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第一発見者
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詐欺グループにしろ犯罪被害者の会にしろ真犯人の思い通りに動かされた。
黒木や龍牙の気まぐれもあったが致命傷とはならず逆に不自然さが消える。
真犯人の強運によりプラスに働き第一関門を突破。
第一の事件、海老沢氏殺害。
こうして事件の幕は開けたがなぜ真犯人は海老沢氏を殺害出来たのか?
「黒木さん。海老沢氏は夜中に他人を招き入れますか? 」
人にもよるので断定はできないが普通はあり得ない。
「いいや。奴は慎重だったよ。自分が詐欺の片棒を担いでるのを理解してるからな。
なるべく知らない奴とは関わらないようにしていたな。それは千田も雑見も一緒だ。
まあミサは男漁りに夢中で気にする素振りもなかったがな」
さすがは愛人関係にあっただけあってミサさんのことは詳しい。
まるで監視してるかのよう。束縛男は嫌われるぞ。
「密室で鍵も部屋の中。どのように犯行に及んだと思いますか? 」
「うーん。考えたこともなかったな」
当事者なんだから少しは考えろよな。
「ではガイドさんはどう思われますか? 」
黒木では話にならない。ガイドさんなら私の質問に真剣に答えてくれるはず。
「それはもちろんお隣の部屋から侵入したとしか…… 」
「そう確かに鍵は二号室の鍵でも開きますからね」
「ちょっと待ちなよ! マスターキーがあれば入れるだろ」
小駒さんはやはり鋭い。ガイドさんたちを疑っているのか?
「その件ですが確かにマスターキーを入手すれば可能でしょう。
しかしそれは我々の出現で不可能となりました。
第一の事件の時なぜかガイドさんたちの部屋にお邪魔。
偶然にも四人のアリバイは成立してしまいました。
本来なら二人は別々の部屋。アリバイなど成立せず一番疑れていたでしょうね」
「はい確かにその通りです」
「まったくあなた方には驚かされます」
ガイドさんに続いて料理人も沈黙を破る。
「おい。そんな雑なアリバイありか? 」
黒木が吠える。
「そうさ。かわいそうだけどまだ完全に疑いが晴れた訳じゃないからね。
単独犯だって共犯にだってなれる。そうだろ木偶の坊? 」
「うん…… どうかな」
「聞こえないよ! はっきり喋りな! 」
耳が遠いのを相棒の滑舌のせいにする困ったお婆さん。
「ううん。うん? 」
「もういいよ! 」
相棒が引きずりだされるが残念ながら何も考えてない。
「うん僕もそう思う」
仕方なく同意する始末。
「ちょっと待ってください皆さん。私がどうやって? 」
同情を買うように大げさに手で顔を覆う。
これは雲行きが怪しくなってきたな。
確かにガイドさんの疑いをここらで完全に晴らさなければ今後も疑われたまま。
「だってあんた第一発見者じゃないか。殺してそのまま叫べば密室の完成だろ? 」
不運なことにすべての事件の第一発見者になった。
それだけにとどまらず疑われる。
「思い出してください皆さん。なぜ彼女が第一発見者になったのかを? 」
二日目の朝のことです。確か我々はまだこのドスグロ山が薄曇り山だと勘違い。
若奥さん役のミサさんに旦那さんを呼ぶようにお願いしたはず。
だがなぜかその時メイド役のガイドさんが代わりに呼びに行った。
そのせいで彼女が第一発見者になった。これは偶然に過ぎない。
我々が勘違いしたままなのも紛れ込んだのも呼んだのもただの偶然。
それ以上でもそれ以下でもない。これは犯人がどうこう出来ることではない。
イレギュラーな出来事だった。
「そうか。そう言えばすぐだったね悲鳴が上がったのはさ」
小駒さんが思い出してくれた。
「そう。だからこの短い間では撲殺は不可能。
私たちが駆けつけた時にはもう息もなく冷たくなっていた。
ここから導き出される答えはガイドさんが真犯人ではないと言うこと。
もちろん何らかの共犯の可能性も残されてますがかなり薄いかと」
ガイドさんを必死に擁護する。
「おいおい! 第一発見者だぜ? しかもすべてのと来てやがる。
これはどう見たってガイドさんが怪しい」
目の前に自分を襲った真犯人がいるのになぜかガイドさんに不信感を抱く黒木。
彼にとってみれば真犯人などどちらでもいい。自分が助かることが大事。
真犯人が潔く認めればガイドさんだって下手に疑われはしなかった。
「いいんですか? あなたのせいで何の罪もないガイドさんが犯人にされても。
止められるのはあなただけだ。もう充分ではないんですか? 」
真犯人は俯いたまま何も発することはない。
真犯人を見誤ったか? 出来れば自ら罪を認めてもらいたい。
私の手によってすべての真相が明かされる前に。
続く
黒木や龍牙の気まぐれもあったが致命傷とはならず逆に不自然さが消える。
真犯人の強運によりプラスに働き第一関門を突破。
第一の事件、海老沢氏殺害。
こうして事件の幕は開けたがなぜ真犯人は海老沢氏を殺害出来たのか?
「黒木さん。海老沢氏は夜中に他人を招き入れますか? 」
人にもよるので断定はできないが普通はあり得ない。
「いいや。奴は慎重だったよ。自分が詐欺の片棒を担いでるのを理解してるからな。
なるべく知らない奴とは関わらないようにしていたな。それは千田も雑見も一緒だ。
まあミサは男漁りに夢中で気にする素振りもなかったがな」
さすがは愛人関係にあっただけあってミサさんのことは詳しい。
まるで監視してるかのよう。束縛男は嫌われるぞ。
「密室で鍵も部屋の中。どのように犯行に及んだと思いますか? 」
「うーん。考えたこともなかったな」
当事者なんだから少しは考えろよな。
「ではガイドさんはどう思われますか? 」
黒木では話にならない。ガイドさんなら私の質問に真剣に答えてくれるはず。
「それはもちろんお隣の部屋から侵入したとしか…… 」
「そう確かに鍵は二号室の鍵でも開きますからね」
「ちょっと待ちなよ! マスターキーがあれば入れるだろ」
小駒さんはやはり鋭い。ガイドさんたちを疑っているのか?
「その件ですが確かにマスターキーを入手すれば可能でしょう。
しかしそれは我々の出現で不可能となりました。
第一の事件の時なぜかガイドさんたちの部屋にお邪魔。
偶然にも四人のアリバイは成立してしまいました。
本来なら二人は別々の部屋。アリバイなど成立せず一番疑れていたでしょうね」
「はい確かにその通りです」
「まったくあなた方には驚かされます」
ガイドさんに続いて料理人も沈黙を破る。
「おい。そんな雑なアリバイありか? 」
黒木が吠える。
「そうさ。かわいそうだけどまだ完全に疑いが晴れた訳じゃないからね。
単独犯だって共犯にだってなれる。そうだろ木偶の坊? 」
「うん…… どうかな」
「聞こえないよ! はっきり喋りな! 」
耳が遠いのを相棒の滑舌のせいにする困ったお婆さん。
「ううん。うん? 」
「もういいよ! 」
相棒が引きずりだされるが残念ながら何も考えてない。
「うん僕もそう思う」
仕方なく同意する始末。
「ちょっと待ってください皆さん。私がどうやって? 」
同情を買うように大げさに手で顔を覆う。
これは雲行きが怪しくなってきたな。
確かにガイドさんの疑いをここらで完全に晴らさなければ今後も疑われたまま。
「だってあんた第一発見者じゃないか。殺してそのまま叫べば密室の完成だろ? 」
不運なことにすべての事件の第一発見者になった。
それだけにとどまらず疑われる。
「思い出してください皆さん。なぜ彼女が第一発見者になったのかを? 」
二日目の朝のことです。確か我々はまだこのドスグロ山が薄曇り山だと勘違い。
若奥さん役のミサさんに旦那さんを呼ぶようにお願いしたはず。
だがなぜかその時メイド役のガイドさんが代わりに呼びに行った。
そのせいで彼女が第一発見者になった。これは偶然に過ぎない。
我々が勘違いしたままなのも紛れ込んだのも呼んだのもただの偶然。
それ以上でもそれ以下でもない。これは犯人がどうこう出来ることではない。
イレギュラーな出来事だった。
「そうか。そう言えばすぐだったね悲鳴が上がったのはさ」
小駒さんが思い出してくれた。
「そう。だからこの短い間では撲殺は不可能。
私たちが駆けつけた時にはもう息もなく冷たくなっていた。
ここから導き出される答えはガイドさんが真犯人ではないと言うこと。
もちろん何らかの共犯の可能性も残されてますがかなり薄いかと」
ガイドさんを必死に擁護する。
「おいおい! 第一発見者だぜ? しかもすべてのと来てやがる。
これはどう見たってガイドさんが怪しい」
目の前に自分を襲った真犯人がいるのになぜかガイドさんに不信感を抱く黒木。
彼にとってみれば真犯人などどちらでもいい。自分が助かることが大事。
真犯人が潔く認めればガイドさんだって下手に疑われはしなかった。
「いいんですか? あなたのせいで何の罪もないガイドさんが犯人にされても。
止められるのはあなただけだ。もう充分ではないんですか? 」
真犯人は俯いたまま何も発することはない。
真犯人を見誤ったか? 出来れば自ら罪を認めてもらいたい。
私の手によってすべての真相が明かされる前に。
続く
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