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ひき逃げ
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話が核心へ向かう。
「それから何があったんですか? 」
これでも十分恨まれておかしくないが殺されまではしないだろう。
動機はもっと奥の奥にあると見ているがたぶん間違いない。
「ある日大学のサークル仲間を呼びだした。
奴は案の定ひっかかりまんまと壺を買わされた。
その後始末に俺が…… ここまで聞けば俺が何をしたか分かるよな」
この言い方からすると最悪の事態となったのは予想できる。
薄笑いを浮かべる千田。どこか狂っている。
「そう轢いちまったんだよ。ギリギリで止めるつもりだったがつい……
本当についてない。自分を呪ったよ。
壺を壊すためには仕方なかったんだ。ばれたら俺たちが捕まっちまうからな。
悪魔に魂を売る覚悟だった。でもその結果死亡事故を起こしちまう。
その被害者の名前が確か…… 」
千田は思い出そうとするが出てこないとのこと。
冗談だろ? 忘れたくても忘れられない事件の被害者の名前を思い出せない?
「千田さん! なぜ忘れられるのです? 」
「まあそう言うなよ。数年も前の話さ。覚えてる訳ないだろ。
場所だってあやふやなんだからよ。どっかのホテルだったと思うが」
「それでもお友だちの名前ぐらい覚えてるはずですよ」
「へへへ…… 遠い昔のことさ」
罪悪感から逃れようと無理矢理記憶を封印しているに違いない。
名前さえ思い出せば事件解決に一歩前進だと言うのにまったく。
「要するにその時の被害者が亡くなり遺族に恨まれたと」
「ああ逃げ切れずに逮捕された。もちろん依頼されたことは黙っていた。
それなのになぜか当時の仲間が次々に殺されている。きっとすべてばれたんだ。
だから俺はあれほど参加するのはよそうと言ったのによ」
ここまで言い訳するとは何て見苦しい。
なぜ罪に向き合わずに反省も謝罪もしなかったのかそれが理解できない。
「当然の報いですよ。それで遺族の顔は? 名前は? 」
追及するがもう何を言っても上の空。
千田の取り調べを終える。
「そうだ千田さん。小駒さんの提案なんですが壺を元の場所に戻す話が出てます。
小駒さんの言い分では一か所にまとめておくのはまずいのではないかと。
真犯人の思う壺になると危惧していました。
考え過ぎで逆に危ないと言ったんですがね……
自分は狙われる心配がないから大丈夫だと。それで出来ればお返ししたいのですが」
たぶん無理だろうな。狙われる動機があるもんな。
「小駒さんって誰だよ? 」
「ですからあのお婆さんのことですよ」
「ふん。誰でもいいが勝手なこと抜かしやがって。
ただの嫌がらせじゃないか。ふざけるな! 」
やはり怒ってしまった。一応は伝えた。これで文句はないだろう。
ようやく事件の全容が見えて来た。俄然やる気が出ると言うもの。
急いで黒木から話を聞くとしよう。
三〇四号室。
戸を叩くが反応がない。
これはまずい。何かあったのだろうか?
まさかもう殺されてる?
「黒木さん? 黒木さん? 開けてください! 」
繰り返しドアを叩くがそれでも返事がない。
慌ててマスターキーを取りに行こうとした時ようやく扉が開く。
「ああん? もううるせえな! 今トイレ行ってたところだっての」
面倒だと言わんばかりに頭を掻く。
「まったく人が良い気持ちでクソしてるのを邪魔しやがって! 一体何の用だ? 」
怯えてるのでも震えてるのでもなくキレてる。ついでおくそまで。
「お話を伺おうかと…… 」
凄んだ黒木に圧倒され恐縮しっぱなし。
まったくこんな奴守る必要ないじゃないか。
「話? 俺はすべて話しただろうが」
面倒臭いと受け入れない。
「お願いしますよ黒木さん。これもあなたの為ですから」
犯人を特定すれば犯行を未然に防ぐことが出来るはずだ。
そうすれば黒木だって安全。
「まあいいや。そこに座れ! 」
常に命令口調の黒木。
「それで俺に聞きたいことは何だ? 」
ベットで寛いでいる。
タバコの煙を吹きかける態度の悪い男。
「ここは禁煙ですよ」
一応は注意する。もちろん相手は意に介さない。
「ああん? いいから話せよ! 」
こんな人だったけ? いやこんなものか。
「単刀直入にお聞きします。あなたは恨まれるような覚えはありませんか? 」
今回の一連の殺人事件の動機は彼らの蛮行から来ている可能性が極めて高い。
「ふふふ…… どうだったかな? 忘れちまったよ」
否定も肯定もしない。心当たりがあれば素直に吐いて欲しい。
もちろんないならそれに越したことはないが。そんなはずないのだが。
あの千田がすべて打ち明けてくれた。もう言い逃れは出来ない。
続く
「それから何があったんですか? 」
これでも十分恨まれておかしくないが殺されまではしないだろう。
動機はもっと奥の奥にあると見ているがたぶん間違いない。
「ある日大学のサークル仲間を呼びだした。
奴は案の定ひっかかりまんまと壺を買わされた。
その後始末に俺が…… ここまで聞けば俺が何をしたか分かるよな」
この言い方からすると最悪の事態となったのは予想できる。
薄笑いを浮かべる千田。どこか狂っている。
「そう轢いちまったんだよ。ギリギリで止めるつもりだったがつい……
本当についてない。自分を呪ったよ。
壺を壊すためには仕方なかったんだ。ばれたら俺たちが捕まっちまうからな。
悪魔に魂を売る覚悟だった。でもその結果死亡事故を起こしちまう。
その被害者の名前が確か…… 」
千田は思い出そうとするが出てこないとのこと。
冗談だろ? 忘れたくても忘れられない事件の被害者の名前を思い出せない?
「千田さん! なぜ忘れられるのです? 」
「まあそう言うなよ。数年も前の話さ。覚えてる訳ないだろ。
場所だってあやふやなんだからよ。どっかのホテルだったと思うが」
「それでもお友だちの名前ぐらい覚えてるはずですよ」
「へへへ…… 遠い昔のことさ」
罪悪感から逃れようと無理矢理記憶を封印しているに違いない。
名前さえ思い出せば事件解決に一歩前進だと言うのにまったく。
「要するにその時の被害者が亡くなり遺族に恨まれたと」
「ああ逃げ切れずに逮捕された。もちろん依頼されたことは黙っていた。
それなのになぜか当時の仲間が次々に殺されている。きっとすべてばれたんだ。
だから俺はあれほど参加するのはよそうと言ったのによ」
ここまで言い訳するとは何て見苦しい。
なぜ罪に向き合わずに反省も謝罪もしなかったのかそれが理解できない。
「当然の報いですよ。それで遺族の顔は? 名前は? 」
追及するがもう何を言っても上の空。
千田の取り調べを終える。
「そうだ千田さん。小駒さんの提案なんですが壺を元の場所に戻す話が出てます。
小駒さんの言い分では一か所にまとめておくのはまずいのではないかと。
真犯人の思う壺になると危惧していました。
考え過ぎで逆に危ないと言ったんですがね……
自分は狙われる心配がないから大丈夫だと。それで出来ればお返ししたいのですが」
たぶん無理だろうな。狙われる動機があるもんな。
「小駒さんって誰だよ? 」
「ですからあのお婆さんのことですよ」
「ふん。誰でもいいが勝手なこと抜かしやがって。
ただの嫌がらせじゃないか。ふざけるな! 」
やはり怒ってしまった。一応は伝えた。これで文句はないだろう。
ようやく事件の全容が見えて来た。俄然やる気が出ると言うもの。
急いで黒木から話を聞くとしよう。
三〇四号室。
戸を叩くが反応がない。
これはまずい。何かあったのだろうか?
まさかもう殺されてる?
「黒木さん? 黒木さん? 開けてください! 」
繰り返しドアを叩くがそれでも返事がない。
慌ててマスターキーを取りに行こうとした時ようやく扉が開く。
「ああん? もううるせえな! 今トイレ行ってたところだっての」
面倒だと言わんばかりに頭を掻く。
「まったく人が良い気持ちでクソしてるのを邪魔しやがって! 一体何の用だ? 」
怯えてるのでも震えてるのでもなくキレてる。ついでおくそまで。
「お話を伺おうかと…… 」
凄んだ黒木に圧倒され恐縮しっぱなし。
まったくこんな奴守る必要ないじゃないか。
「話? 俺はすべて話しただろうが」
面倒臭いと受け入れない。
「お願いしますよ黒木さん。これもあなたの為ですから」
犯人を特定すれば犯行を未然に防ぐことが出来るはずだ。
そうすれば黒木だって安全。
「まあいいや。そこに座れ! 」
常に命令口調の黒木。
「それで俺に聞きたいことは何だ? 」
ベットで寛いでいる。
タバコの煙を吹きかける態度の悪い男。
「ここは禁煙ですよ」
一応は注意する。もちろん相手は意に介さない。
「ああん? いいから話せよ! 」
こんな人だったけ? いやこんなものか。
「単刀直入にお聞きします。あなたは恨まれるような覚えはありませんか? 」
今回の一連の殺人事件の動機は彼らの蛮行から来ている可能性が極めて高い。
「ふふふ…… どうだったかな? 忘れちまったよ」
否定も肯定もしない。心当たりがあれば素直に吐いて欲しい。
もちろんないならそれに越したことはないが。そんなはずないのだが。
あの千田がすべて打ち明けてくれた。もう言い逃れは出来ない。
続く
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