ドスグロ山の雷人伝説殺人事件 

二廻歩

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黒木の行方

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小駒さんの違和感は果たして事件解決に役立つのか?
「では小駒さんはその方が犯人だと? 」
「馬鹿言うんじゃないよ! 犯人は黒木さ。それは間違いない。
ただ会のメンバーではない部外者が居るのはどうも気持ちが悪くてね。
それがガイドだったり得体が知れないとは言え探偵だったり。
偶然には出来過ぎてるけどおかしくないのさ。ではその人はどうか? 」
誰のことを言ってるのか大体分かった。
でもその人には犯行は不可能だった気がする。
もはや無関係であれば真犯人候補から外すべきだ。
うん…… いや待てよ。抜け道を使えばもしかしたら……

「あの…… お婆さんは会長さんに会ったことないんですよね?
でしたらその方は会長さんではないですか? 」
大人しく耳を傾けていたガイドさんが口を挟む。
「それはないよ。副会長が分からないはずないさ。そんな話も聞いてないしね。
まあ追及した訳ではないから正確なところはちょっと…… 」
被害者の会の代表は別にいるとのこと。
「龍牙さんに聞けば詳しいことは分かりますよね。まさか奈良さんが? 」
二人は行動を共にしていた。ならば代表は奈良でもおかしくない。
「さあどうだろうね。想像に任せるよ」
私の追及を難なくかわした。

「お婆さんはあのマジシャンの方ともお知合いですよね」
ガイドが突っ込む。
「いいから行方不明の黒木を捕まえな! 奴が犯人に間違いないさ」
決して意見を曲げない。
「黒木さんがどこに行ったか心当たりはありませんか? 」
「ある訳ないだろ! まあどうせ一人で下山しようとしたんだろうさ。
逃げ切れると思ってるのかね」
仲間割れによる黒木逃亡説を強く推す。
あまりにも彼のせいにしようとするので逆に怪しい。
ただ黒木の証言を失えば動機の解明が難しくなるのも事実。
真犯人が他に居たとして動機が彼らにあるなら黒木は最後の生き証人。

十分後。
食堂に全員集合。
「すぐに帰れるんですよね? 」
奈良が騒ぎ出す。
「集まりましたね皆さん」
「もう探偵さん。我々に何の用ですか? 」
「どうか落ち着いて。集まってもらったのは黒木さんの件です。
先ほど黒木さんが失踪しました。彼を探さなくてはなりません」
「ふざけるなあんな奴知るものか! 」
奈良に続いてマジシャンが騒ぎ出す。
二人は彼の正体をもう知っている。ここにいる者全員が聞かされている。
それは全員が彼の人間性を理解したことになる。

「あんな奴を探す必要ない! 居なくなったら居なくなったでいいじゃないか。
もうどうせ逃げられないさ」
「そうですよ。今は大人しくここで待つのが得策です」
龍牙が震えた声を出す。
「駄目です。彼がいかなる人物であろうと見捨てられません。
どうか落ち着いて私の指示に従ってください。二つに分けようと思います」

「私とガイドさんにマジシャン、龍牙さんに山田さんが外を探します。
その他の人は彼と一緒に中を探してください」
相棒に後を任せ捜索隊を結成する。
比較的協力的で素直なメンバー。不満を漏らしながらもどうにかついてきた。

「探偵さん。手分けして探しましょう」
マジシャンの提案。
「駄目です。これ以上勝手に動かれては二次被害が出ます」
黒木が遭難したのではないことぐらい分かっている。
もう山を下りたかもしれない。だがそれならそれでいい。道は一本道。
そこが塞がっていたので救助隊が来れなかった訳だから早晩発見されるだろう。
問題はどこかに身を隠そうとした場合。
最後のターゲットを仕留めようとしてる可能性もある。
そうではなくただ逃れようと隠れた場合、自由行動を許せば黒木殺害が容易に。
どうしてもそれは避けなければならない。

真相が見えてこない状況ではどっちつかずになる。
そうすると余計に指示も行動もしづらくなる。
「黒木さんはきっとホテル内ですよ。もう戻りましょう」
龍牙が震えながら訴える。
もういい加減演技は止めて欲しい。
「陽動作戦のつもりですか龍牙さん? 」
ついイライラして本音が出る。
「いえ…… 私は怖いんです。いつ黒木に襲われるか」
「それは大丈夫だと思いますよ龍牙さん。彼は一人。こっちは四人ですから。
不意打ちでもされなければ問題ない。お互い頑張りましょう」
いつも静かで穏やかな山田さんが口を開いた。
冷静で頼りになる。それにしても彼も犯罪被害者の会のメンバーだろうに。
なぜまだ関係を隠そうとするのか。
「そうですよ。山田さん良いこと言いますね。落ち着いてください。
きっとすぐに見つかります」
見つかったら見つかったで厄介なのだが。

                    続く
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