99 / 122
ドスグロ山を知り尽くした男
しおりを挟む
時刻は夜九時。
懸命な作業により土砂が取り除かれドスグロ山への道が開く。
これにより通行止めは解除された。
あれから一日が経った。
本来なら今日中にドスグロ山に辿り着けていたはずなのに。
いくら先生の指示とは言え訳が分からない。
「どう思います? 」
「俺に聞かれてもなあ…… 事件が解決するんじゃないか」
いい加減なことを言う。
「それはないですよ。大きな事件を一度も解決したことのない明後日探偵ですから」
断言する。先生たちの手に掛ればどんな事件も迷宮入りさせられる。
真犯人にとって頼りになる存在。
「そこまで言わなくてもいい。信じてないのか? 」
「ですから信じる信じないではなく今までの実績から不可能だと言ってるんです。
今回のドスグロ山事件は難事件だと聞きましたが」
丁度いい男に出会えた。今回のバス旅行の運転手。
「探偵なんだろ? 凄いじゃないか」
彼は探偵について誤解してる。特に先生がどう言う人間か分かってない。
一度だってまともに依頼人の元に辿り着いたことがない稀有な人物。
これが一人なら百歩譲って許せるが相棒と二人で辿り着けないのだ。
これではどうしようもない。笑えると言うか呆れ果てると言うか。
「僕だって最初の頃はそう思っていました。
ですが依頼人の元に辿り着けない者に難事件が解決出来る訳がない。
先生はそのせいで依頼料を棒に振るし逆に損害賠償を請求されることも度々。
その時は我々の力ではどうにもなりませんから大家さんの財力でカバーします」
「大家さん? 」
「はい。我々のような者を受け入れてくれる探偵ビルの大家さん」
「言ってることは分からないけどまあいいや」
「いいですか明後日探偵に幻想を抱くのは危険です」
酔いが回って来た。
「はあ…… それで? 」
合いの手を入れる運転手。
「いいですか? 明後日探偵の目標は依頼人の元に辿り着くことなんですよ?
『探偵はいつか依頼人のいる現場に辿り着くことが出来るか』
こんなふざけた探偵どこにもいませんって」
「それは難儀な。俺には関係ないけどね」
「ああ済みません。僕だけ話す形になってしまって」
「いや強烈なエピソードを聞いてると飽きないから。続けて続けて」
「聞いてる分にはいいですよ。でも実際関わると地獄」
またしても余計なことを。あまり自分のことを話したがらないものだから。
ついつい愚痴をこぼしてしまう。
「そうだ。あなたも迷ったりやられたりしたことは? 」
「うーん。俺はないけど息子だったら女に騙されたな」
「綺麗な人? 」
「ああ俺もつい先日実際に会ったからよく分かる。あれは騙されちまうわ」
「それで泣きついてきた? 」
「いや自分で後始末を着けたよ。今どこにいるやら」
そう言うと寂しそうに上を見る。
「女は怖いですね」
「ははは…… そうだな。俺もそう思う」
「ああ事件事件! 情けない先生の為にもご協力ください」
「被害者は確か四人。誰かまではちょっと…… 」
さすがに詳しい情報がなければ無理か。
「お客について気になることは? 」
「うーん。別によくいる観光客さ。俺も立場があるから悪く言えない」
「何でもいいのでお願いします。この通り」
頭を下げ必死に粘る。
「分かったよ。言える範囲でな。目つきの悪いのが何人かいたな。
それからこの旅には珍しい若くて綺麗な姉ちゃんがいたな。彼女はたぶん…… 」
「もうそればっかり! 」
「いや気になって気になって仕方がない。あれは男が放っておかないよ。
君なんかイチコロ。尻の毛までむしり取られるさ。気をつけな」
「それはもういいですって! 」
「だったらうちのガイドはどうだい? 若くて可愛くて俺にも優しい」
「だからそうじゃなくて。事件に関係することを教えてください」
「と言っても詳細が分からないとどうにも」
「誰も覚えてないんですか? 頼りないなあ」
「待てよ。ちゃんと十人は把握してる。お客様だぜ」
「では一人ずつ特徴を」
「まず一人目はせっかちな爺さん…… 」
男から情報を得る。
「そうだ。オーナを知りませんか? 」
「オーナーってあのドスグロ山ホテルの? さあな見かけないな。
一度も会ったことがないよ俺は」
「まずい明日早いんだった! 」
早朝にドスグロ山へ行くことに。
「ああもうこんな時間か。よし俺も寝るわ。寝坊するなよ」
こうして男と別れることに。
翌朝。男の運転するバスでドスグロ山を突破する。
目的地はドスグロ山ホテル。
続く
懸命な作業により土砂が取り除かれドスグロ山への道が開く。
これにより通行止めは解除された。
あれから一日が経った。
本来なら今日中にドスグロ山に辿り着けていたはずなのに。
いくら先生の指示とは言え訳が分からない。
「どう思います? 」
「俺に聞かれてもなあ…… 事件が解決するんじゃないか」
いい加減なことを言う。
「それはないですよ。大きな事件を一度も解決したことのない明後日探偵ですから」
断言する。先生たちの手に掛ればどんな事件も迷宮入りさせられる。
真犯人にとって頼りになる存在。
「そこまで言わなくてもいい。信じてないのか? 」
「ですから信じる信じないではなく今までの実績から不可能だと言ってるんです。
今回のドスグロ山事件は難事件だと聞きましたが」
丁度いい男に出会えた。今回のバス旅行の運転手。
「探偵なんだろ? 凄いじゃないか」
彼は探偵について誤解してる。特に先生がどう言う人間か分かってない。
一度だってまともに依頼人の元に辿り着いたことがない稀有な人物。
これが一人なら百歩譲って許せるが相棒と二人で辿り着けないのだ。
これではどうしようもない。笑えると言うか呆れ果てると言うか。
「僕だって最初の頃はそう思っていました。
ですが依頼人の元に辿り着けない者に難事件が解決出来る訳がない。
先生はそのせいで依頼料を棒に振るし逆に損害賠償を請求されることも度々。
その時は我々の力ではどうにもなりませんから大家さんの財力でカバーします」
「大家さん? 」
「はい。我々のような者を受け入れてくれる探偵ビルの大家さん」
「言ってることは分からないけどまあいいや」
「いいですか明後日探偵に幻想を抱くのは危険です」
酔いが回って来た。
「はあ…… それで? 」
合いの手を入れる運転手。
「いいですか? 明後日探偵の目標は依頼人の元に辿り着くことなんですよ?
『探偵はいつか依頼人のいる現場に辿り着くことが出来るか』
こんなふざけた探偵どこにもいませんって」
「それは難儀な。俺には関係ないけどね」
「ああ済みません。僕だけ話す形になってしまって」
「いや強烈なエピソードを聞いてると飽きないから。続けて続けて」
「聞いてる分にはいいですよ。でも実際関わると地獄」
またしても余計なことを。あまり自分のことを話したがらないものだから。
ついつい愚痴をこぼしてしまう。
「そうだ。あなたも迷ったりやられたりしたことは? 」
「うーん。俺はないけど息子だったら女に騙されたな」
「綺麗な人? 」
「ああ俺もつい先日実際に会ったからよく分かる。あれは騙されちまうわ」
「それで泣きついてきた? 」
「いや自分で後始末を着けたよ。今どこにいるやら」
そう言うと寂しそうに上を見る。
「女は怖いですね」
「ははは…… そうだな。俺もそう思う」
「ああ事件事件! 情けない先生の為にもご協力ください」
「被害者は確か四人。誰かまではちょっと…… 」
さすがに詳しい情報がなければ無理か。
「お客について気になることは? 」
「うーん。別によくいる観光客さ。俺も立場があるから悪く言えない」
「何でもいいのでお願いします。この通り」
頭を下げ必死に粘る。
「分かったよ。言える範囲でな。目つきの悪いのが何人かいたな。
それからこの旅には珍しい若くて綺麗な姉ちゃんがいたな。彼女はたぶん…… 」
「もうそればっかり! 」
「いや気になって気になって仕方がない。あれは男が放っておかないよ。
君なんかイチコロ。尻の毛までむしり取られるさ。気をつけな」
「それはもういいですって! 」
「だったらうちのガイドはどうだい? 若くて可愛くて俺にも優しい」
「だからそうじゃなくて。事件に関係することを教えてください」
「と言っても詳細が分からないとどうにも」
「誰も覚えてないんですか? 頼りないなあ」
「待てよ。ちゃんと十人は把握してる。お客様だぜ」
「では一人ずつ特徴を」
「まず一人目はせっかちな爺さん…… 」
男から情報を得る。
「そうだ。オーナを知りませんか? 」
「オーナーってあのドスグロ山ホテルの? さあな見かけないな。
一度も会ったことがないよ俺は」
「まずい明日早いんだった! 」
早朝にドスグロ山へ行くことに。
「ああもうこんな時間か。よし俺も寝るわ。寝坊するなよ」
こうして男と別れることに。
翌朝。男の運転するバスでドスグロ山を突破する。
目的地はドスグロ山ホテル。
続く
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる