なぜお義母様と呼ばないのです

二廻歩

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深夜。
長旅に疲れた国王様のイビキが響き渡る。
「もうおやすみになられたようですね。あなたたちも早く寝なさい」
明日も早い。メイドたちには国王様に失礼のないよう対応してもらいたい。
私はゆっくり国王様がお帰りになる頃に顔を見せればいい…… はずもないか。
国王様は明日の昼頃まで滞在なさる。
朝には鉱山を視察することに。
この鉱山を守り切ることが我が一族の使命。

部屋に戻りもうひと仕事。
「お呼びでしょうか? 」
ぼうっとしていたものだからノックをしたのにも気づかなかった。
やはり疲れているみたい。
国王様のお相手は神経も使うし疲れる。
そしていつものように一大事の時にやって来る。
ほぼ厄病神と化している。
いえいえ違うんですよ。何も国王様が悪いのではなくただのタイミングの問題。
それに厄病神とは言え神様です。
国王様を神格化してるのであって他意はございません。
「ご主人様? ご主人様? 」
「ごめんなさい。入って来て」
呼んでおいて居留守を使ってどうするの?
「ご主人様。お疲れのようですね」
影のメイドの力を借りる。

「セピユロスの居場所分かる? 」
この屋敷には牢屋がない。
だからセピユロスがどこに囚われているか皆目見当がつかない。
今、彼を救えるのは私しかいない。
「お待ちください。私はご主人様の為に仕えて参りました。
ですが今回の依頼はあまりに特殊。ご主人様の立場も危うく、お受けできません」
影のメイドは先回りして拒否する。
私が何をしようとしているか彼女なら手に取るように分かるのでしょう。

「いいですか。セピユロスは無実なのです。そんな彼を閉じ込めておけと?
それはあまりに無責任。ここの主人として責任をもって解放したい」
何と言ってもヴィーナの婚約者。
このような仕打ちは現在この屋敷で暮らしている彼の両親にも申し訳が立たない。
即刻解放するのが当然。考えるまでもありません。
「ご主人様は何も間違っていません! 私もそう思います」
さすがは影のメイド。私のことをよく理解している。
「うん。そうでしょう。だから…… 」
「でしたら明日にでも執事なり何なりに命じ出して差し上げるのが正しい手順かと」
生意気を言うが正論だ。
「それは…… 」
「できないと? そう言えませんよね。まだ疑いが晴れてないのですから」
彼女は私のことを本当に良く理解している。その上で説得に当たる。

「お願い! あなたしか頼れないの! 」
強引に頼み込む。これは命令ではなくお願い。それならきっと彼女だって……
今この状況では彼女以外頼れない。
他のメイドも執事も屋敷の者は誰も信用できない。
だからってよその者を信用できるかと言ったらそれは無理。
「ずるいですよご主人様。私を巻き込むつもりですか? 」
「お願い! あなただけが頼り。もうあなたしかいないの! 」
泣き落としで迫る。

「もう…… 分かりました。ですがこちらにも都合がありますからね。
命令をお願いします」
「セピユロスを救出して! 」
「しかし…… 」
「有無は言わせません。命令に従うのです! 」
「ははあ! 仰せのままに。ではこれを」
鍵を渡される。
彼女はもう私の為に動いてくれていた。

「ご主人様のセピユロス様への愛の深さは存じてました。噂にもなってましたしね。
ですがお気を付けください。もう後戻りはできません。決して勧めません」
この後どうなるか私以上に理解してるようだ。
私だって馬鹿じゃない。どのような事態になるか分かる。
それでもセピユロスを助けたい。この手で彼を解放してあげたい。
これは本来ヴィーナの役割。でも動けずにいる。
ただ見守るだけではセピユロスは取り戻せない。
ヴィーナにその気があるならもうとっくに動いてるはず。
沈黙し続けると言うならセピユロスは私が奪い去るのみ。

「この鍵はどこの鍵? 答えなさい! 」
「その前に一つご主人様に確認があります。
セピユロス様が本当に旦那様を殺害していた場合どうなさるつもりですか? 」
鍵と引き換えに迫る。
考えてもいなかった。彼がそんなことするはずないと勝手に。
確かにその可能性もゼロではない。でも今は迷ってられない。

               続く
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