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とある人物達が歩んできた道 ~ 余談 ~ ②

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「どしたの?眉間に皺なんてつくって、うんうん、って、唸ってるけど?仕事の内容で何か問題でもある?」
その一声で完全に自分が目の前にいる人の話を聞いていなかったことを思い出す。

あら、いけないわね、つい思考が脱線してしまって…
いけないわね、照れ隠しとはいえ、仕事の内容を聞いていなかったのは良くないわね…
まぁ、資料に書いてる内容を掘り下げるように話してるだけだったからその点に関しては、問題ないわね…

怒っているのか視線を向けるが怒りの感情は表に出いない、表情から伝わってくるのは、質問があるのならして欲しそうにこちらを見ている

不思議そうにこちらを見ている姫ちゃんに、先ほど突如出てきてしまったデリケートな内容を聞いてもいいモノかどうか、悩みどころね。
「何か質問があるならちゃちゃっと言ってよ?」今の膠着した状況は姫ちゃんからすれば時間がもったいないっと感じているのでしょうね。
まさか、姫ちゃんも仕事の話をしているのに全く違う事を考えているなんて思っても居ないでしょうね。

私が何を考えているのか知らないからこそ言える言葉よー?お言葉に甘えちゃおうかしらっと
「息子さんの事だけど、相部屋ってのは、良くないんじゃないかしら?だって、彼って言うか、その」
どう伝えたらいいのか言葉を選んでいると、姫ちゃんには伝えたい内容がすぐに伝わったみたいで、少しだけ目を見開いている、質問の内容が仕事の内容では無い事に驚いているみたいね。
「ぁ、そっか、そうだよね…男性の体は見慣れていると思うけれども、他者の体は違うよね。女性の魂だから、精神衛生上良くないっか、そ、だね。うん、なるべく早くに全員が個室に移動できるように手配するね」
此方の欲しい答えに直ぐに辿り着き、仕事をしてるときの真面目な顔から柔らかい表情に切り替わる。

相変わらず頭の回転は速いわね、そして、やっぱり、息子さんじゃなくて娘さんだったってことね…
二つの魂があったとしても、表に出ているのが女性であるのであれば、配慮してあげないといけないわよね。

男性の魂と女性の魂が共存しているっていうのはどういう状況なのか、徹底的に質問してみたいという知的好奇心が湧き上がってくるけれども、それは配慮に欠けすぎる行動なので、しないように心がけましょう。

「流石!お母さんはしっかりと見えてる!」
質問の内容が自分が考えていない角度からの質問だったみたいで嬉しそうにしているわね。
嬉しそうにしているけれど、貴女が恋した人の話よ?ちょっと無関心過ぎないかしら?そういう性分なのかしら?
「やっぱり、お母さんは導き手として最良だねー!お母さんなら息子さんをしっかりと導いて育ててくれるから安心だね」
うんうんっと、頷いているけれど…他人事を装っているの?それとも、本当に関心が薄いのかしら?

「心配じゃないの?貴女の恋した人でしょ?」

声に出してからしまったと、つい無意識に、心の声が漏れてしまった、やってしまったと思いながら姫ちゃんを見ると
「ぇ?…ぁ!!そういうこと?ちがうちがう!未来の私が恋した人は別だよ?」
大きな目が一瞬だけさらに大きく開いて驚いたようにしているが、直ぐに冷静な表情に切り替わって、私の考えを否定してくる。

…ん?ぇ、あれ?そうなの?てっきり、あの流れ的にそうなのかと思っていたけれど違うのかしら?

自分の直感が否定されたことに少々戸惑い混乱していると
「そりゃー、嫌いか好きかって言われたら、嫌いじゃないよ?なんかね、気が合う友達になれそうな、気は、してる…」
珍しく包み隠さずに本音を伝えてくれようとしている。長年共に過ごしてきたからこそ、これが本音なのだと伝わってくる。
こういう状況でも、仮面をかぶっているのであれば、感情を表に出したりしない。
相手の事を素直に好きだという感情を越えに出すのが、気恥ずかしいのか、少々頬を染めている。

うん、この感じは本音だと思う。

話の流れを見守っていると、珍しく自分語りもしてくれるじゃない。
「その、今回、その、口紅しているのも、その、新しく王都で売る予定の口紅のサンプルが届いたから、その、どんな感じなのか医療班の皆に意見を貰っていた時に、たまたま、彼も、ううん、彼女も居たから、彼女もその、口紅とか凄く興味があるみたいでチラチラと見てたから、つけてみていいよって言ったんだけど、頑なにしなくってさー」
珍しく、視線を泳がせたり、自分の指をつまんだり、唇を尖らせたりと落ち着きが無くたどたどしく説明をしてくれる、この仕草で伝わってくる。
彼女の人生の中で、友達と遊んできたという経験が無さ過ぎて、友達と過ごした時間をどう伝えたらいいのか、言葉を探しているって感じね。

何も言わないで、愛する娘の成長を見守るように、うんうんっと頷きながら相槌を打ち続ける。
姫ちゃんが感じた初めての友達と遊んだという出来事を慈しむように耳を傾ける

良いわね、こういうのって、ごく普通の家庭であれば、こんな感じで愛する娘の交友関係とか、今日はどんな風に遊んだのか話を聞くことがあるのでしょうね。

そんな事を考えていると、脳裏にふっと小さな男の子と、そこそこ大きな男の子が丸いテーブルを囲みながら此方を真面目な表情で見つめている、私が手に取っている本の内容を楽しそうに聞いている…そう、貴女はそういう経験があるのね、良いわね、私には無かった経験よ…
そっか、元来、子供が好きだったのね…そうなのね…

「どうしたの?涙浮かべて?」
もう一人私が残していった経験を噛み締めていたら、私の異変に気が付いてしまったみたいで、話の内容が急に変わってこちらの様子を伺ってくるじゃない。
言われて初めて気が付いたので、そっとハンカチを取り出して涙を拭い
「気にしないで、貴女の叔母がね、貴女の話を聞いて反応しただけよ、大事な姪が楽しそうにしているのが嬉しかったのでしょう」
優しく微笑むと
「そっか、うん、ならいっか、悲しくないのなら、いいか」
少しはにかむ様な表情をしてから、話の腰を折ってしまったみたいで、何も話さなくなってしまった…

気まずくは無いけれども、何とも言えない無言の時間が過ぎていく。これに近しい経験なら私にもある。

思い出すわね、幼き頃にお母様と話すときは、殆ど、こんな感じだったわね。
何を話したらいいのかわからなくて、お母様から話を切り出すのを視線をさまよわせながら待っていたわね…

今の状況が私が体験してきた状況と一緒だというのであれば、私も、お母様が私にしたように、そうするべきなのかしらね?
今の雰囲気なら普段なら滅多に踏み込まない内容を尋ねてもよさそうな気がする、踏み込んでも良いような気がするのよ

声を出そうとすると
「あのね…お母さんだから話すよ?」
姫ちゃんの方から覚悟を決めたと伝わってくるほどに真剣な声が伝わってくる。
俯いて暗い表情をしている辺り、未来で起きた悲しい出来事なのでしょうね。

言葉の重みを感じ取りながら、未来で起きた悲劇を受け止める覚悟をする

「私がね、好きになった人は、その、うん、見た目とかじゃなくて心に惹かれた人なんだよね…っでね、ちゃんと男の人だよ?…誰かってのは、お母さんの知らない人だから説明しずらいかなー、でもね、安心して欲しいのは彼女じゃないからね?死んだ理由は…色々とありすぎて教えるのは辛いかな…」
俯きながらも、流れるように語ってくれた言葉に胸が痛くなる。

その言葉の内容で察したわ…
きっと、何度も何度も恋した人と窮地を味わって、何度も死んでしまったのでしょうね。
っということは、恋した人はこの街に関係する人の可能性が高くなってきたわね、そして、私が知らない人ってなると、今は王都にいるとか?そういう感じかしら?
もしくは、有事の際にこの街に応援で駆けつけてきた騎士団所属の人とか、かしら?

慰めるわけではないけれど、何も言わないのは…違うわね、素直に感じたことを伝えましょう。気になることもあるし、話の流れを変えてあげましょう、辛い出来事を辛いままにするのは良くないのよ。
「心に惹かれるって言うのは良いわね、ってことは、見た目はそこまで特段、美しかったりしないわけ?」
その質問に対して彼女の反応は否定せずに沈黙したまま頬を染めている辺り、見た目も好みってことね、ふっふーん、好みの見た目ってのも良いわねーべた惚れじゃないの?
「私が知らないってことは、王都の人かしら?」
沈黙していたのが答えだと察したのか、次は、直ぐに反応する
「っや!ちが、くないか、王都出身の人だよ?って言うかもうなし!なしなしなし!根掘り葉掘りきかないで!お母さんだと、相手がだれかいきつきそうでヤダ!」
顔を真っ赤にする辺り、これ以上は聞いては行けなさそうね。ついつい、楽しくなってきちゃって初手から踏み込み過ぎたわね。

自分の好きな人を思い出したのか、私に好きな人の事を話すのが恥ずかしいのか、頬を真っ赤に染めている。
「ぁーもう、ほっぺたがあっつーいー、はぁー、そっか、恋ってこんな感じなんだね」
頬をぺたぺたと手の甲とかで冷やしながら、達観したような発言をするわね~、でもまぁ、そうよね、私も初恋はこうだったわね。
「恋って良いモノでしょ?」
私もね、恋を知って人生が変わったもの、恋って良いわよね。

この質問に、目を閉じて、何かを考えてからか、今の感情を噛み締めているのか…
「うん!恋って、凄いね!絶望しかない明日でも、前を向こうとする力が湧いてくる!」
開かれた目は希望に満ち溢れるように輝いている…
目を輝かせて反応するなんてね、貴女がそんな反応するなんて術式以外であるなんて、人生何が起きるかわからないわね
「未来のない私の胸を、こんなにも、こんなにも鼓動が速くなるんだもん、それだけじゃない、全身が温かくなるんだね…」
胸に手を当てて言う言葉が切なくもあり、悲しい内容を帯びている。
不穏な言葉を言うじゃないの!大丈夫よ、貴女は何があっても私が守ってみせるわよ、絶対に私よりも早く死なせないからね?

胸に手を当てて俯きながら、切なそうな声と共に漏れ出た言葉
「みんなも、一緒なのかな?」
その言葉を聞いて、この子が一つ成長したのだと実感が湧いてくる、今までは、左程、他の人に興味を示さなかったこの子が、他の人の物語を気にするようになるなんてね。
「そうね、色んな人に話を聞いてみても良いかもしれないわね、どんな恋をしたのか、どんな恋愛願望があるのか、人の数だけ物語があるのよ?」
深く頷いた後
「うん!そうだね、色んな人に聞いてみる!」
元気よく顔を上げたその顔には頬がピンクに染まり、今まで以上に血色の良い生命が満ち溢れるような輝く笑顔だった


この笑顔を見て私が感じたのは、この笑顔を守り切って、この子の恋路が平穏無事に結ばれることを願うばかりだった。
勿論、願いだけじゃなく、成就するように頑張りましょう。

…この年齢になっても人生の目標って生まれるものなのね…


それからは、真面目に!変に茶化したりしないで、この街の幹部として彼に対してどういう風に接していくのかを話し合っていった


彼女を特別扱いしない様に見せる為に他の人達にも配慮しつつ方針を固めていくのと同時に、お互いの利害が一致している実験の予定も組んでいく。
一度と言わず、何かしらの理由を添えて彼女の体を徹底的に調べ上げるべきなのよね。彼女の体に隠された秘密と敵が用意したであろう何かしらの罠が仕込まれていないか探っていかないと、ね…

体に施されたであろう、敵の技術としてチャームという人を魅了する不可思議な力に対してどうするのか、何か考えがあるのか確認すると
どうやら、全員に対策するのは予算的には問題は無いのだけれど、何を施したのか説明する義務が発生する。
その説明が彼女にとって望んでいないストレスに晒されてしまうので、特に大きな問題が発生しない限り公表するつもりも無く、本人にも伝えるつもりはない。
現状、彼女のチャームに反応しない人も複数いるので、特定の条件が無ければ彼に敵対心を持ちにくく、心惹かれる程度で済むのだろうから…

なら、私にはどうしてあそこ迄、世界が…真っ白に染まって…彼以外見えない程の衝撃があったのだろうか?

私が感じたことを伝えると、私の中にある想い人の影響かもしれないっと自信無さげに推測してくれた。
納得できる推測を聞くと何も引っかかることなく、その推測が正しいと感じる。

その説が一番可能性が高そうよね、だって、彼女の見た目って、筋肉を増やせばあの頃の、騎士様に雰囲気が凄く似ている
昔の、色褪せない思い出が、ときめきを思い出しただけなのかもしれないわね。

甘酸っぱい会話を挟みながら、二人だけの幹部会が始まり、眠れない夜が始まった…

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