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クマルの処分
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宮殿内は大混乱。
何と言っても姫様がモンスターにさらわれたのだから当然と言えば当然か。
ただその一部始終を知る者としては複雑な気分になる。
『大丈夫だ』と言っても信用されない。
ただの嘘つき。ふざけるなと返されるだけ。
しかもそのからくりも正体もを知られる訳には行かない。
混乱してる中で一人中庭へ。
「どこにいる? 妖精? 妖精さん? 」
「ああごめんなさい。つい気持ちよくて寝てた」
人の特権を取りやがって。随分とのんびりだな。
妖精は俺以外には見えないので自由に動き回れる。
とは言え妖精の行動範囲は広くない。
だからすべてを任せられはしない。
「何か変わったことは? 」
「いえ特には。勇者たちは明日以降の戦いに備えてのんびりしているよう」
「そうか。それでお前の言う魔女は一体どこに? 」
「それは教えられない決まりなの。すぐに分かるよきっと」
もったいぶって教えてくれない。どうせ女神様だって見てない。少しぐらい……
「だったらヒントを頼むよ」
「そうね。必ずしも宮殿にいるとは限らない」
「まあいいや。それで女神様は何か言ってなかったか? 」
「一つだけ。あなたももう気づいてると思うけど決して順番通りにならないって。
飛ばすこともあるって。その時の状況次第だって。だから当然選べもしない」
どうやら今の状況が異常でもないらしい。どのみちまだ慣れない部分がある。
この世界に来てからまだ一日経過してないはず。
ただ分かり辛いのはこの世界と現世とでは時間の流れが違っているから。
やっぱりそこにも慣れが必要。どうしたって数日はかかる。
「おーい! 戻って来たぞ! 」
「うおおお! 」
どうやら使いが戻ったらしい。でも勘違いしてるのか姫まで戻ったと思ってるよう。
姫帰還で皆大喜び。
当然ここにいる誰もが詳しい事情を知らない。
とにかく謁見まで暇なので歩き回るとするかな。
すう……
急に立ち眩みがする。
魔王軍の隠れ家。
いきなり化け物の顔がアップに。危うく泣き喚くところだった。
ボグ! ボグ―!
変な雄たけびを上げて誤魔化す。少々情けない魔王様。
「何だ? せっかく気持ちよく眠っておったのに。びっくりするではないか! 」
「まさか魔王様ともあろう方がそんなことを…… 」
あれ…… 怪しまれたかな? まずいぞこれは早く言い訳しないと。
「誰であろうと急に顔を近づけられれば驚くと言うものだ」
事実だが特に相手がモンスターではそれは声も出ないほど。
「魔王様のおっしゃる通り」
「分かればよい。以後気を付けるように。それで何だ? 」
「お休みのところ申し訳ありません。クマルが戻って参りました」
任務を終えたクマルが姿を見せる。
当然姫奪還は失敗に終わった。一体どんな言い訳をするか見物。
「よし分かった」
すでに大汗を掻いたクマルが体を縮み込ませている。
「よし報告せよ! 」
「魔王様申し訳ありません! 手違いで置いてきてしまいました」
素直な奴だな。もう少しまともな言い訳があるだろう?
だがこれがクマルに求めてたもの。何の問題ないがそれでは周りに示しがつかない。
ボグ! ボグ!
つい吹いてしまう。しかしクマルには怒ってるように見えたのだろう。
魔王様ご立腹ってか?
「クマル! 言い訳はいい。なぜこの魔王様の命令に背く? 」
「へへい! 滅相もございません」
もう冷静さを失っているクマル。さあこれからどうしようかな?
「実は…… 待ち伏せされていまして。百人も二百人もいて手が出せませんでした」
とんでもない嘘を吐くクマル。
「本当か? 本当に本当だな? 」
「はい。それだけではありません。何と魔法使いまでいて近づけませんでした」
ちょっとの真実を混ぜほぼ作り話。本気で言い訳になると思ってるから笑える。
ボグ―!
「愚か者め! 魔王様がお怒りになられるのが分からぬか? 」
「くくく…… よいではないか」
危ない危ない。笑いが堪えられず吹くところだった。
不敵に笑って恐怖させる演出も悪くないがそればかりだと幅がない。
「ほれ嘘を吐くでない。正直に申せ! 」
「ですがこれは事実でして…… 」
恐怖に冷静さを失っているクマル。
これ以上追い詰めては可哀想だし何と言っても必ず失敗してくれる貴重な人材。
「どうされます魔王様? 」
処分をせよと迫る。
「うーむ。真実を言わない奴には地獄の苦しみを与えよう。火を持ってこい! 」
さあクマルの丸焼きにでもするか。
火のついた棒が用意される。
「ではクマルその棒を持て! いいな? 」
「そんな魔王様…… 」
覚悟を決めないクマルはごねる。
「よしせめてもの情けだ。お前たちは立ち去れ! 」
「魔王様よろしのですか? 危なくありませんか? 」
心配性な奴だ。我はすべてを統べる魔王なのだぞ?
「いいから早くせぬか! 」
「ははあ! 」
こうして人払いしたところでクマルと対峙する。
続く
何と言っても姫様がモンスターにさらわれたのだから当然と言えば当然か。
ただその一部始終を知る者としては複雑な気分になる。
『大丈夫だ』と言っても信用されない。
ただの嘘つき。ふざけるなと返されるだけ。
しかもそのからくりも正体もを知られる訳には行かない。
混乱してる中で一人中庭へ。
「どこにいる? 妖精? 妖精さん? 」
「ああごめんなさい。つい気持ちよくて寝てた」
人の特権を取りやがって。随分とのんびりだな。
妖精は俺以外には見えないので自由に動き回れる。
とは言え妖精の行動範囲は広くない。
だからすべてを任せられはしない。
「何か変わったことは? 」
「いえ特には。勇者たちは明日以降の戦いに備えてのんびりしているよう」
「そうか。それでお前の言う魔女は一体どこに? 」
「それは教えられない決まりなの。すぐに分かるよきっと」
もったいぶって教えてくれない。どうせ女神様だって見てない。少しぐらい……
「だったらヒントを頼むよ」
「そうね。必ずしも宮殿にいるとは限らない」
「まあいいや。それで女神様は何か言ってなかったか? 」
「一つだけ。あなたももう気づいてると思うけど決して順番通りにならないって。
飛ばすこともあるって。その時の状況次第だって。だから当然選べもしない」
どうやら今の状況が異常でもないらしい。どのみちまだ慣れない部分がある。
この世界に来てからまだ一日経過してないはず。
ただ分かり辛いのはこの世界と現世とでは時間の流れが違っているから。
やっぱりそこにも慣れが必要。どうしたって数日はかかる。
「おーい! 戻って来たぞ! 」
「うおおお! 」
どうやら使いが戻ったらしい。でも勘違いしてるのか姫まで戻ったと思ってるよう。
姫帰還で皆大喜び。
当然ここにいる誰もが詳しい事情を知らない。
とにかく謁見まで暇なので歩き回るとするかな。
すう……
急に立ち眩みがする。
魔王軍の隠れ家。
いきなり化け物の顔がアップに。危うく泣き喚くところだった。
ボグ! ボグ―!
変な雄たけびを上げて誤魔化す。少々情けない魔王様。
「何だ? せっかく気持ちよく眠っておったのに。びっくりするではないか! 」
「まさか魔王様ともあろう方がそんなことを…… 」
あれ…… 怪しまれたかな? まずいぞこれは早く言い訳しないと。
「誰であろうと急に顔を近づけられれば驚くと言うものだ」
事実だが特に相手がモンスターではそれは声も出ないほど。
「魔王様のおっしゃる通り」
「分かればよい。以後気を付けるように。それで何だ? 」
「お休みのところ申し訳ありません。クマルが戻って参りました」
任務を終えたクマルが姿を見せる。
当然姫奪還は失敗に終わった。一体どんな言い訳をするか見物。
「よし分かった」
すでに大汗を掻いたクマルが体を縮み込ませている。
「よし報告せよ! 」
「魔王様申し訳ありません! 手違いで置いてきてしまいました」
素直な奴だな。もう少しまともな言い訳があるだろう?
だがこれがクマルに求めてたもの。何の問題ないがそれでは周りに示しがつかない。
ボグ! ボグ!
つい吹いてしまう。しかしクマルには怒ってるように見えたのだろう。
魔王様ご立腹ってか?
「クマル! 言い訳はいい。なぜこの魔王様の命令に背く? 」
「へへい! 滅相もございません」
もう冷静さを失っているクマル。さあこれからどうしようかな?
「実は…… 待ち伏せされていまして。百人も二百人もいて手が出せませんでした」
とんでもない嘘を吐くクマル。
「本当か? 本当に本当だな? 」
「はい。それだけではありません。何と魔法使いまでいて近づけませんでした」
ちょっとの真実を混ぜほぼ作り話。本気で言い訳になると思ってるから笑える。
ボグ―!
「愚か者め! 魔王様がお怒りになられるのが分からぬか? 」
「くくく…… よいではないか」
危ない危ない。笑いが堪えられず吹くところだった。
不敵に笑って恐怖させる演出も悪くないがそればかりだと幅がない。
「ほれ嘘を吐くでない。正直に申せ! 」
「ですがこれは事実でして…… 」
恐怖に冷静さを失っているクマル。
これ以上追い詰めては可哀想だし何と言っても必ず失敗してくれる貴重な人材。
「どうされます魔王様? 」
処分をせよと迫る。
「うーむ。真実を言わない奴には地獄の苦しみを与えよう。火を持ってこい! 」
さあクマルの丸焼きにでもするか。
火のついた棒が用意される。
「ではクマルその棒を持て! いいな? 」
「そんな魔王様…… 」
覚悟を決めないクマルはごねる。
「よしせめてもの情けだ。お前たちは立ち去れ! 」
「魔王様よろしのですか? 危なくありませんか? 」
心配性な奴だ。我はすべてを統べる魔王なのだぞ?
「いいから早くせぬか! 」
「ははあ! 」
こうして人払いしたところでクマルと対峙する。
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