ドスグロ山の雷人伝説殺人事件 

二廻歩

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現場百遍

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続いて三号室にお邪魔する。
第二の被害者山田ミサの部屋。
相棒と料理人も加え四人で中へ。
もう慣れたとは言え臭いがキツイ。
今日二度目の訪問。
現場百遍と言うぐらいだから改めて調べるのも悪くない。

山田ミサ。
職業不詳だが恐らくただの会社員と言う訳ではないだろう。
黒木の話では詐欺師仲間。
今は愛人関係にあるようなことを言っていた。
果たしその正体は?

遺体は全裸体で発見された。
さすがに故人を辱める訳にもいかず発見時に遺体を隠すことにした。
現場保存の為なるべく動かさないのが鉄則。
後で疑われることにも繋がりかねない危険な行為。
咄嗟の判断だった。叱れるのは覚悟の上。

「何か気付いたことありますか? 」
ガイドさんと料理人の二人に聞く。特に料理人の方は現場は初めて。
「発見時と特に変化ないかと思います。綺麗な方だったのでとても残念です」
ガイドさんほど若くもなく可愛くもないが昔はそれはきれいだったのだろう。
私も初めて会った時は当主の若奥様だと勘違いした記憶がある。
話で聞く限り何人もの男を地獄に誘った。
美しさとはそれだけで罪深い。山田さんも騙されそうになったと言ってた。
ミサさんも山田だったっけ。たまたま同じ苗字で初対面だと。
山田さんもミサさんが殺されてなければコロッと騙されていたのだろうか?
一体彼女のどこに世の男を虜にするほどの魅力があったのか?
私などガイドさんにしか興味がないものだから。
「本当に綺麗な方だったもんね」
料理人も同意見のようだ。

「何か分かった? 」
仕方がなく相棒に頼ることにした。
「撲殺さ。やはりここにあった壺を使い犯行に及んだに違いないよ」
連続撲殺事件に発展したのは確かこの時からだった。
なぜ凶器を壺に選んだのだろうか? いくら詐欺への恨みだとしても不自然。
凶器を壺に選んだ本当の理由が分かれば自ずと事件の全容が見えてくる。

「壺ですか」
料理人は全員の部屋に壺があったと証言した。
「お客様がお泊りになりますので予め不備はないか確認します」
出迎えの準備のために料理人は前日からホテルに。
「その時との変化は? 」
「分かる訳ないじゃないですか! お客様が動かすでしょうし。
そんなことを検証しても意味がないですよ探偵さん」
苛立った料理人に睨まれる。
「ではガイドさんの方は発見時と変わったことは? 」
「特には変わってないかと」
第一発見者も首を振る。
うーん。手掛かりがあると思ったのに。

「あの本当に密室だったの? 」
相棒が何気なしに尋ねる。悪意はないのが逆に怖い。
「それはもちろん。起こすようにメモがありました。
ですのでマスターキーを使って部屋に入りました。そうすると…… 」
ぶるぶると震え出したガイドさん。やはり彼女には無理なようだ。
手を使いもういいと合図を送る。

いくらここの管理を任されてるからと言ってすべての第一発見者になるのか?
なぜ彼女が損な役回りを? ついてないだけではないそれなりの理由があるはずだ。
「もしあなたが犯人だとしてそう仕向ける理由はありますか? 」
ガイドさんには大変失礼な質問。
これではまるで犯人だと指摘してるようなもの。
「分からない。私には何も分からないんです」
ついに泣き出してしまった。
しまった…… まずいことをしたかな。
つい事件解決を急ぐあまり無闇に傷つけてしまった。反省しなくては。

「もう何をやってるんですか! 」
料理人の先輩の手を借りて部屋へ戻るガイドさん。
つい口が滑って貴重な協力者を失う。
口は禍の元と言うが今回はある程度仕方ないこと。
すべての事件の第一発見者である彼女の疑いを晴らそうとしての勇み足。
信じてはもらえないだろうがもちろん本気ではない。

「たぶんさ理由はあるよ。でもそれは彼女と言うより彼女の性格と立場。
動きが読めると言うか余計なことは絶対にしない。そんな人を選んだ。
だから第一発見者に仕立て上げたんだと思うよ」
相棒はさも知ったように話すがもちろんただの勘。何の証拠にも基づかない。
「とにかく真犯人さえ分かればその辺のことは聞けばいいんだよ」
元も子もないことを言う。
相棒は決してふざけてるのではないが言葉を選べない性格。

「よし次の部屋に行こうよ」
早く終わらせたいと急かすが捜査において焦りは禁物。
見えるものも見えなくなる。


                 続く
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