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百番目の勇者 

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旅立ちの日。

村の仲間が集まってきた。

「頑張ってね! 」

「村のためにお願いね! 」

「リザを知らないか? 」

まずいそれは俺のせいではない。正直に言う訳にも行かない。

急いで出発だ。

「いってらっしゃい! 」

「お元気で! 」

どう言う訳か皆嬉しそうだ。村を立つ俺を祝福してるのかな?


勇者ついに旅立つ。

一体どんな過酷な旅が待っているのやら。

隣村を越え山を一つ登ったところで見えてきた。

大きなお城。

ここが今回の目的地。

今までのところ特に問題なく進んでいる。

即死モードなんて爺さん脅したがやはりこんなもの。

心配して損したぜまったく。


はあはあ
はあはあ

「イシコロ村の者。代表者二名おらぬか? 」

「申し訳ありません。遅れております」

汗びっしょりでひたすら謝り続ける男。

その名もウエスティン。

「お前んとこの者は時間も守れんのか? 」

「あははは! 」

他の村の者に笑われる始末。そうなるともう汗が止らない。

ウエスティンの汗は尋常ではない。拭けど拭けど垂れてくる。

「すみません! 」

「もう良い! まったくどいつもこいつもロクなのがいない。

村々を回り勇敢な若者をとお触れを出したと言うのに」

「ははは! 時期が悪るすぎますぜ。今は収穫の時期だもんで」

「どの村も人手不足。よそから調達したいと思っているぐらいですわ。

貴重な人材は渡せません。役に立つものは村も放しはしないって。

まあ俺様は例外っすけどね」

「お前ずいぶんと生意気だなどこの者だ? 」

「北の村です」

「ほう、とすると北の村は非協力的だと言うことだな」

「いえそうは申しておりません。ははは…… 」

「嫌な予感がしたんだよな…… 」


彼らはいわゆる村からのつま弾きもの。そう役立たずだ。

村のお荷物にならないように厄介払いされたという訳だ。

吠えてる奴ほどその傾向にある。

「いいかお前らよく聞け! お前らは村からつま弾きにあった正真正銘の役立たず。

村に負担にならないように二名を選抜してもらったが……

ただの役立たずが来るとは国王様もさぞお嘆きになろう。村はどうなるかな? 」

「ちょっとお待ちください! 」

「役立たずの意見など必要ない! 」

切り捨てる。


わあああ!

お助け!

「ぎゃあぎゃあ喚くな! 一人ぐらいはまともなのはいないのか? 」

前途多難の役立たず集団。

「おい! そこの汗っかき! まだお前のとこは来んのか? 」

「もう少々お待ちください。どこぞで迷ってるんだと思います」

汗が止まらない。

「もう良い! お前ら着いて来い! 」


ざわざわ
ざわざわ
 
「遅れました! 」

ついに百人目の勇者の登場だ。

主人公は遅れてやってくる。

「名を名乗れ! 」

「私はアモ―クス。イシコロ村から参りました。どうぞよろしく! 」

「よろしい。お前は百番目の騎士だ!

もう時間が無い。続くように。では皆の者参るぞ! 」

「うおおお! 」

「やる気だけは一人前だな。よろしい。着いて来い! 」

謁見の間に通される。


国王挨拶。

「おお。皆の者よく来てくれた。勇敢な若者のようだな。余は嬉しいぞ」

「ははあ! 有難き幸せ! 」

「うん。では護衛を頼んだぞ」

国王は激励を終え出て行った。

「ほら何をぼやっとしている! 急いで支度をせぬか! 

明日一番で城を立つ。腹を空かせても怪我をしても病気をしても困る!

しっかり食事をせよ! 」

さすがに晩餐とは行かない。

メイドたちが普段使っている食堂室で豪華な食事にありつく。


ああ夢のようだ。

「肉って何だ? 」

ウエスティンは汗と共に涙を流す。

貧しい農民の倅。肉を知らない。

まあイシコロ村ではモンスターバーガー以外置いていない。

例外はリザのとこだが。そのリザが行方不明。

今は開店休業状態。おやじさんには申し訳ない。

モンスターバーガーはまだ子供の俺たちは食べさせてもらえていない。

もちろん俺は鶏肉は食べたことがある。

ナイフとフォークで肉を切り刻む快感。癖になりそう。


隣でがっつく汗っかき。

「どうしたお前切ってやろうか? 」

丸のまま飲み込もうとしているので慌てて止める。

「さあ貸してみろ! 」

だがウエスティンは疑いの目を向けてくる。

まさかとるはずないだろ?

ところでこいつ誰だっけ? 初めて見る顔だが。

「なあお前どこに住んでる? 」

「ええっと村外れの墓場近く」

「へえあそこか。なあリザを覚えてるか? 」

「ああ、あのかわいい子」

「そうか。今どこにいるか知ってるか? 」

「さあ失踪したんだったよね。村中大騒ぎだったもの」

「ここさ」

「ははは…… 冗談きついよ」

腹の中では狼になってしまう。

違うんだ。俺の腕の中なんだ。

あーあ。そんなこと言って分かってくれるはずないよな。


食事を終え部屋へ。

もうクタクタ。眠るに限る。

うおおお!

叫び声がこだまする。

もううるさくて眠れないじゃないか。

ひっひっひ!
くおくお!

獣の鳴き声? またかよ。うるさくて敵わない。

おやすみなさい。

                    続く
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