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Dead End ユ キ・サクラ (38)

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普段通りならね、ただ、最近の敵が防衛ラインに攻め込んでくる頻度を考えると、油断はできない。

この言葉に込められた意味を理解したのか、二人は上官からの指令と感じ、口を挟まず青ざめた表情のまま懸命に己を鼓舞し、まだ私達は闘えるのだと私に伝える為に、気を付けの姿勢を取る

健気で真面目な二人の姿勢にちょっと胸が熱くなる。
「なので!緊急事態と捉え、私が前に出ます!」
その言葉が辺り一面に響き渡ると、周囲で息を潜めていた人達から大きな歓声が沸き上がる。
「新兵!ユキ!」「はい!」
ユキさんを名指しで呼ぶと気持ちのいい返事が直ぐに帰ってくる、周りからの歓声がお腹に響いている最中でも聞こえてくる力強い返事。
カジカさん…私達の街は軍隊じゃないんだから規律が厳しすぎない?大丈夫?普段から返事は強く言う様に躾けてたりして無い?
「このことを、戦士一団、騎士部隊に声を掛けてください。私が前に出ると」
「はい!姫様が前線に出ると伝えてきます!」
復唱も完璧じゃん…あれー?カジカさんとこの義父さんの影響かなー?
あの人も武家だから王都騎士団に深く関わっている人だから、軍隊式の訓練でも取り入れてるのかな?
時間ある時に釘さしといたほうがいいのかなー?規律を重んじるのは良い事ではあるけれどほどほどにね?って…
「駆け足!」「はい!」
タンっと足で地面を叩く様にして音を出す。
その音と同時にユキさんが走っていく、私もついつい、軍隊式の方法で号令みたいな感じで声をかけちゃったけれど、これで良かったのかな?…
不安になりながらもこれが正しかったのかどうか、周囲の気配を探ると、やったー!あの伝説に伝えられ私姫様の指揮だー!っとか、久しぶりだよねー!勉強になるー!っと言った声が聞こえてくるから、問題はなさそうかな?

「さ、さすがです、ね…」
周囲が此度の動きでどんな反応を示しているのか耳を澄まして情報を探っていたらオリンくんが恐る恐る声を掛けてくる
「っま、混乱している相手には強く出るのが定石でしょ?」
ニヒルな笑みを浮かべながらオリンくんに応えると
「そう、です、よね?」
ちょっと混乱気味になっている。
王族らしくない不安げな表情をしないの、まったく、争いごとが苦手だからって理由で逃げてばっかりの人生を生きてきたとしても、王族としての教養はあるでしょ?しっかりしてよね。っていうのは難しいかな、こういう性格だからこそ逃げてきたんだろうね。
「っま、かる~く受け流しちゃって、ベテランさんも私が前に出るって言えば大人しく療養するでしょ」
安心しなって背中を叩くと、不思議そうな顔をしているので何か質問でもあるのかな?
あれ?私が前に出ること自体を不思議に思ってない?
確かにね、王族でもそうだけど、基本的に偉い人は前に出ないもんだもんね、指揮官が戦場のど真ん中にいるなんて撤退するときくらいだしな~。
認識を改めて貰おうかな?
「私だって戦えるよ?こう見えて、人型の討伐だって、幾度となく!何度も!経験しているよ?」
舐めないでもらいたいよね!私が闘えないタイプの人だと思ってる新人って多そうだもんね!私だって立派な戦力なんだから!
一対一だと人型にはどう足掻いても敵わないけれどな!術者が超肉弾戦タイプの敵に勝てるわけがないでしょ!敵の攻撃を避けるだけで精一杯だっての!接近された時点で詰み!
…明日を考えなければ勝てるんだけどなぁ…私も始祖様みたいに溢れる尽きる事のない魔力が欲しいなぁ…
「ぁ、いえ、姫様の武勇伝は王家で…ぅ、んん、失礼、王都の騎士団でも有名ですので、その辺りは心配しておりません」
こら!今、ボロを出しそうになったでしょ?
まったく、オリンくんの背景を知っていて平民としての名前を与えたっていう若い頃から君の事を知っている人物だからといって油断しないの!
周囲に人影があってもおかしくない場所で迂闊な発言をしないの~…普段なら徹底して注意しているオリンくんが失言するってことは、未だに混乱は抜けきっていない感じだね。
ジト目でこらーっと叱りつけるように睨むと
「ぼ、僕は何も言っていません、言っていませんからね?嚙んだだけです、嚙んだだけです」
視線を明後日の方向に逸らしながら誤魔化そうとしてくるじゃん、いいよ、王都って言おうとして王家って嚙んだってことにしてあげる。
「僕が気になったのはベテランさんって呼び名です、度々、戦士の先輩方がその名を仰るのですが、どなたの渾名なのでしょうか?」

…ぁー、ぁー、きこえなーい、せつめいしたくなーい

「姫様も、その名をお出しになられていらっしゃいましたので、ご存じだと思われるのですが?僕の考えが正しければで、良いのですが、ベテランさんとは現戦士の一団を取りまとめ、新人教育を担当していらっしゃるカジカさんの渾名で間違いないでしょうか?」
ベテランの二つの意味が込められていることを思い出してしまい、頬が熱くなってくるのを感じつつも、こくりと頷く
「なるほど!その名のとおりですね!彼の動きは洗練されていて、まさに伝説の一団っと感じざるをえませんでした!彼ほどの腕前は騎士団でもそうはいないと感じていたんです、尊敬に値する師として今後も」
オリンくんが珍しく興奮して語る姿を見ているとちょっとからかいたくなる心が湧き上がってしまい
「でもね、そのベテランって渾名には二つの意味が込められてるんだよね」
つい、心のままに声が出てしまう!!失言だってわかっていても!私の悪い癖だ!もうとまんねぇ!
「ぇ!?何ですか、知りたいです!」
興味津々で知りたそうにしている姿を見て、悪戯心が私の中で満足げに微笑む
「ベテランって意味はね」
東の…色街がある方向へ指を指す
「…あちらに何か?」
意味が分からないのか困惑している…無言で指を指し続けると、何か察したのか、頬を赤く染めてこちらを見てくる
「流石、空気を読み相手の意図を汲むのが上手だね、そういうこと、彼はあの街での常連客ってこと、そーいう意味を込められてベテランって渾名をつけられたのさ」
完全に理解したのか視線を左右に彷徨わせ、一瞬だけ歯を食いしばったと思ったら
「しょ、しょが、しょうがな、ないですよね、お、男です、から…」
顔を真っ赤にして俯いて話す辺り、君もこういう会話が苦手な人ってことだね、うんうん、っと、私も頬に熱を感じながらもオリンくんの背中をぱんぱんっと叩いて
「はい!下らない話はお終い!君もユキさんが向かったように先輩達に必要なものが無いか指示を待つために向かいなさい」
「は!…あの、最後に一つだけ、疑問があるのですが」
直ぐ行ってよ…この流れだと確実にあっちサイドの質問でしょ?そういう話題得意じゃないんだけどなぁ…
「戦乙女っていう部隊が存在する理由はもしかしなくても?」
…辿り着くのはそっちか、なら良し!
「っふ、君は賢いね、ご想像の通りだよ~って言いたいけれど、一応ね、他にもあるんだけど、誰にもいうなよ?」
真剣な眼差しを向けると他にも深いわけがあるのかとごくりと生唾を飲むあたり、オリンくんって意外と好奇心旺盛なのかも?
「寿退社を減らす為だよ」
「…ことぶき?たいしゃ?」
あ、なじみが無さ過ぎる言葉で悩んでる
「わかりやすく言うと、人ってね、本能的な部分もあって、危険な状況を打破すると近くにいる人が好意をお互い寄せ合っている人物だったりするとね…」
「ぁ、あ!ぁ、はい!なるほど!わかりました!不躾な質問をしてしまい申し訳ありません、ありがとうございました!」
ババっと気を付けをして頭を下げたと思ったら全速力で駆け出していく…
その姿を見送りながら自身の状態を振り返ってみる…
頬を真っ赤に染めながらもめしべとおしべの説明をしないといけないのかと若干、気恥ずかしさで足が震えている…
よかった、オリンくんの察する能力、思考能力の高さに救われたような、彼が紳士的でよかったかもね…

っていうか、何で私がこんな説明せんといかんのじゃぁ!!
あーもー!こういう辱めを想定して自らベテランって名乗ってないかって勘ぐっちまうよ!カジカさんよぉ!!

頬を膨らませてぷりぷりしていると
「坊やが怪我したくらいでへそを曲げないの」
ぽんぽんっと頭を撫でるように叩かれる
「そっちじゃない!辱めを受けそうになったから!」
耳まで真っ赤にしているのは怒っているのではなく気恥ずかしさからなのを理解すると
「貴女、ほんっと初心よね~…そういう話題になれたらどう?男が盛んなのは知っているでしょう?」
うりうりと頭を掴んでぐわんぐわん回してくるので、うが!っと小さな声を出しながら腕を払いのける
「知ってるよ!新しい門出は祝ってあげたいけれど!戦闘力が減ることに関しては由々しき問題でしょ!」
「そうよねー…この街で出産して子供を育てれるほどに平和で危険性も無ければ問題ないのでしょうけれどね~」
ご機嫌を取るためか払いのけた手は再度、頭の上に置かれ優しく撫でられる
そんなんで私のご機嫌が取れるとおもうなよー?…悪い気はしないけどさぁ…
「そうそう、ベテランのやつは、全治三日は最低貰いたいけれど、別に構わないでしょ?」
三日くらいならスケジュール的にも私が前線に出ても問題ないかな、っていっても、常にいるわけじゃなくフォローできる範囲での交代制で出るけどね
「構わないよ、カジカさんが居なくても大丈夫、そりゃ、居ないのは痛手だけどさ、特定の危険な奴以外だったら被害なんて出ないよ、私達は強いから」
強気でも意地でもない、誰かひとりが欠けたら存続不可能なんて状況にならない様に後任後続しっかりと教育されている。
ここ最近、襲撃の頻度が多いって言っても、此方が想定している最終防衛ラインを突破されたりなんてしない。
「そうね、昔に比べたら物凄く変わったものね、ここ迄、これ程までに、強固に、堅牢に、並大抵の敵じゃ突破できない、王都騎士団でも突破は困難だと手こずる、それ程までに防衛力を高めることが出来たのよね、お陰様で私達のような非戦闘員も安心して後方支援に徹することが出来るってものよね」
戦士長が要だったあの時代に比べたら、戦士達の粒も粒なんて表現するのが申し訳ないくらいに大きく育っている。
そりゃ、カジカさんが一番の大樹かもしれないけれど、戦士長が育てた大樹は更なる大きな木々を育ててくれた。

大きく育つように私は、栄養剤をまいただけ。
成長を見守り育んでいってくれたのはカジカさんの手腕だと思ってるよ。
だからといって引退させる気はないけどね!私達にはまだまだカジカさんが必要だからね!だから、しょげてないで気合入れなおしてほしいよね
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