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ヒーロー
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相棒の疑いも晴れ残るは山田さんのみとなった。
ドスグロ山の雷人の正体は果たして本当に山田さんなのか?
もちろん消去法で彼を真犯人に仕立てあげるつもりはない。
ここは小駒さんに動いてもらう。
「分かったよ。やればいいんだろ? ほら手を見せな」
だが山田さんは決して動こうとも見せようともしない。
「地蔵じゃないんだからさ。最後の確認をさせておくれよ我がヒーロー」
英雄扱いする小駒さん。
それに同調するかのように龍牙に奈良にマジシャンが拍手しながら近づく。
どう言うことだ? 確かに復讐を果たした英雄かもしれない。
しかし四人も殺害した凶悪犯なんだぞ? あまりに軽率。
「ちょっと皆さん。いくら何でも英雄扱いは頂けない」
「いいじゃないかい。実際私らからしたら英雄さ。
この黒木を追い詰めたのもそう。爽快だったね。
私は嬉しいよ。こいつら悪党に裁きが下ったことでどれだけ勇気づけられたか。
黒木に同情する者はいないさ。惨めなもんだね」
「何だとこの! 婆さんだから大目に見てやがったがもう許せない! 」
凄む黒木に睨む怖いものなしの小駒さん。
「まあまあ二人とも落ち着いて。今は真犯人の時間ですよ。
大人しく告白を聞きましょう」
「だってよ探偵さん…… 」
黒木ももう我慢の限界。それに山田さんは黒木にとってみれば自分を襲った張本人。
これでは黒木だって我慢出来るはずがない。
「もう許せねえ! 山田っておっさんもそれに味方する外道も! 」
興奮状態。自分たちを襲った真犯人が目の前。
暴力に訴えるのも仕方がないこと。
「外道はお前だろが! 」
「そうだ! お前が言えるか! 」
小駒さんと奈良が反応。
一触即発状態。
「はい落ち着いて。また縛り付けますよ黒木さん」
「くそ! 何で俺ばかり…… 」
そう言うと大人しくなる。
黒木はまだ理解できてない。ここには犯罪被害者の会のメンバーがほとんど。
田中さんだって元カレとは言え恨みは計り知れないはず。
黒木に味方する者など皆無。
「皆さん落ち着いてください。探偵さん続きをお願いします」
この中で唯一中立なガイドさんが宥める。
「では山田さん。手を見せてください」
「はい。ですがこれは…… 」
彼の言い訳は確か野球をしていて手を痛めたとのこと。
「あなたは本当に野球で手を? それとも自らの手で傷つけた? 」
絆創膏を剥がす。
ただこれではどちらか判断がつかない。
「あなたがゴルフで傷つけたと言ったら疑わなかったかもしれない。
ですがなぜか無難なゴルフではなく野球を選んだ。なぜなんですか? 」
「どうしても何も…… 私は本当に野球で…… 」
まだ認めようとはしない往生際の悪さ。
さすがは連続殺人犯。恐ろしく冷静だ。
「ではオーンズの監督は? 選手は? ファンなんですよね? 」
「それは…… 」
「ほら答えられない。あなたは野球に興味がないんだ。
球場に足を運んだことさえないでしょう」
「何を言ってるんです。地方でも映りますよ。だから応援だって…… 」
「だったら選手一人でも言えますか? 」
「佐藤…… 」
自信無さげに答える。
「ポジションはどこですか? 」
「そんなの知らない! 私は詳しくないんだ」
「見てるんでしょう? ファンなんですから」
「それは詳しくなく…… 始めたばかりだからあまり良く分からなくて」
山田さんはどうにかいい逃れようとするが逃がしはしない。
「もう結構です! あなたはゴルフにすべきだったんだ。
でもやっぱり答えられないんでしょう。それを恐れたから野球に」
山田さんは恐らくスポーツにまったく興味がない真面目なタイプ。
一度もやったことのないスポーツの選手や監督が出てくるはずがない。
「最後にチャンスを与えます。あなたのお気に入りオーンズは去年何位でしたか?」
これならば六分の一の確率。ただ知らなければそれさえも分からないが。
「一位…… いや三位ですかね…… 」
「ファイナルアンサー? 」
「二位。たぶん二位でした。はい」
汗を拭う回答者。
答えは野球雑誌にでも載ってるだろう。
「惜しい! 五位です」
「ううう…… 」
「すべての罪を認めますか? 」
「ちょっと待ってください。白状します。確かに雑見を殺しました。
あいつが鑑定した石はまったくの偽物。ただのクズダイヤだったんです。
話をしてるうちにかっとなってつい壺を手に取りこのような結果に。
加減も良く分からず死んだと思ったが生きてたみたい。
これが私が真犯人じゃない証拠。他の殺人は私ではありません」
真犯人山田さんはまだ言い逃れようとしている。
では直接対決と行きますか。
続く
ドスグロ山の雷人の正体は果たして本当に山田さんなのか?
もちろん消去法で彼を真犯人に仕立てあげるつもりはない。
ここは小駒さんに動いてもらう。
「分かったよ。やればいいんだろ? ほら手を見せな」
だが山田さんは決して動こうとも見せようともしない。
「地蔵じゃないんだからさ。最後の確認をさせておくれよ我がヒーロー」
英雄扱いする小駒さん。
それに同調するかのように龍牙に奈良にマジシャンが拍手しながら近づく。
どう言うことだ? 確かに復讐を果たした英雄かもしれない。
しかし四人も殺害した凶悪犯なんだぞ? あまりに軽率。
「ちょっと皆さん。いくら何でも英雄扱いは頂けない」
「いいじゃないかい。実際私らからしたら英雄さ。
この黒木を追い詰めたのもそう。爽快だったね。
私は嬉しいよ。こいつら悪党に裁きが下ったことでどれだけ勇気づけられたか。
黒木に同情する者はいないさ。惨めなもんだね」
「何だとこの! 婆さんだから大目に見てやがったがもう許せない! 」
凄む黒木に睨む怖いものなしの小駒さん。
「まあまあ二人とも落ち着いて。今は真犯人の時間ですよ。
大人しく告白を聞きましょう」
「だってよ探偵さん…… 」
黒木ももう我慢の限界。それに山田さんは黒木にとってみれば自分を襲った張本人。
これでは黒木だって我慢出来るはずがない。
「もう許せねえ! 山田っておっさんもそれに味方する外道も! 」
興奮状態。自分たちを襲った真犯人が目の前。
暴力に訴えるのも仕方がないこと。
「外道はお前だろが! 」
「そうだ! お前が言えるか! 」
小駒さんと奈良が反応。
一触即発状態。
「はい落ち着いて。また縛り付けますよ黒木さん」
「くそ! 何で俺ばかり…… 」
そう言うと大人しくなる。
黒木はまだ理解できてない。ここには犯罪被害者の会のメンバーがほとんど。
田中さんだって元カレとは言え恨みは計り知れないはず。
黒木に味方する者など皆無。
「皆さん落ち着いてください。探偵さん続きをお願いします」
この中で唯一中立なガイドさんが宥める。
「では山田さん。手を見せてください」
「はい。ですがこれは…… 」
彼の言い訳は確か野球をしていて手を痛めたとのこと。
「あなたは本当に野球で手を? それとも自らの手で傷つけた? 」
絆創膏を剥がす。
ただこれではどちらか判断がつかない。
「あなたがゴルフで傷つけたと言ったら疑わなかったかもしれない。
ですがなぜか無難なゴルフではなく野球を選んだ。なぜなんですか? 」
「どうしても何も…… 私は本当に野球で…… 」
まだ認めようとはしない往生際の悪さ。
さすがは連続殺人犯。恐ろしく冷静だ。
「ではオーンズの監督は? 選手は? ファンなんですよね? 」
「それは…… 」
「ほら答えられない。あなたは野球に興味がないんだ。
球場に足を運んだことさえないでしょう」
「何を言ってるんです。地方でも映りますよ。だから応援だって…… 」
「だったら選手一人でも言えますか? 」
「佐藤…… 」
自信無さげに答える。
「ポジションはどこですか? 」
「そんなの知らない! 私は詳しくないんだ」
「見てるんでしょう? ファンなんですから」
「それは詳しくなく…… 始めたばかりだからあまり良く分からなくて」
山田さんはどうにかいい逃れようとするが逃がしはしない。
「もう結構です! あなたはゴルフにすべきだったんだ。
でもやっぱり答えられないんでしょう。それを恐れたから野球に」
山田さんは恐らくスポーツにまったく興味がない真面目なタイプ。
一度もやったことのないスポーツの選手や監督が出てくるはずがない。
「最後にチャンスを与えます。あなたのお気に入りオーンズは去年何位でしたか?」
これならば六分の一の確率。ただ知らなければそれさえも分からないが。
「一位…… いや三位ですかね…… 」
「ファイナルアンサー? 」
「二位。たぶん二位でした。はい」
汗を拭う回答者。
答えは野球雑誌にでも載ってるだろう。
「惜しい! 五位です」
「ううう…… 」
「すべての罪を認めますか? 」
「ちょっと待ってください。白状します。確かに雑見を殺しました。
あいつが鑑定した石はまったくの偽物。ただのクズダイヤだったんです。
話をしてるうちにかっとなってつい壺を手に取りこのような結果に。
加減も良く分からず死んだと思ったが生きてたみたい。
これが私が真犯人じゃない証拠。他の殺人は私ではありません」
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では直接対決と行きますか。
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