29 / 122
恐怖
しおりを挟む
約束の時刻を過ぎてもバスが迎えに来ることはなかった。
残念だがこの天気では仕方ない。
土砂崩れによる通行止めがいつ解除されることか。
そんな最悪の状況でガイドが問い詰められ白状してしまう。
「ふざけるな! 」
「落ち着いてください」
従業員の二人が外に出ようとする客を必死に抑える。
「落ち着いてられるか! 俺は帰るんだからな」
黒木が吠える。
「そうだ! そうだ! 」
若い販売員の男と鑑定士も続く。
「俺たちも」
そう言って奈良と龍牙も騒ぎ始めた。
帰りのバスも来ず警察も当てにならない今、自力で脱出しようと考える者も。
「外は雷雨で視界が悪く今出ては危険です」
必死に説得する従業員。
「分かってるさ。だがここにいればもっと危険だ」
暴動は収まりそうにない。
「いい加減にしないかあんたら! 」
お婆さんが一喝。
「そうですよ。ここは私のショーでも見て寛ぎください」
マジシャンはマイペースだ。
「あんたも何か言ったらどうだい木偶の坊! 」
「ううう…… 」
「無理なら探偵さんを連れてきな」
ドンドン
ドンドン
まるで強盗。
私を呼ぶ声がする。
「探偵さん来てください。お願いします! 」
外はもう真っ暗。
ふて寝したら夜になったらしい。
腹も減ったしそろそろ起きるかな。
「もううるさいな。勘弁してよ」
「探偵さんお願いします。皆さんを説得してください」
ガイドに手を掴まれる。
「ええ…… ちょっと…… 」
強引な展開。
興奮状態の客が騒ぎ出していた。
「どうしたんですか皆さん? 」
「バスが来ないんだ。ここでじっとなどしてられない」
案の定騒ぎを起こしてるのは黒木と販売員の男。それと眼鏡の男。
それに釣られて鑑定士も。
なぜか相棒が転がっている。
「ちょっと何をやってるんだいあんたら! 」
お婆さんが喚きだした。
もう何が何やら。
「探偵さん」
お婆さんが叫ぶと皆こちらに視線を送る。
注目されるのは悪くない。
「ええと皆さんお帰りですか? 」
「うるせい! 舐めてるのかてめえは? 」
黒木が凄む。本性を現したようだ。
「あの土砂崩れで道が塞がってるんです。ここにいた方が生き残る確率は高いかと。
ああ恨まれる心当たりのある方は逃げちゃってください。確率は五分五分ですから」
犯人を炙り出すのは難しいが被害者候補は絞られる。
大体態度で分かる。
しかしなぜそこまで心当たりがあるのか不思議。
相当後ろ暗いことがあるのだろう。
殺されるほどの悪行。まあさほど興味はないが。
「くそ俺はもう籠る! 誰も信じない! 」
販売員の男が走り出す。
それを追いかけるように黒木が続く。
他の者も続こうとするので止める。
「待ってください皆さん。ここで一晩明かすのはいかがでしょう」
とりあえずインパクトのある提案で釘付けにする。
「ふざけないでくれ! 殺人鬼と過ごせと言うんですか? 」
龍牙が震えた声を出す。
臆病なのは理解するが他の者にまでうつる恐れがある。
それだけはご遠慮願いたい。出来るだけ平静を保って欲しい。
集団でパニックにでもなったら死人が出るぞ。
これはまだ感覚でしかないがそうなるのも近い。時間の問題だ。
それにこれ以上の犠牲者を出せない。皆の心が壊れてしまう。
恐れていることが現実に?
「いいでしょう。しっかり鍵を掛けてください皆さん。
特に恨みを買った覚えのある方はぜひ。順番に狙われるのは間違いないですから」
「へへへ…… そうだよ。私は関係ないさ」
鑑定士は冷静さを装ってるが血の気がない。
ストレスと恐怖にさらされているのかすぐにでも治療が必要なレベル。
「ちょっと鑑定士さん大丈夫ですか? 体調が優れないようですが」
手を差し伸べるが振り払って行ってしまった。
生き残る最後のチャンスを自分で台無しにする。
愚かなことを。愚かすぎる。
洗いざらい吐けば生き残れたかもしれないのに。
もはやこの状況では誰も驚きはしないだろう。
彼らが過去においてどのような所業を行ったのか?
秘密は墓場まで持って行くつもりだろうがそれでもどうにか説得し協力を得ねば。
悪党の皆さん全力で逃げ切ってくださいね。
墓場がそう遠くないことを願うばかり。
続く
残念だがこの天気では仕方ない。
土砂崩れによる通行止めがいつ解除されることか。
そんな最悪の状況でガイドが問い詰められ白状してしまう。
「ふざけるな! 」
「落ち着いてください」
従業員の二人が外に出ようとする客を必死に抑える。
「落ち着いてられるか! 俺は帰るんだからな」
黒木が吠える。
「そうだ! そうだ! 」
若い販売員の男と鑑定士も続く。
「俺たちも」
そう言って奈良と龍牙も騒ぎ始めた。
帰りのバスも来ず警察も当てにならない今、自力で脱出しようと考える者も。
「外は雷雨で視界が悪く今出ては危険です」
必死に説得する従業員。
「分かってるさ。だがここにいればもっと危険だ」
暴動は収まりそうにない。
「いい加減にしないかあんたら! 」
お婆さんが一喝。
「そうですよ。ここは私のショーでも見て寛ぎください」
マジシャンはマイペースだ。
「あんたも何か言ったらどうだい木偶の坊! 」
「ううう…… 」
「無理なら探偵さんを連れてきな」
ドンドン
ドンドン
まるで強盗。
私を呼ぶ声がする。
「探偵さん来てください。お願いします! 」
外はもう真っ暗。
ふて寝したら夜になったらしい。
腹も減ったしそろそろ起きるかな。
「もううるさいな。勘弁してよ」
「探偵さんお願いします。皆さんを説得してください」
ガイドに手を掴まれる。
「ええ…… ちょっと…… 」
強引な展開。
興奮状態の客が騒ぎ出していた。
「どうしたんですか皆さん? 」
「バスが来ないんだ。ここでじっとなどしてられない」
案の定騒ぎを起こしてるのは黒木と販売員の男。それと眼鏡の男。
それに釣られて鑑定士も。
なぜか相棒が転がっている。
「ちょっと何をやってるんだいあんたら! 」
お婆さんが喚きだした。
もう何が何やら。
「探偵さん」
お婆さんが叫ぶと皆こちらに視線を送る。
注目されるのは悪くない。
「ええと皆さんお帰りですか? 」
「うるせい! 舐めてるのかてめえは? 」
黒木が凄む。本性を現したようだ。
「あの土砂崩れで道が塞がってるんです。ここにいた方が生き残る確率は高いかと。
ああ恨まれる心当たりのある方は逃げちゃってください。確率は五分五分ですから」
犯人を炙り出すのは難しいが被害者候補は絞られる。
大体態度で分かる。
しかしなぜそこまで心当たりがあるのか不思議。
相当後ろ暗いことがあるのだろう。
殺されるほどの悪行。まあさほど興味はないが。
「くそ俺はもう籠る! 誰も信じない! 」
販売員の男が走り出す。
それを追いかけるように黒木が続く。
他の者も続こうとするので止める。
「待ってください皆さん。ここで一晩明かすのはいかがでしょう」
とりあえずインパクトのある提案で釘付けにする。
「ふざけないでくれ! 殺人鬼と過ごせと言うんですか? 」
龍牙が震えた声を出す。
臆病なのは理解するが他の者にまでうつる恐れがある。
それだけはご遠慮願いたい。出来るだけ平静を保って欲しい。
集団でパニックにでもなったら死人が出るぞ。
これはまだ感覚でしかないがそうなるのも近い。時間の問題だ。
それにこれ以上の犠牲者を出せない。皆の心が壊れてしまう。
恐れていることが現実に?
「いいでしょう。しっかり鍵を掛けてください皆さん。
特に恨みを買った覚えのある方はぜひ。順番に狙われるのは間違いないですから」
「へへへ…… そうだよ。私は関係ないさ」
鑑定士は冷静さを装ってるが血の気がない。
ストレスと恐怖にさらされているのかすぐにでも治療が必要なレベル。
「ちょっと鑑定士さん大丈夫ですか? 体調が優れないようですが」
手を差し伸べるが振り払って行ってしまった。
生き残る最後のチャンスを自分で台無しにする。
愚かなことを。愚かすぎる。
洗いざらい吐けば生き残れたかもしれないのに。
もはやこの状況では誰も驚きはしないだろう。
彼らが過去においてどのような所業を行ったのか?
秘密は墓場まで持って行くつもりだろうがそれでもどうにか説得し協力を得ねば。
悪党の皆さん全力で逃げ切ってくださいね。
墓場がそう遠くないことを願うばかり。
続く
0
あなたにおすすめの小説
芙蓉は後宮で花開く
速見 沙弥
キャラ文芸
下級貴族の親をもつ5人姉弟の長女 蓮花《リェンファ》。
借金返済で苦しむ家計を助けるために後宮へと働きに出る。忙しくも穏やかな暮らしの中、出会ったのは翡翠の色の目をした青年。さらに思いもよらぬ思惑に巻き込まれてゆくーーー
カクヨムでも連載しております。
Husband's secret (夫の秘密)
設楽理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
【完結】ふたつ星、輝いて 〜あやし兄弟と町娘の江戸捕物抄〜
上杉
歴史・時代
■歴史小説大賞奨励賞受賞しました!■
おりんは江戸のとある武家屋敷で下女として働く14歳の少女。ある日、突然屋敷で母の急死を告げられ、自分が花街へ売られることを知った彼女はその場から逃げだした。
母は殺されたのかもしれない――そんな絶望のどん底にいたおりんに声をかけたのは、奉行所で同心として働く有島惣次郎だった。
今も刺客の手が迫る彼女を守るため、彼の屋敷で住み込みで働くことが決まる。そこで彼の兄――有島清之進とともに生活を始めるのだが、病弱という噂とはかけ離れた腕っぷしのよさに、おりんは驚きを隠せない。
そうしてともに生活しながら少しづつ心を開いていった――その矢先のことだった。
母の命を奪った犯人が発覚すると同時に、何故か兄清之進に凶刃が迫り――。
とある秘密を抱えた兄弟と町娘おりんの紡ぐ江戸捕物抄です!お楽しみください!
※フィクションです。
※周辺の歴史事件などは、史実を踏んでいます。
皆さまご評価頂きありがとうございました。大変嬉しいです!
今後も精進してまいります!
12年目の恋物語
真矢すみれ
恋愛
生まれつき心臓の悪い少女陽菜(はるな)と、12年間同じクラス、隣の家に住む幼なじみの男の子叶太(かなた)は学校公認カップルと呼ばれるほどに仲が良く、同じ時間を過ごしていた。
だけど、陽菜はある日、叶太が自分の身体に責任を感じて、ずっと一緒にいてくれるのだと知り、叶太から離れることを決意をする。
すれ違う想い。陽菜を好きな先輩の出現。二人を見守り、何とか想いが通じるようにと奔走する友人たち。
2人が結ばれるまでの物語。
第一部「12年目の恋物語」完結
第二部「13年目のやさしい願い」完結
第三部「14年目の永遠の誓い」←順次公開中
※ベリーズカフェと小説家になろうにも公開しています。
あやかし警察おとり捜査課
紫音みけ🐾書籍2冊発売中!
キャラ文芸
※第7回キャラ文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。
【あらすじ】
二十三歳にして童顔・低身長で小中学生に見間違われる青年・栗丘みつきは、出世の見込みのない落ちこぼれ警察官。
しかしその小さな身に秘められた身体能力と、この世ならざるもの(=あやかし)を認知する霊視能力を買われた彼は、あやかし退治を主とする部署・特例災害対策室に任命され、あやかしを誘き寄せるための囮捜査に挑む。
反りが合わない年下エリートの相棒と、狐面を被った怪しい上司と共に繰り広げる退魔ファンタジー。
大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
菱沼あゆ
キャラ文芸
華族の三条家の跡取り息子、三条行正と見合い結婚することになった咲子。
だが、軍人の行正は、整いすぎた美形な上に、あまりしゃべらない。
蝋人形みたいだ……と見合いの席で怯える咲子だったが。
実は、咲子には、人の心を読めるチカラがあって――。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
【完結】ルースの祈り ~笑顔も涙もすべて~
ねるねわかば
恋愛
悪路に閉ざされた貧しい辺境ルースライン領。
兄を支えたい子爵令嬢リゼは、視察に来た調査官のずさんな仕事に思わず異議を唱える。
異議を唱えた相手は、侯爵家の子息で冷静沈着な官吏ギルベルト。
最悪の出会いだった二人だが、領の問題に向き合う中で互いの誠実さを知り、次第に理解し合っていく。
やがてリゼが王都で働き始めたことを機に距離を縮める二人。しかし立ちはだかるのは身分差と政略結婚という現実。自分では彼の未来を縛れないと、リゼは想いを押し込めようとする。
そんな中、故郷の川で拾われる“名もなき石”が思わぬ縁を呼び、リゼの選択と領の未来を動かしていく――。
想いと責務の狭間で揺れる青年と、自分を後回しにしがちな少女。
すれ違いと葛藤の先で、二人は互いを選び取れるのか。
辺境令嬢の小さな勇気が恋と運命を変えていく。
※作中の仕事や災害、病、小物の知識などは全てフィクションです。史実や事実に基づいていないことをご理解ください。
※8万字前後になる予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる