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Dead End ユ キ・サクラ (21)

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なら、この手はどうだろうか?

思い浮かんだ妙案が実現できるのか、西の街出身の人が居ないか探してみるとしよう。
街にいる人達の名簿リストが保管されている執務しに取りに行こう。

部屋のドアを開けて周囲を見渡し耳を澄ませる、誰もいない。そりゃそうだよね。今の時間だったら、各部署が仕事をするために動き続けている時間なので誰かがいるわけがない。何を警戒しているのか、っふっと鼻で笑ってから執務室に向かっていく、当然、誰ともすれ違わない、すれ違わないのだが…

窓の外から、聞き覚えのある声がするので、何を思ったのか、そっと、窓から少しだけ顔を出し、声がした人物を覗き見る。
聞き覚えのある声は予想通り、オリンとユキさんの声で、何かを運んでいる様子だった。

その様子を眺めてしまう。理由は、昨夜の一件…柳の言葉に影響されているのだろう…
二人は、同室である間柄というわけなのか、同じ騎士の部所属だからなのか、二人の間柄は極めて良好、仲良さそうに会話をしながら何かを運んでいる…

二人の様子を眺めているはずなのに、視線の焦点は自然とユキさんから外されオリンへと向けてしまう。
それはなぜなのか?軽く自問自答するが、考えるまでも無い…昨夜の真実を知ってしまったせいだろう、彼の言葉によって、ある感情が私の中に渦巻き思考を汚染していく…


私は、私は…ユキさんの姿を直視できない…


柳の言葉が真であれば、ユキさんの事を畏怖の対象でなるのは至極当然。
理性も感情も、本能も、全ての直感が、彼が危険なのだと感じてしまっている気がする。

今は…今の、私は、ユキさんに会ってはいけない…気がする。会うと無意識に彼を警戒したり、小さな所作ですらびくりと怯えてしまったりするかもしれない。
そうなってしまってはユキさんに何か感づかれてしまう…ユキさんは、鈍感そうに見えて、そうじゃない、自身を傷つけようとする者には敏感に反応するという事が、体調を崩した際に判明した。
少しからかってみただけで、機嫌を損ねようとする辺り、そういった人付き合いをしてこなかったのだと考えられる。
その部分だけ見れば、私も大差ないんだけど、だからといってあの時はユキさんの心の中に踏み込み過ぎてしまったのかもしれないと、今となっては反省している。
お互いが打ち解けていないのにアクセスを踏み過ぎてしまうのは良くないことだとわかっているけれど、年齢の近い他人との接し方に対しての経験が圧倒的に私は少なすぎる。
こうっやって、時折、過去の自分を見返しては反省しているのだが…それとこれとは別で、考えしまう。


ユキさんの魂が敵と繋がっているのだと…


もしかしたら、ユキさんが感じたこと知ったことも敵に筒抜けてしまっている可能性もあるって考えると、ユキさんには迂闊なことは言えない敵に知られてはいけない情報を与えれるわけにはいかない、彼には、絶対に私の手札を知られない様に警戒しよう…

ふと、どうして、彼にあのような特殊な能力が授けられているのか、その理由の一端を知ってしまったような気がした。
…もしかしたら、魅了の魔眼は、私達の警戒心を解き、私達の手札を知るために用意されたのではなかろうかと推察してしまう。

…考えれば考えるほど、湧き上がる恐怖心が自然と私の心臓を締め付け、足を震わせ、奥歯がカチカチと音を鳴らす…

ユキさんが怖い、心の底から怖い、数多くの死を経験しているからこそ言える、私単体では敵には絶対に勝てない、縊り殺される未来しか思い浮かべることが出来ない。
それだけじゃない、敵は何年先まで手を進めているのだろうか?私は一手どころではなく、もっともっと、後れを取っているのではないかという部分でも恐怖心が湧き上がる、敵の底の知れなさに…

敵もまた、厄介な肉体に手駒の魂を埋め込んだものだと敵なのに褒めてしまいたくなる。
だって、この手法は、このやり方は…これ以上ない程に私達に刺さってしまっているから…

私達からすれば絶対に手が出せない人物なのだから…危害を加えるっという事は派閥が生まれてしまいかねない人物、下手に追放すれば彼の血筋を知っている人達がその状況をしれば、彼を担ぎ上げ王家と私達を完全対立にまで、もって行こうと思えば持っていけてしまう…

人類が一丸となって未来に向かって準備を、いずれ来る、人類と敵との最終決戦…それまでに、それまでに人類の総力を搔き集め育成しないといけないのに…
争っている様な余裕も暇も、何もかもないっていうのに…たった一人、たった一人に隠者を仕込むだけでここまでクリティカルに的確に私の足を止めることが出来るなんて…

ギリっと奥歯を噛み締め、浅慮な自分を何度も叱る様に震える太ももを叩いてしまう。

人生で感じたことのない色んな感情が沸き上がり渦巻き、全てを捨てて逃げ出したくなるほどの静かに追い詰められているとは誰も知ることはなく…
そんな状況に陥りながら私は、オリンとユキさんが見えなくなる位置まで、つい、じっと見つめてしまっていた…

見えなくなってから暫くして、心が落ち着きを取り戻したのか冷静に今の状況を分析する
この見つめている姿を誰かに目撃されなかったのは僥倖と考えよう、私のような女性がうら若き男性達を見つめているってだけで、要らぬ噂が流れてしまう。
王族の隠し子であるオリンにも迷惑をかけるし、ユキさんにも…勘違いされてしまいかねない。

今は、出来る限りユキさんと接触しない様にしよう…私の心が平穏で在り平静を保てれるっという、自信が心を満たすまでは…




長い時間、執務室にて独り黙々と調べ物を続け、漸く執務室で管理している情報全てに目を通し終わり、目頭を押さえながら自室に帰ってくる…
第一に優先的に調べたのが、西の方角からの出身者がいるかどうかを調べた、結果的に答えを出すとなると、いないことはなかった。

だけれど、現状で私の裁量で勝手に動かすことが難しい騎士の部に所属している人達だった。

騎士の部には…彼が居るから、今は近寄りたくないし、騎士の部は常に人手不足だから、明確な理由が無いと遠出させるような指令は出せない。
唯一出来そうなってなると、休暇を与える名目で街に一時的に帰ってもらい、ついでに、歴史書などがあれば持ってきて欲しいってのが唯一出来そうではあるが、今の現状を考えると、理由が弱すぎて頼むことも出来ない…

やっぱり、何とかして私が直に赴くしか無さそうかな~

最近のスケジュールが瞬間的に脳裏を駆け巡り、答えを出す『無理だよ?』っと
無理じゃない!無茶を通す!メイドちゃんが!!私の無茶ぶりを通してくれる程に彼女はしっかりと外交を繋いでくれている!…はず!

無理難題を押し付けた直後の、笑顔で引きつるメイドちゃんを思い浮かべるのと同時に、何かしらお礼品を用意しないといけないなっと考える。彼女のご機嫌は取っておくに限るからね、裏切るとかは…無いと思いたいけれど、腹黒だからな~メイドちゃんって。
メイドちゃんにまた、無理を言ってしまうけれど、こればっかりはしょうがない、しょうがない!

しょうがないというどうしようもない理由で押し通そうとする自分の愚かな采配に少々、冷や汗が背中を伝って落ちていくのを感じる。
この冷汗は、メイドちゃんから伝わってくる激情の感情を想像してだろうか?それとも、見て見ぬふりをし続けている、時折聞こえてくる空耳だと思い続けている地の底から湧き上がるような声からだろうか?…今の私にはわからない。

ふぅ、っと心の吐息を漏らしてから頬を叩き気負いを入れなおす、ここ最近、どうしてかわからないが弱気になってきている…
気持でもわかっている、思考でも理解している…今の流れは良くないと、何かに追われている様なこの感覚を、この状況を打破するために少しでも情報を集めないといけない、何が正しいのか、何を間違えているのか、何を恐れているのか…真実を得る為に動こう。

そうじゃないと、私は…わたし が 拭いきれない この不安感 に 押しつぶされそうな気がする。
締め付けられる様な、追われ続けるような、状況から逃げるような気持ちによって思い浮かんでしまった光景に背筋が凍り付きそうになる。
その感情に惑わされない様に、想像してしまった地獄にならないように、心の錆を振るい落とす為に首を横に振って、一度、ううん、何度でも私は絶望を否定する

…絶望、不安から産まれてしまったその思想は魔女狩りだ
…疑わしきものは裁け…ユキは…獣共が用意した先兵だ、殺せ…

っという考えはまだ、決断するのには…まだ早い、っていうか、そんなの世論が許さない。逆に私が断罪されてしまう。だってユキは、ユキはあの戦士長の息子で、清廉潔白、疑わしい動きなんて何もない、真面目だし、優しいし、いう事はしっかりと聞く。
戦士としての評価も良く、人としての評価も良いって報告しかない…こんな人物を魔女だと断定して処刑台に連れて行くなんて、無理だよ、そんな悪行…してしまったら最後。

最悪の一手を打ってしまったら、待ち構えているのは私を裁くために王都が…王族が動くだろう

幾重にも張り巡らされた罠の数々、少しでも道を誤れば崩壊するであろうっと賢い頭が答えを導き出す。
崩壊する光景を想像するだけで、震える指先を握りしめ…ると、自然とベッドの方に視線を向けてしまう。
丁寧に看病してくれた彼を疑うのかと、あんな、純真無垢で害なんて何もない優しい人を、断罪するのかと、年下で何も知らない無垢な人物を絶望の底に押しやるのかと…何かが私に語り掛けてくる。

この感情は、魅了の魔眼によってもたらされたのか?そんなものは関係なく、彼と過ごした時間がそう感じさせるのか…

今の私は正常で正確な判断は出来そうもない…いまのわたしは ひとりぼっちだ



夜になると、唐突な孤独感に包まれ、その衝動に負けてしまう…涙によって枕を濡らす日々が続いた…


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