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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (105)

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「うし、固定も完璧、ちょっと揺らすぞ~」
ケーブルを揺らされているのが背中から感触が伝わってくるので足に力を込めて踏ん張る
「痛く、ねぇ…か?」
心配そうな悲痛な声…痛くないと言えば嘘になるかな?何ていうか、骨が軋むような感覚があるし、皮膚が引っ張られるような感覚がある、それが痛いっていうのなら痛い、かな?ある程度、痛覚はカットしてるから…
「うん、大丈夫だよ」心配かけるわけにもいかないのでいつも通り淡々と答える。
「おう、そっか…」
はぁ、っと深いため息が項を擽る様に通り抜け、彼の切ない感情が伝わってくる
憂いてくれる事を喜んでいいのか悩んでしまう。
「俺がよぉ、もう、少し、特別な才能があればなぁ、妻の様によ…俺は、学も魔力も、何も、何も才能がねぇからよぉ…」
憂いているのは自分の不甲斐なさから?でも、その根っこの部分は人の為ってことだよね。
後ろを振り返ると背中を丸めて鼻をすすっている背中が見える、小さな小さな背中…
そっと、彼の背中に手をやり、おでこをつけ
「ありがとう、お爺ちゃん…いつも、心配かけてごめんね。お爺ちゃんに才能がない何て無いよ、誰よりも…命の事を、痛みを考えてくれている。第一にその人が何を望んでいるのか考えてくれている」
背中が震え始める…悲しみや憤りが伝わってくる。彼の歴史は失うことが主だったから、かな?
「常に非情な選択を強いられる…こんな世界、間違ってる」
そっと震える背中から離れ、決意を示す。貴方の歴史は失うだけじゃないと道を示す。
「だから…私が…全ての間違いを、終わらせる。他の誰でもなく、私達が世界を救う」
人々の願いを、憂いを、悲しみの歴史を今代の私達で終わらせないいけない、その覚悟を今一度、噛み締め決意を固める。
「おう…まがぜだぞ」
鼻声で背中を震わせながらも…返事が返ってくる
「うん!任せて!!」
震える背中に出来る限りの笑顔で応え
魔石がセットされた魔道具を押して病棟から出ていく。

「情けねぇなぁ…」

ガラガラと激しく音を出しながら…
己が無力を噛み締める音を受け止めながら…


ガラガラと魔石が乗った魔道具を押し進めて広場に向かって駆けていく。
広場の入り口に到着し、支援部隊の皆が集まっているのか探そうと周囲を見渡すと…

支援部隊を探してたんだけど~、ん~?
広場にあるはずのないモノが置かれてる?
…ぇ!?なんで杖型魔道具がここにあるの!?中央で何かあったの!?

急いで杖型魔道具に近寄り、何かあったのか調べようとすると直ぐに気が付く、張り紙が貼られていることに。こうやって私が真っ先に調べそうな場所にメモを残してくれるってことは、勇気くんが何かメモを残してくれたって事!

彼だったら本気の本気で何かあったら私を叩き起こすだろうから、些細な何かだろう。
何だろうと確かめる為に、メモを手に取り広げて確認する
『一部のっというよりも全体的に魔力を流すパーツの損耗が激しい、此方にあるパーツでは足りない』
端的に直せっという内容に納得する。
ああ、OKOK、そういうことね。レストアしろってことね。
発注書を確認!作業を開始するとしますかってね。

こういうことがあるだろうと、必要な工具は全て広場に用意させているので作業を直ぐに開始できる。
まずは、具体的に何処のどの部分が、損傷が激しいのかチェックするとしましょうかねっと、幸いにしてチェックする時間はありそうだしね!だって、周囲には部隊が揃ってもいないってことは、ちょっと?早くに着きすぎちゃったってことだよね!

工具箱から必要なモノを取り出して杖型魔道具と接続されているケーブルを外し、どの程度劣化しているのかケーブルの保護カバーを外して中身を確認してみると…一目見て納得
「うわぁ…良く持ったほうじゃんこれ」
想定以上に神経が焼けてるし、中を満たしている体液も濁るを通り越して真っ黒…
全ての部分がそうなっているのか保護カバーを外してチェックしてみると全部が同じ状態。
予想以上に消耗が激しいのは、流し込む魔力の量が激しかったからかなぁ?
これを踏まえて、流れる魔力のスピードをちょいと減らして光の粒も小さいサイズに留めた方がいいかもね?最大出力まで魔力を魔石から吸い出させるのは良くないかも?
今のうちに、魔力を流す為の術式を調整しておこうかな?これに関しては切り替えスイッチを作ってあるから、そこを変えれば直ぐに終わるからね。

テキパキと問題点を修正していると、ふと、疑問を感じる。

だとすると、私と接続されているこれはどうなんだろうか?
後ろを振り返り、私と接続されているケーブルに近づき、試しに保護カバーを外すと綺麗に白く濁った体液で満たされている…
んー?
もしやと思い、カバー裏に書かれてているナンバーを見ると
「うんうん、仕事が早い」
どうやら、私が寝ている間にケーブルを新しいのに交換してあったみたい。

これを見て、ある仮説が脳裏をよぎる。
王都と此方を繋げているケーブルが断線だけとは限らないという仮説が新たに湧き上がる。

だとするとー…ナチュラルにさ、劣化によって王都からこの街に魔力を流してくれるケーブルが朽ちたのかも?…でもなぁ、流すケーブルの数も一本じゃないんだけど?
複数本用意してあるから、全部が劣化するとは?…やっぱり断線しているってのが予測としてあっている気がするなぁ。

新しい仮説が生まれてくるが、今はそれを気にしても致し方ない。
気にはなるがそれよりも、他に考えることがある。そちらに意識を向ける為に切り替える。

っま、結果はフラさんとお母さんが帰ってきてから聞けばいいや。
問題はこっち、これはもう、完全にケーブルを交換したほうが良いってことになるけれどさ、ここが使い物にならないってことは内部のケーブルもよろしくないよね?

杖に魔力を送る為に接続している魔力を流すパーツを確認すると
「こっちは新品じゃん?」
どういうことだろう?ぁ、そういうことね。
パーツに振り当てているナンバーを見て納得、勇気くんが新品と交換してくれたんだ。
そっかそっか、そのパーツはあってもケーブルの予備が無い、念のために他にも異常が無いか点検しろって意図だね、はいはい、まったく口下手だなぁ、愛する旦那は、てひひ。


そうと決まれば!一旦、全部のパーツの状態を確認しますか!
取り合えず杖型魔道具に損傷&損耗箇所が無いかチェックするために…
んー杖重たいし、このまま台座に設置された状態で点検しようかな
足場は、どこだ?
「姫様、足場は此方です」
いつの間にかメイドちゃんが傍に居て足場を杖型魔道具の直ぐ傍に置いてくれる
「ありがとう!…」
宰相の所には行ったの?っと声に出してしまいそうになるのを飲み込む
にこやかなメイドちゃんを見て、きっと彼女ならしてくれたと信じることにしよう。
うん!要らぬことを言うわけにはいかないってね!迂闊に誰かの耳に入って変に勘ぐられると面倒だもんね!


メイドちゃんと阿吽の呼吸でメンテンナンス作業を続けていると
「ん?…いつの間に」
作業をしていると視界の端に人々の姿が映り気が付く。
宰相と共に騎士の人達が装備を一つ一つ点検したり整備をしている。
つっても、支援部隊が殆ど終わらせているから、無駄に磨いているだけって感じだけどね。
視線が宰相と交差すると
「おはようございます姫様」
…宰相が今までに見たことが無い程に爽やかな笑顔とトーンで挨拶してくれる。
ちらっとメイドちゃんに視線を向けると、目が死んでる。
「おはよう、出撃だけどさ、もう、ちょ~っと待ってくれない?点検が終わってから~…先に出てもらおうかな?」
王族を待たせるのは良くないんだけどね、待てないのが王族だしね。
「いえいえ、待ちますとも!聖女様をお守りするのが我らが使命ですので!」
よっぽどご機嫌なのか、にこやかに離れていき、お付きの人が用意している椅子に座るとカップを受け取り足を組んで優雅にお茶を楽しみ始める…いい気なもんだね。まったく。
王族のご機嫌取りもしないといけないってのが面倒だよね~…はぁ、情けない男じゃなくピーカ君で良かったと思わないとね。情けない男だったら絶対に待てない待たない勝手に出撃してるだろうからね。

「姫様!何か手伝えることは?」
宰相の優雅な佇まいに呆れていると、後ろから元気な声を掛けられる。
後方支援部隊も到着したみたいなので、振り返って手招きをし
「えっとね、これとこれとこれ、わかる?パーツを持ってきて欲しいんだけど」
紙に書いたパーツの名前に指を刺して持ってきて欲しいと紙を渡そうとすると少し不安に感じる、保管してある場所、分かるかな?専門的なパーツだし…

後方支援部隊だけだと分からない可能性が高そうなので周囲を見渡す。

あ~、誰か他にいるかなっと視線を彷徨わせると
「大丈夫ですよ姫様、僕らもいますので」
ひょこっと術式研究所の人が顔を出してくれる、うん、君が居れば問題ないかな。
「んじゃ、マニーロ君、お願いねー」
「はい!それじゃいくぞー!」
元気に後方支援部隊を引率しパーツが保存されている場所に駆けだしていく。
彼がもう少し経験を積んでいたらリーダーに抜擢するんだけどなぁ、まだまだ、知識と経験が浅いから長には絶対に推薦出来ないしなぁ、若手のリーダーには適任かも?

ついつい、育っていく後任達をぼんやりと眺めてしまう。
さぁ、未来への投資は順調だっと、私は私で問題をクリアにしないとねっと!!


急ぎ足、されど、焦ることなく作業を続けていく。
届けられたパーツを受け取り交換していく。
集中して作業を続け宰相のカップが空となって欠伸が出るころに
「ほい、お終い!」
バンっと台座を叩くと周囲が終わったのだと感じ、立ち上がって此方を見てくるので行くよーっと手を上げて合図を送ると各々が立ち上がり、間の抜けた欠伸をしたりと緊張感が些か欠けている様な気がするけれど、街を出たら自然と気持ちも切り替わるっでしょ!

後方支援部隊を呼び寄せ杖型魔道具が置かれている台座を抱えてもらい運んでもらう
全員で行軍を開始しようとすると
「伝令!司令官は…ぁ!姫様!」
伝令班が凄い剣幕で此方に駆け寄ってくる…それだけで十分、一手打ってきたか、次の一手は何?
「右部隊が押されています!応援願います!」
押されている?ってことは、特別な何かで壊滅するような状況ではないってことね、ってなると…物量戦ってことね。

左じゃなく右ってことは、左部隊を牽制しつつ私達がまだ確保できていない死角を利用して来たって事だろうね、忌々しい!全てを焼き払って周囲を見渡すことが出来る拠点を建設できていたら移動している最中を中央部隊で抑えれたのになぁ!

中央部隊からだと先が見えない森の死角を利用して左から右へと戦力を動かして…右部隊を襲撃してきたってことね。

物量戦で来たってことは、つまりは、右部隊は雑魚って思われているってことかな?
それとも、右部隊が疲弊してくるのを待ち続けていたってことかな?

だとしたら
…うん、理にかなってる。

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