転生失敗からの異世界消滅の運びとなりました それでもボクは寝続けようかなと思います

二廻歩

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決して結ばれない二人

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北上中のアーノ姫。
クマルの背に乗り魔女追跡中。

「そろそろ降ろしなさいよ! 」
厳しい口調になってしまう。悪いとは思いながらもクマルだからつい……
「うげ…… 俺様に命令する気か? 」
「命令するも何も最初から主従関係。そうでしょうクマル? 」
クマルは魔王命令でボクの世話係に。
もし怒らせ機嫌を損ねれば魔王様から処分されかねない。
しかも言い訳できない。魔王様はすべてを知る訳だから。
そのことを知ってか知らずかクマルはギリギリで留まっている。
ボクも大人げないことはさすがにできない。姫の自覚がありますからね。

「こいつまた魔王様みたいなことを言いやがって! 」
「いいから降ろしなさい! 命令です! 」
クマルはムッとするも逆らえない。それほど尊い存在。それが姫様だ。
「ほらよ。好きにしな」
仕方なくクマルは降下を始める。
そうそれでいいのです。逆らってはいけない。言われた通りに。
姫様の命令は絶対なのです。

こうして山の頂に降ろされるもクマルだから雑な降ろし方に。
「ちょっと痛いでしょう? もっと優しく。あなたの魔王様に言いつけるわよ」
「知るか! 俺の役目はこれまで。じゃあな。もう呼んでも来てやらん! 」
クマルは一人前に怒って見せる。それも当然か。少々我がままだったかな?
モンスター笛で魔王様の元に戻るところを呼び戻したのだから。
でも仕方なかった。ボクとノアが遭遇する恐れがある。事前に回避しなければ。
これは魔王様だって理解するでしょう。決して叱りつけたりはしないはず。
そもそもボクの判断は魔王様の判断でもある訳ですから。

「お願い。もう少しだけ…… 」
我がままを言ってみるが聞く耳を持たない。
「もうダメだ! いくら呼びつけても無視する。無駄ことはしないことだな」
「でも二人は出会ってしまう…… 」
「知るか! 勝手にしろ! 」
取り合おうともせずに離れるクマル。

勇者・ノアとアーノ姫。
決して結ばれない二人。それどころか出会うことさえ許されない過酷な運命。
ボクが求めてもノアは応えられない。
ノアが思いを打ち明けても返す術がない。
魔王様に関しても同じですが魔王様の場合どうしても会いたいとは思いません。

「ああアーノ姫! 我が愛しのアーノ姫! 」
「ごめんなさい! それでも無理なのです。
いくらお慕いしてようと決して会ってはならないのです! 」
勝手にノアとの間に起こるであろう未来を思い描く。

ただ実際は二人は出会ってない。噂話程度にしかお互いを知らない。
ボクは魔女やお付きやクマルから。
ノアはお父様や魔王討伐隊や仲間から。
こうして出会えないからこそどんどんお互い惹かれ合っていく。
もはや逃れられない運命に翻弄されるボクとノア。

決して結ばれない二人。
いつか出会えるとまだ信じてはいますがもう無理なのではと思うように。
ふふふ…… まるで伝説みたい。
そうあの『紅心中』であるかのように。
とある国で繰り広げられている悲劇の元。
ボクたちはそれでも悲劇的な未来を回避するため全力を尽くさなくてはならない。

ノアとのことを妄想してるともうすでにクマルはいなくなっていた。
クマルの助けもあり魔女を見失わずに済んだ。
魔女が今どこで何をしているのかは把握している。
近くの宿でお世話になってるはず。
さあこれ以上は近づけない。ここから見守るとしましょうか。
でも寒いから歩こうかな。
そうだ。安全を考慮して近くの山小屋にでも……
うわ…… 今回は動きが取れない。
では山小屋で一泊することにしましょう。


始まりの場所へ。
目を開くと女神様の姿が。
何だ夢か。ではもうひと眠りするかな。
<ちょっとふざけないでください! >
ご立腹の女神様。怒らせてしまったらしい。冗談のつもりなんだが。
最初は微笑みを絶やさない素敵な女神様だったのに余裕がなくなり今は表情が硬い。

「ははは…… 何か分かりましたか? 」
無理やり呼び寄せたと言うことは何かしらが分かったのだろう。
その中身をこの硬い表情からでは読み取れない。
<大変なことが分かりました>
「まさか…… 解決策が見つかったんですか? 」
<それは…… あなた以外の二人を倒すしかない。
でもそれには近づかなければなりません。でも近づけば危険が伴う。
これはジレンマですね。さああなたはどう解決しますか? >
女神様は自分で考えることを放棄したようだ。

「分かりません。俺にはさっぱり」
今まで伝えられた情報と大して変わってない。
新発見だと言うから喜んで耳を傾けたのに。呼びつけることでもないよな。
<そうですか。ではその方法をお教えしましょう。
まず目を瞑るのです。そして精神を統一する。これだけでも体が柔らかくなるかと>
何を言ってるのだろう?

「気づかれないと? もう一人の自分に近づき倒せると? 」
<はい。二人の場合のオーソドックスな倒し方かと>
もったいぶって何が言いたいのだろう?
<三人となればそれも難しい。今その方法を必死に探してるところです。
ですからもう少々お待ちください>
待ってもいいが時間が掛かり過ぎる。
消滅までもう時間がない。
このまま何もできずに指を咥えてろと言うのか? 

「女神様! もう一度だけ」
<それからあなたふざけてませんか? 」
怒っていたのはこっちなのになぜか追及されてしまう。
別に俺はふざけてないと思うけどな。


                  続く
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