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Dead End ユ キ・サクラ (22)

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過密なスケジュールをこなし続け、何とか時間を作ることができた、目的を達し、私がやってくるのをまっていた車に乗り込む。
周りの視線から解放されると、つい、疲労感が伝わってしまいそうになるほどの吐息を漏らしてしまう。
全てを忘れて眠りにつきたくなるような勢いで背もたれに体重を預けると、メイドちゃんが運転する車が私達の街に向かって走り出す…

そう…メイドちゃんに頼んでスケジュールを調整してもらい、先方にも迷惑をかけて時間を捻り出し、強行作戦の如く電光石火な勢いで調べ物を終わらせた。
その帰り道ってなるんだけど、疲れた…西の街に出向く時間を作った、作ったんだよね?

心も体も疲弊しきっているせいか、最近、時間の感覚と、今自分が何をしていたのか、判断がつかない時がある。
良くない兆候だと思う、お母さんに相談したら確実に休めと強引に寝かされるだろう…久方ぶりに甘やかしてほしいけれど、今は、今はまだダメ、やることが山積み、全て、全て終わってから甘えに行こう…

そんな事を考えながら、こんがらがっている脳を、思考を、記憶を整理していく。

えっと、まず、スケジュールを調整するために説得しないといけなかったから、メイドちゃんを納得せる為に、作った理由として、西の街を開発する方針を考える&住民の考えを把握するために現地に赴きたいという理由をねじ込んでみたんだよね、うんうん、そうそう。
っで、西の地方をどの様に発展していくのかっという視察と現地の意見を聞きこむ調査っという名目で納得してくれたんだよね。
メイドちゃんもその点は理解しているんだよね、現地の人達を蔑にした政策は軋轢を生むって、だから、土地を開発する上に当たって現地の人々の意見は必須って理解してくれているから話は早かったかな。
「それに、今の街の状況で人員を避けそうも無かったし、メイドちゃん独りで聞き込みなんて仕事したくないでしょ?」っと声を掛けると、私自身が出向く為に強引にスケジュールを調整してくれた。

そうそう、何とか全員が納得する理由と目的があれば、私が直接出向くことに関してはとっても自然!!
ただ、スケジュール管理しているメイドちゃんの心に大きなストレスを与えて表情が曇っただけ!
メイドちゃんの胃に大ダメージ!!胃痛を抑える胃薬は取り合えず処方してもらったよ?
メイドちゃんの胃を犠牲にしたおかげで、全力で行動することが出来た!っで、手元にある資料が聞き込み調査の集大成!!

車の中で酔ってしまうリスクを考えて、資料はペラペラっと捲るだけで真剣に読み込まないようにする。

うん、結果だけで見れば、聞き込み調査は完璧と言える内容だった。非常に有意義な時間でした。来てよかったって、思う…

ペラペラっと捲った資料をカバンの中に入れて、一連の流れを思い出す。
西の地方にある街の人々に調査と言う名の会話をして、普段の仕事内容とか、産業は何かとか、どういう仕事を続けていきたいのか色んな話を聞いた。
その後に、領主と話をして、領主としては今後、どの様に発展させていくのか、領主として何か考えていたりするのか、本当に色んな事を話し合った。
そんなわけで、数多くの情報を手に入れた、当然、目的の情報も手に入れた…どの情報が必要なのか、不必要なのか頭の中で整理していく。

目的の情報…過去の話…
西の街は、今でこそ、点々と街があるが、大昔にこの辺りに街は無かった、らしい。
これを教えてくれたのが街の人達で、古くから住んでいる人達だった…
根付く人々が言うという事は真実なのだろう、その言葉を聞いて、柳が嘘をついていたのだと、やっぱり、ユキさんは獣の先兵じゃない!という、安堵感が沸き上がった

のだが、直ぐに否定されてしまった…

領主から得た情報によってね…
領主が言うには、確かに、この周辺にある街は、王様から領主の仕事として土地を任されて開墾したのがきっかけで、この周囲には確かに前々から、開墾する前に誰かが住んでいたような痕跡は皆無だった。

だが、ここよりもより西南に行くと、話が変わる。
昔は、西南の森の中に村があったんじゃなかろうかという痕跡がある、という情報を得てしまった…

領主が知っているっていう情報の方が信憑性は高くなる、村の人達からすれば行く必要ない場所に冒険に出るような余裕なんて無い。
日々の仕事に追われて心も体もゆとりがあるわけじゃない、地方の人達は稼ぎが少ないから…だから、大陸全土を豊かにしようと動いている私が来訪したっというのは街の人達かすれば救世主のように感じただろうなぁ…

いけない、つい、村人たちの生活を思い出して思考がそれちゃった…

っで、領主にお願いしたんだよね、開発するうえで土地の状況を把握しておきたいって。
それで、何処に何があるのか領主も知っておきたいってことで、案内を兼ねて、共に現地に赴いたら…確かに、誰かが住んでいたのではなかろうかっていう、痕跡は残っていた。

現地に辿り着きゆっくりと見渡し深呼吸をする…誰かが住んでいたと思われる痕跡がある場所ははっきりいって鬱蒼とした森の中にあった、香りも自然の匂いが濃い、でも、獣の姿は見当たらない…いや、探せば小さな獣はいるだろう、リスとか、ネズミとかは、いるだろうが…でも、気配を感じない。私の仮説は正しいのかもしれない。

舗装されていない、誰も長年踏み込んだ痕跡のない道なき道をゆっくりと歩きながら周囲を探索する。
家らしきものは、あったのではないかと思われるが、これが家なのだろうか?朽ち果ててわからない、屋根も朽ちてしまって無い、石?だろうか?人工的に積み上げられたような形が残されている…
そんな痕跡が複数ある場所の中央に、石に囲まれた何かがあるので、石の中央を覗き込むと深い穴がある。恐らく井戸なのではないかと思われる、試しに小石を投げ入れるとぽちゃんと音がした、恐らく井戸だろう。

井戸らしきものがあったり、近くには石で出来た臼のようなものが落ちてたりしていた、それに、錆びてボロボロになった小さな包丁?ナイフ?片手剣は、形状が違うが落ちている、だけど、他には何も残されていない、もしかしたら、何かがあってこの村から離れないといけなくなったので何も残されていないだけかもしれない、その何かがわかれば、それを柳に話を聞いてみて辻褄が合えば話の信憑性が大きくなるのだが…

信憑性…そう、彼の話しを信じるにたる内容が欲しい。その一つとして、この森にはドングリがなる木が数多くあった…

領主のお付きの人にこのドングリを食べたりするのか確認してみると、飽食の時代…私の影響が広がる前はこの辺りでは非常食の一つとして粉にしたりして保存したりはしていたっか…地方ではよくある話なのかもしれない、なので、この土地、限定の根付いた食っとは限らない。この辺りも調べれたら調べよう、食の歴史に詳しい人に私自身は心当たりが無いけれど、お酒の製造を依頼している人物で在れば知っているかもしれない、手紙を送って確認してみよう。

この森から海に行けないか領主に尋ねてみると海に面している崖ならあると教えてくれる。
道なき道を現地で山菜や薬草などを採取している人に頼んで案内してもらうと、思っていた以上に海は近かった…

近かったけれど、断崖絶壁で漁になんて出向くことはできない。
地元の人に話を聞くと泳ぎが上手な人は飛び込んでモリ突き漁に出たり、岩とか地面にいる貝をとったりはするのだが暖かい時期だけで、海が冷たい時期には絶対に近寄らないので殆どの人からすればこの辺り一帯は縁が無い場所…

柳の話を裏付ける為…エビデンスが何も得られない。

確かなことは、私が知る地理情報と一致しているってことだけ。
領主に、過去にこの辺りで漁は行われていたの念のために確認すると、断崖絶壁から降りる手段が無いので組合を作っての漁は行われていないっか…
地元の人が言っていたように極めて特殊な技能を持った人物だけが漁が出来るってことかぁ~…
飛び込むリスクと得られるモノが釣り合っていなさ過ぎるから、きっと、飛び込んで漁をする特殊な人ってのは、命がけの趣味でやってるって感じじゃないかな?

そんな事を考えながら潮風を浴びていると、領主からそろそろ引き返しませんかっと打診されるので、頷き断崖絶壁の海辺から離れていく。
って、感じだったんだよね。その後はいつも通り、領主が用意したどうでもいいお遊戯会に参加して笑顔で相手をして借りてきた姫様って感じで微笑みを絶やさない様に顔に磔て時間が経過するのを待ち続けていたって感じかな~。

うんうん、思い返すことで少し頭の中が整理で来たような気がする。

ってことはだよね、柳から得た情報は、完全に間違いではない嘘ではないのだろうなって感じる、一応、合致する部分がある、でも、違う部分もある。
私がよくやる手法に近いものを感じる、真実と虚実を織り交ぜて、相手を納得させる手法、彼が巧妙な担い手であると考えるべきだ、王族なんて、誰もが真実を真っすぐに語ろうとしない、だからこそ、全ての言葉を信じてはいけない。
違う部分に関しては時代の流れのせいだと言われたら納得するしかない、だって、恐らくだけれど、柳が居た時代は相当…始祖様が降臨した時代よりも古いのだと推測できるから。

彼の時代は建国時代って考えるのが妥当だと思う、だから、恐らくだけれど、確証はないのだけれど、初代聖女様が活躍された次代だと私は推察し考えた。
そうなるとね、恐らくだけど、500年か600年ほど前の時代って考えるのだが…たかが、数百年でここまで地形が変化する物だろうか?

所説では死の50年でこの大陸の地形は大きく変化したと言われているが…ここもそうなのだろうか?

死の50年以上前に作成された正確で真実しか書かれていない地図を見つけることが出来たら比較できるのだが…当時の技術力では不可能だろう…証明する手段が無い。

無駄足だったと鼻で笑ってきた部分もあれば、来て良かったと嬉しそうに踊っている部分もある、私の心はいつだって複雑怪奇、それを総合的にまとめるのも大変だっての…
総合的な判断として、現地に赴いて迄見聞したってのに何も進んでいないから手放しで喜ぶことはできない…だけれど、柳の話に対して少しは、信憑性が増した気がしないこともない。

っとなると、柳の言葉が全て真であるとなると…ユキという人物が敵の先兵であるっということになる。

だとすれば、彼をどの様に扱うべきなのだろうか?
適当に理由をでっちあげて追放するべきだろうか?

短絡的で浅慮で愚かな考えが直ぐに思い浮かぶが直ぐに捨てる。
いや、それはできない、以前にも考え付いてしまったかもしれない悪手が脳裏をよぎってしまう。

ユキは地道にこの街での評価を高めている、偉大なる戦士長の息子って評価を越え、次代の待ち望んだ戦士長って評価に変わるのも時間の問題。
そんな人物を、下手な理由で追放してごらんよ?街の幹部達から物凄い反感を買ってしまう…

私に反発する派閥を産み出してしまうというきっかけを与えてしまう。
さらには、ユキの体には王家の血が流れているって周知の事実になったが最後、旗揚げが始まる。

不穏な流れになると確実にジラさんが巻き込まれ、流されるままに私達の街の代表へと祭り上げようと周りや王家の連中が動き出すと、恐れている事として、ジラさんの中に眠る叔母様が完全に目を覚ましかねない…
鎮魂していて欲しい荒ぶる魂を再度、目覚め、呼び起こす事なかれ。
叔母様はユキの為だったら全力を出す、あの人が全力を出してしまうと、悪魔信仰が再燃しかねない。確実に悪魔信仰が復活し悪夢の儀式が発動しかねない。

自ら、絶望の道を歩むなんて選択はしない…するわけがない!私だってあの絶望を経験しているのだから!二度とご免だよ!!
今は力を蓄える時期だと私は考えているんだよね、来る日に備えて決戦に向けて、私が動けるうちに決着をつける為に。

突きつけられた現実っというか、壁?選択肢が狭まり、行き詰まる感覚に心の奥底から色んな負の感情が湧き上がっていく。
心がもやもやとする、活路を見いだせない、真綿で絞められていく様な、選択肢が狭まるような、搦め手を何重にも張り巡らされている様な…

いやな感覚がずっと、こびりついてきて、離そうとしても、絶対に離れることが出来なかった、気持ち悪い感覚から永遠に抜け出すことが出来なかった…
小さな耳鳴りがきこえたようなきがした…

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