ドスグロ山の雷人伝説殺人事件 

二廻歩

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潜在的共犯者

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黒木から聞きだした犯罪被害者の会。
それを元に龍牙を問い詰める。
彼は奈良とマジシャンと共に小駒さんの名前を挙げた。
小駒さんは興奮して黒木を糾弾。
今こそ小駒さんから話を聞く時だろう。

「でも本当に私は犯人じゃないんだからね。そこだけは忘れないで欲しいね。
それに犯罪被害者の会を結成したからってまさか奴らを殺そうと思っちゃいないよ。
あくまで会は被害者やその家族の救済のためのもの。今回だって慰安旅行だからね。
勘違いしないでおくれよ」
言い訳にも聞こえるがそう言われると返す言葉がない。

「そうだ小駒さん。慰安旅行は誰が提案したんですか? 」
小駒さんたちがこの旅行に参加しなければ事件は起きなかったかもしれない。
一連の事件でもしもを考えればキリがない。
だが参加しなければ計画は破綻していただろう。
代わりに真犯人候補として本当の観光客を招待することになる。

たとえメンバー以外の犯行だとしても十分な動機があるはず。
動機もなく殺人を繰り返すことはほぼない。無差別殺人ぐらいなもの。
または単なるサイコパス。
その場合は色相が濁っており犯罪係数も上昇してるだろうからすぐに分かる。
捕まえるのではなく動かなくするしかない。
サイコパスは執行対象である。

「副会長が持ってきたパンフレットに今回のバス旅行のことが載っててね。
参加者を募ったのさ。まさか奴らが参加してるなんてね。あははは…… 」
笑いが止まらない小駒さん。
「ではその副会長の誘いに乗って慰安旅行に? 」
「ああ、ただのバス旅だよ。無料なんだから行くに決まってるさ」
どうやら小駒さんたちメンバーも無料招待を受けたのだろう。
「ではなぜ皆さん未だに他人の振りをしてるんですか? 」
龍牙によれば奈良もマジシャンも犯罪被害者の会のメンバーだと。
「ははは…… 何の話だか」
頑なに認めようとしない。だが証拠は揃っている。

「小駒さん! 」
「うるさいねあんたも。犯罪被害者の会だよ? 
騙されやすいカモだって言ってるようなもんじゃないか!
互いの素性を隠すのは当然さ。それにあの女が乗って来てすぐに悟ったよ。
私らを騙した極悪非道の詐欺師だってね。また詐欺を働こうとしてるに違いないと」
小駒さんの言い分では詐欺師たちが来るとは思わなかったと。
「本当ですか小駒さん? 」
「ああ。これも神様のお導きだとそう解釈したよ」

動機のある者が混じると真犯人は動きやすくなる。
小駒さんたち犯罪被害者の会のメンバーは真犯人にとって一種の仲間とみなせる。
いつでも共犯者になり得る。
私は彼らのことを潜在的執行人(ポテンシャル・ワーカー)と呼ぶことにした。

いやこれではまるで真犯人が会のメンバーにはいないように感じるので不適切か。
ならばまだ不明な点もあるのでこう呼ぶことにしよう。
潜在的共犯者(ポテンシャル・コワポレーター)

「黒木さんを含めた五人が詐欺師だといつ気付きましたか? 」
「それは…… 」
歯切れが悪い。これ以上突っ込んでも無駄のようだ。
「話を変えます。あなたは犯人を知ってますか? 」
「ああもちろんさ。犯人は黒木だろ」
黒木が姿を晦ました。今何も聞けてない状況。
一番疑わしいのは彼。
要するに仲間割れだと主張する。
これが一番すっきりするが果たしてどうか?
その黒木は一体どこにいる?
「もう分かったよ探偵さん。一つだけ面白いことを教えてやるよ」
やった。粘り勝ちだ。

「ここに集まったのはあんたも知っての通り奴ら詐欺師集団。
壺売りに懲りずに宝石を売りつけていたね。そして被害者の会のメンバー。
それから従業員。最後に探偵さんだ。これがこのホテルに集まった者の内訳。
ただ一人だけ見たことない者がいた。会のメンバーに聞いても誰も知らない。
覚えてないと言うの。ではその人はどう言う理由でこのホテルに来たんだろうね」
お婆さんは私を試すように話を切る。

「ちょっと待ってください。被害者の会のメンバーではないと言うのですか? 」
余計に訳が分からなくなる。
「そうは言ってないだろ。私らは知らないがメンバーだったかもしれないしね」
あやふやな答えでごまかそうとしている。
謎の人物を指摘する小駒さん。
暗に彼を疑っているのが分かる。
犯罪被害者の会のメンバーの可能性もあるので滅多なことは言えないと構える。
仲間を売るのはやはり違うそうだ。

                 続く
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