ドスグロ山の雷人伝説殺人事件 

二廻歩

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結論

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「それがどうした! 」
ついに我慢しきれなくなった山田さんが吠える。
「山田さん…… 」
「失礼。つい声を荒げてしまいました。大丈夫。続けてください」
一瞬本性を現しかけたがどうにか冷静さを取り戻した。

「そう黒木さんが怪しかろうが詐欺師だろうが殺す必要はありません。
なぜなら宝石を売ったのは千田氏であり鑑定したのは雑見氏なんだから。
このことについてどう言い逃れする気ですか? 」
追い詰める。
「だから…… 」
「それにおかしいんですよ。なぜあなたは雑見氏を殺害出来たんです? 
確かあなた直前まで閉じ込められていたはずですよね? 」
ううう…… 
またも黙ってしまう。

「言えませんか? それは私が推理したトリックを使ったからに他ならない。
ただそのことを言えば連続殺人犯にされてしまう。だから口が裂けても言えない。
しかし雑見氏の殺害を認めてしまった。それでは不可能殺人をしたことになる。
マジシャンにでも弟子入りしましたか? 」
返す言葉もない様子の山田さん。矛盾を指摘されれば黙るしかないか。
だが雑見氏を殺害したと自供したのだからもう遅い。墓穴を掘ったことに。

すべての事件が実行可能なトリックを使い部屋を密室にした。
それなのに一件だけを認めるのはあまりに不自然だ。
中途半端に認めればその隙を突かれることに。
完璧な計画だと思っている真犯人には思いもよらないことだろう。
「どうします山田さん。第三の事件だけ認めますか? 
ですが他の事件もあなたが使ったトリックなら犯行可能に」
首を振り抵抗するが虚しいばかり。

「もういいよ山田さん。あんたよくやったよ」
小駒さんが説得。それに龍牙さんが続く。
「そうですよ。私たちの為によくやってくれました。感謝しても感謝しきれません」
「ふざけんな! 早く認めやがれこのサイコ野郎! 」
黒木を除き好意的に受け止められている。
「皆さんもそう言ってますしどうです? 」
「その…… 」
「山田さん! 」
まだ決心がつかないらしい。

「分かりました。消去法を採用しましょうか? 」
本来ならこんな手は使いたくなかった。
だが明らかな連続殺人な訳で。ホテルには我々を含めても十人。
その中で我々と従業員合わせて四名はすべての犯行を行うのは不可能。
小駒さんも第一、第二の事件ともに不可能で体力的にも難しく除外。
龍牙と奈良は共謀すれば可能だが第一、第二で鍵が現場に残されたことから除外。
マジシャンも同様に無理だがイリュージョンを使えば不可能ではないかもしれない。
ただそれではミステリーと呼べないので一旦除外。
残るは黒木だが第一の事件でどう立ち回るかが難しい。
少なくても山田さんの目を盗み侵入するなり戻るなりしなければいけない。
その上ミサさんもいるかもしれないのだ。当然海老沢氏を起してもいけない。
想像以上に犯行は難しくしかも犯人が使ったトリックは第一の現場では使えない。
なぜならその朝は皆が集合していたから。
私も彼の顔を見ている。あの凶悪な顔は印象に残る。

観客よりもやはり役者と言う。二号室の山田さんが結局一番怪しい。
マジシャンも黒木も絶対ではないが不可能に近い。
幸運が生まれる確率は高くない。
黒木など山田さんに襲われてるのだし。
こうして消去法を使えば最後に残った山田さんが第三の殺人だけでなくすべてを。
要するに連続殺人事件の真犯人となる。
いくら現時点で証拠がなくても一つ一つの事実を積み上げれば山田さんに辿り着く。

結論:連続殺人犯ドスグロ山の雷人は山田さんに違いない。
さあどう反論するかな。

「私はやってない…… 」
「ですから何度も申し上げてる通り動かぬ証拠があります。
ダイイングメッセージは山田さんが犯人だと…… 」
「それこそこじつけですよ。山が付いたからと言って直ちに私になる訳じゃない。
違いますか皆さん。黒だった黒木だと? 駒だったら小駒さんだと? 」
「そう言えばそうだな。探偵さん本当にこいつで間違いないのか? 」
今になって不安がる黒木。
「あなた襲われたでしょう? 」
「俺の代わりにあんたの相棒が襲われそうになったからな。そうだとも言い辛くて」
「まったく…… 往生際が悪いですよ山田さん。山が付くのはあなただけだ」
「だから山じゃ分かりませんって。それに私は保志です」
偽名を名乗ったのはこの為? まったくどこまで用意周到な男なのか。
それでこそ倒し甲斐があるというもの。
絶対に罪を認めさせてやる。

                

                   続く
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