言ったか、恋の伝道師の直感が囁いているわよ!?これ、初恋じゃない!?

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