91 / 122
恨まれる覚え
しおりを挟む
犯人が分かった気がする。たぶんあいつだ。
姿と声を変え今回のバスツアーに無理矢理参加させた依頼人。
結局奴の素性は掴めなかった。
てっきり俺たち同様詐欺師だとばかり…… こっち側の人間だと疑わなかった。
だがよく考えれば俺たちをドスグロ山に閉じ込め復讐する気だったのかもしれない。
もし今回の連続殺人が奴の仕業なら俺らはまんまと一杯喰わされたことになる。
探偵に相談しても良かったが…… どうせこんな都合のいい話など誰も信用しない。
それどころか言い逃れしてると思われ余計に疑われる。
奴らは探偵も含め俺を信用してない。俺だって奴らを信用してない。
信用できるのは仲間だけ。
もうそいつらも居なくなっちまった。
昔堅気の詐欺師は絶滅するしかないのか?
見てろよ。俺は奴らとは違う。
絶対に生き残ってやる。生き残ってやるからな!
そしてもっと人を騙し続けてやるんだ。
警察なんか信用できない。
警察とは一切関わるつもりもない。
ハアハア!
ハアハア!
やっぱりビール一本じゃ酔いはしない。
買い足すかな? だがこんな夜中に出歩いたら真犯人の思う壺。
殺してくれと言ってるようなもの。俺はそんな間抜けじゃない。
ここは大人しく寝るか。だが寝れるのか?
取り敢えず冷静に冷静に。
よく考えれば俺は何もしてない。殺人犯なんかじゃない。
殺人には一切関与してないんだ! 一切だ!
だから令状でもない限り俺を拘束できない。
もちろん逃亡犯でもない。
まだ捜査の網には引っかかってはいないはずさ。
うーん。それにしても何で奴らは俺たちを狙うのか?
俺を? 俺たちを殺すのか?
まったく理解が出来ない。
真犯人は何を考えてる?
だってよ。詐欺は今現在どこでも起きてること。
俺は人間が出来てるから被害者が悪いとは思わない。
騙されるのが人間の業だと心得てる。
だからこれは仕方ないこと。諦めてくれよな。
物凄い額の詐欺をしたんじゃない。
高くても二百万かそこら。
確かに高いって感じるだろうがこれをもって破産することもない。
勉強代だと思えば安上がりだ。
感謝して欲しいぜ。これで悪質な詐欺に遭わずに済むかもしれないんだからな。
不動産に株、Fxに会員権。この手のやばいのに嵌ればすぐに借金を負うことになる。
その損失を取り戻そうと大きく張れば余計に借金が膨らみ大変なことに。
政府はそれを推奨してるし。
貧乏人を焚き付けて搾り取る最新の貧困ビジネスだ。
俺たちには想像もつかない世界さ。
命がいくらあったって足りねえ。
そもそもそれらは投資ではなくて投機だ。
俺たちがやってるのも凍死じゃなくて陶器だ。
あーもう寒いな。何で山はこんなに冷えるんだよ。
何であれ命あってのものさ。
うん…… 命? まさかあのことがばれたか?
だがあれは俺の指示じゃない。
俺はただ詐欺が発覚しないように壺を壊せと命令した。
それなのに千田の奴が轢いちまった。
だから奴は交通刑務所に。
去年出所したんだったけか。
まあ目撃者が壺を持った被害者の前方不注意だと証言してくれたから助かったが。
もちろん目撃者ってのは一緒に歩いていたミサのことで……
うん? あの当時の記憶が蘇ってくる。
だがそれでも何で他の奴まで殺す必要がある?
特に鑑定士や美術商の爺は表向きはただの雇われ人。
もちろん美術商の爺の指示の下で俺たちが手伝った訳だが……
まさか漏れてるのか? すべて筒抜け?
ドスグロ山の雷人はもちろん存在しないさ。
でも俺らを恨んでいた者は確かにいた。
特に犯罪被害者の会の奴だ。
まずい。これは一人や二人ではない。
全員で俺たちを抹殺しようとしてる。
くそ! やはり早く逃げるべきだった。
あの探偵もその仲間もバスガイドも料理人の女もグルなのか?
もしそのことに気付いたと知られたら豹変して八つ裂きにされる。
俺が悪くないと言っても聞いてはくれない。
仮に通っても婆さん辺りが仕方ないねと続行する気だ。
土下座でもするか?
いやそんなんで通用する相手じゃない。
警察が来るまで閉じこもって警察の監視の中下山するしかない。
くそ! もう考えるのも面倒だ。
寝るとしよう。
電気をつけっぱなしにして横になる。
ガサガサ
ガサガサ
ついに真犯人が動き出した?
まずい眠っちまった。
あれまだ朝じゃないのかよ。
もういいや。眠っちまえ。
物音がしたから起きてみたがどうやら勘違いらしい。
大丈夫。鍵さえきちんとかけておけば襲われることもないさ。
あれ誰かいる…… 訳ないか。
続く
姿と声を変え今回のバスツアーに無理矢理参加させた依頼人。
結局奴の素性は掴めなかった。
てっきり俺たち同様詐欺師だとばかり…… こっち側の人間だと疑わなかった。
だがよく考えれば俺たちをドスグロ山に閉じ込め復讐する気だったのかもしれない。
もし今回の連続殺人が奴の仕業なら俺らはまんまと一杯喰わされたことになる。
探偵に相談しても良かったが…… どうせこんな都合のいい話など誰も信用しない。
それどころか言い逃れしてると思われ余計に疑われる。
奴らは探偵も含め俺を信用してない。俺だって奴らを信用してない。
信用できるのは仲間だけ。
もうそいつらも居なくなっちまった。
昔堅気の詐欺師は絶滅するしかないのか?
見てろよ。俺は奴らとは違う。
絶対に生き残ってやる。生き残ってやるからな!
そしてもっと人を騙し続けてやるんだ。
警察なんか信用できない。
警察とは一切関わるつもりもない。
ハアハア!
ハアハア!
やっぱりビール一本じゃ酔いはしない。
買い足すかな? だがこんな夜中に出歩いたら真犯人の思う壺。
殺してくれと言ってるようなもの。俺はそんな間抜けじゃない。
ここは大人しく寝るか。だが寝れるのか?
取り敢えず冷静に冷静に。
よく考えれば俺は何もしてない。殺人犯なんかじゃない。
殺人には一切関与してないんだ! 一切だ!
だから令状でもない限り俺を拘束できない。
もちろん逃亡犯でもない。
まだ捜査の網には引っかかってはいないはずさ。
うーん。それにしても何で奴らは俺たちを狙うのか?
俺を? 俺たちを殺すのか?
まったく理解が出来ない。
真犯人は何を考えてる?
だってよ。詐欺は今現在どこでも起きてること。
俺は人間が出来てるから被害者が悪いとは思わない。
騙されるのが人間の業だと心得てる。
だからこれは仕方ないこと。諦めてくれよな。
物凄い額の詐欺をしたんじゃない。
高くても二百万かそこら。
確かに高いって感じるだろうがこれをもって破産することもない。
勉強代だと思えば安上がりだ。
感謝して欲しいぜ。これで悪質な詐欺に遭わずに済むかもしれないんだからな。
不動産に株、Fxに会員権。この手のやばいのに嵌ればすぐに借金を負うことになる。
その損失を取り戻そうと大きく張れば余計に借金が膨らみ大変なことに。
政府はそれを推奨してるし。
貧乏人を焚き付けて搾り取る最新の貧困ビジネスだ。
俺たちには想像もつかない世界さ。
命がいくらあったって足りねえ。
そもそもそれらは投資ではなくて投機だ。
俺たちがやってるのも凍死じゃなくて陶器だ。
あーもう寒いな。何で山はこんなに冷えるんだよ。
何であれ命あってのものさ。
うん…… 命? まさかあのことがばれたか?
だがあれは俺の指示じゃない。
俺はただ詐欺が発覚しないように壺を壊せと命令した。
それなのに千田の奴が轢いちまった。
だから奴は交通刑務所に。
去年出所したんだったけか。
まあ目撃者が壺を持った被害者の前方不注意だと証言してくれたから助かったが。
もちろん目撃者ってのは一緒に歩いていたミサのことで……
うん? あの当時の記憶が蘇ってくる。
だがそれでも何で他の奴まで殺す必要がある?
特に鑑定士や美術商の爺は表向きはただの雇われ人。
もちろん美術商の爺の指示の下で俺たちが手伝った訳だが……
まさか漏れてるのか? すべて筒抜け?
ドスグロ山の雷人はもちろん存在しないさ。
でも俺らを恨んでいた者は確かにいた。
特に犯罪被害者の会の奴だ。
まずい。これは一人や二人ではない。
全員で俺たちを抹殺しようとしてる。
くそ! やはり早く逃げるべきだった。
あの探偵もその仲間もバスガイドも料理人の女もグルなのか?
もしそのことに気付いたと知られたら豹変して八つ裂きにされる。
俺が悪くないと言っても聞いてはくれない。
仮に通っても婆さん辺りが仕方ないねと続行する気だ。
土下座でもするか?
いやそんなんで通用する相手じゃない。
警察が来るまで閉じこもって警察の監視の中下山するしかない。
くそ! もう考えるのも面倒だ。
寝るとしよう。
電気をつけっぱなしにして横になる。
ガサガサ
ガサガサ
ついに真犯人が動き出した?
まずい眠っちまった。
あれまだ朝じゃないのかよ。
もういいや。眠っちまえ。
物音がしたから起きてみたがどうやら勘違いらしい。
大丈夫。鍵さえきちんとかけておけば襲われることもないさ。
あれ誰かいる…… 訳ないか。
続く
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる