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被害者心理
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第三のポイント。
秘密の通路があるかないか。
第二の現場であるミサさんの部屋には確かにあった。
先ほど相棒にも確認してもらった。
続いて第三の現場でも同じように確認してもらう。
動物の絵が壁一面に書かれている。
迫力があり見る者を圧倒する画力でただ者ではないとすぐに分かる。
この絵画にどれだけの価値があるか知らないし作者だって興味ない。
私にとってははっきり言ってどうでもいいもの。
だが何らかの意図があって飾られているのは間違いない。
うーん。何も思いつかない。
さすがに子供ではないので誰も絵画にいたずらすることはないだろうとしか。
取っ手を探る。
絵の中央下部にデコボコしたところががあった。
壁一面の絵によりカモフラージュされているが確かにドアは存在する。
よく考えられた仕掛けだ。
ただの宿泊客では永遠に辿り着かない秘密の扉。
気付くには我々のように丹念に部屋を調べるか。
前回発見時のようについバランスを崩して手が触れるかぐらいしかない。
それこそ子供がふざけてるうちに見つけることも。
ガイドさんたちなら清掃の時や事前確認の時には発見できたかもしれないが。
ただ発見時のガイドさんの驚き方から察するにとても気付いてるようには思えない。
だとするとオーナーまたは真犯人等の限られた者にしか知られてないことになる。
ドアを開けようとするが押しても引っ張ってもびくともしない。
ならばと取っ手の付近にある鍵穴に部屋の鍵を差し込む。
ガチャ
開いた音がする。
隣の部屋へと続く抜け道の出来上がり。
ガイドさんとはここまでだった。
せっかくだからお邪魔してみますか。
相棒と隣の五号室へ。
ここは確か小駒さんの部屋だったはず。
何だこれ?
『ビーチ殺人事件』
小駒さんの本。どうやら彼女は相当な推理小説好きらしい。
先月発売のハードカバー。
こんなにかさ張る物を普通持って行かない。
荷物になってしょうがない。
それでも持って行くとなると相当なマニア。
念の為に本を検める。
大丈夫。血は付着してない。
まあこれで撲殺するには難しく骨が折れそうだ。
さすがにもっと厚いレンガ本と言われるものではないと不可能。
そう言えば何年ぶりかに新刊が出ていたっけ。あの妖怪本。
相棒はそう言うのに興味ないし助手はどうだったかな?
ここは大家さんにでも…… 帰ったら聞いてみるか。
本を元に戻し怪しいものがないか調べる。
食堂に全員集まっておりここの者も当然いない。
さすがにこれ以上勝手に漁る訳にも行かないか。もう手遅れな気もするが……
六号室に戻る。
うん? それはまさか?
相棒の手には日記が。
「おい何をしてやがる。断りもなしに盗むんじゃない! 」
「大丈夫。後で断るからさ」
非常識な相棒は何のためらいもなく開く。
「冗談だろ? やって良いことと悪いことが…… 」
「はいはい」
「勝手にしろ! 」
人の秘密を盗み見るようでどうも落ち着かない。
日記のことは相棒に任せて次の現場へ。
第四の現場。
被害者は若い販売員。
ここも現場が驚くほど似通っており開けてすぐのところに遺体が。
相棒の言うように動かされた形跡がない。
となると犯人は予想通り招き入れてもらってから殺害し例の抜け道から脱出。
まったくどれだけ無茶をするのか。真犯人はあまりにも大胆不敵。
これでは捕まえてくれと言ってるようなもの。ふざけてやがる。
一つだけ気になることがある。
どんな手を使ってドアを開けさせたのかだ。
第三の事件では警戒もしていたし恨まれていたことも自覚していた被害者。
だがこの第四の被害者はまた少し違う。
実は事件ごとに被害者の心理が変わっている気がする。
最初の骨董商は無警戒。
当然殺されるなどとは夢にも思ってないだろう。
第二の被害者はどうもあまり警戒してなかった気がする。
男を招き入れようとしていた節もある。
そして第三の鑑定士は相当警戒していた。
それでもいやそれだからこそ引っ掛かってしまったのかもしれない。
事件に無関係な者なら信用が置ける。それは私や相棒だったりガイドさんだったり。
どう言うつもりか知らないが相棒は私を疑っている。
冗談? その真意を測りかねている。
そして第四の被害者は誰一人信用してなかった。
どのような手を使っても自ら開かせられないはずなのになぜか……
それは探偵でも例外ではない。
無関係の者さえ疑う。疑心暗鬼の状況。
そこに現れた救世主。被害者の千田にとって真犯人になり得ない人物。
絶対の信頼をおいたが故に招いてしまった。
決して招いてはならない物を招いてしまった結果、千田は殺害されてしまう。
こう考えると当てはまるのは……
徐々に犯人にが絞られてきた。
続く
秘密の通路があるかないか。
第二の現場であるミサさんの部屋には確かにあった。
先ほど相棒にも確認してもらった。
続いて第三の現場でも同じように確認してもらう。
動物の絵が壁一面に書かれている。
迫力があり見る者を圧倒する画力でただ者ではないとすぐに分かる。
この絵画にどれだけの価値があるか知らないし作者だって興味ない。
私にとってははっきり言ってどうでもいいもの。
だが何らかの意図があって飾られているのは間違いない。
うーん。何も思いつかない。
さすがに子供ではないので誰も絵画にいたずらすることはないだろうとしか。
取っ手を探る。
絵の中央下部にデコボコしたところががあった。
壁一面の絵によりカモフラージュされているが確かにドアは存在する。
よく考えられた仕掛けだ。
ただの宿泊客では永遠に辿り着かない秘密の扉。
気付くには我々のように丹念に部屋を調べるか。
前回発見時のようについバランスを崩して手が触れるかぐらいしかない。
それこそ子供がふざけてるうちに見つけることも。
ガイドさんたちなら清掃の時や事前確認の時には発見できたかもしれないが。
ただ発見時のガイドさんの驚き方から察するにとても気付いてるようには思えない。
だとするとオーナーまたは真犯人等の限られた者にしか知られてないことになる。
ドアを開けようとするが押しても引っ張ってもびくともしない。
ならばと取っ手の付近にある鍵穴に部屋の鍵を差し込む。
ガチャ
開いた音がする。
隣の部屋へと続く抜け道の出来上がり。
ガイドさんとはここまでだった。
せっかくだからお邪魔してみますか。
相棒と隣の五号室へ。
ここは確か小駒さんの部屋だったはず。
何だこれ?
『ビーチ殺人事件』
小駒さんの本。どうやら彼女は相当な推理小説好きらしい。
先月発売のハードカバー。
こんなにかさ張る物を普通持って行かない。
荷物になってしょうがない。
それでも持って行くとなると相当なマニア。
念の為に本を検める。
大丈夫。血は付着してない。
まあこれで撲殺するには難しく骨が折れそうだ。
さすがにもっと厚いレンガ本と言われるものではないと不可能。
そう言えば何年ぶりかに新刊が出ていたっけ。あの妖怪本。
相棒はそう言うのに興味ないし助手はどうだったかな?
ここは大家さんにでも…… 帰ったら聞いてみるか。
本を元に戻し怪しいものがないか調べる。
食堂に全員集まっておりここの者も当然いない。
さすがにこれ以上勝手に漁る訳にも行かないか。もう手遅れな気もするが……
六号室に戻る。
うん? それはまさか?
相棒の手には日記が。
「おい何をしてやがる。断りもなしに盗むんじゃない! 」
「大丈夫。後で断るからさ」
非常識な相棒は何のためらいもなく開く。
「冗談だろ? やって良いことと悪いことが…… 」
「はいはい」
「勝手にしろ! 」
人の秘密を盗み見るようでどうも落ち着かない。
日記のことは相棒に任せて次の現場へ。
第四の現場。
被害者は若い販売員。
ここも現場が驚くほど似通っており開けてすぐのところに遺体が。
相棒の言うように動かされた形跡がない。
となると犯人は予想通り招き入れてもらってから殺害し例の抜け道から脱出。
まったくどれだけ無茶をするのか。真犯人はあまりにも大胆不敵。
これでは捕まえてくれと言ってるようなもの。ふざけてやがる。
一つだけ気になることがある。
どんな手を使ってドアを開けさせたのかだ。
第三の事件では警戒もしていたし恨まれていたことも自覚していた被害者。
だがこの第四の被害者はまた少し違う。
実は事件ごとに被害者の心理が変わっている気がする。
最初の骨董商は無警戒。
当然殺されるなどとは夢にも思ってないだろう。
第二の被害者はどうもあまり警戒してなかった気がする。
男を招き入れようとしていた節もある。
そして第三の鑑定士は相当警戒していた。
それでもいやそれだからこそ引っ掛かってしまったのかもしれない。
事件に無関係な者なら信用が置ける。それは私や相棒だったりガイドさんだったり。
どう言うつもりか知らないが相棒は私を疑っている。
冗談? その真意を測りかねている。
そして第四の被害者は誰一人信用してなかった。
どのような手を使っても自ら開かせられないはずなのになぜか……
それは探偵でも例外ではない。
無関係の者さえ疑う。疑心暗鬼の状況。
そこに現れた救世主。被害者の千田にとって真犯人になり得ない人物。
絶対の信頼をおいたが故に招いてしまった。
決して招いてはならない物を招いてしまった結果、千田は殺害されてしまう。
こう考えると当てはまるのは……
徐々に犯人にが絞られてきた。
続く
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