ドスグロ山の雷人伝説殺人事件 

二廻歩

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最終回前編 今別

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真犯人の山田さんを確保。
こうして悪夢のバス旅は終わりを迎えることに。

食堂室(旧レストラン)
「はい全員集まりましたね。一旦下山します」
偉そうな刑事が仕切る。どうやら本件の責任者らしい。警部だとか。
現場検証の邪魔になると判断した警察は車に乗るように指示。
小駒さんを先頭に引っ張られていく。
「俺らは何もしてねえよ! 」
黒木が不満の声をあげる。
「いいから来い! 」
刑事は意に介さない。
騒々しい黒木が姿を消す。

「おい! 真犯人はこいつで間違いないんだな? 」
随分横柄な態度。田舎の刑事の癖に。警部だからって上からものを言いやがる。
「はい。この山田さんです」
警察に身柄を引き渡す。
ようやくこれで肩の荷が下りる。

「先生。これで一件落着ですね」
「ああ君にも心配を掛けたみたいだね」
「そうですよ先生。ちっとも来ないんだからもう…… 」
愚痴は後で聞く。今は刑事さんに状況説明する時。
「そうだお前らどうする? 」
予定では全員下山し落ち着いてから関係者に話を聞くことに。
「私たちは現場検証に立ち会おうかと思います」
「もちろん僕も。今到着したばかりだから帰れません」
「よしだったらお前らは協力しろ。まず第一の事件から説明してもらおうか」
刑事が引っ張って行こうとする。

「待ってください刑事さん! 真犯人である私からお話するのが良いでしょう」
山田さんも残ると言う。
「おいおい! 勝手を抜かすな! 」
「いいんですか? 早く終わらせたいんでしょう? 」
刑事のやる気の無さを感じ取ったようだ。
「いや俺はそんなことない。この事件に興味がある。だが他の奴らは疲れてる。
こんな田舎で連続して事件が発生したんだからな。
まあいいや。話したければ勝手にしろ! 手短に頼むぞ」
投げやりの警部。

「他の方はどうされてますか? 」
「いちいち細かい真犯人様だな。従業員二人には残ってもらう。
客はやはり一旦下山してもらうことにしたぜ。今迎えの車に案内してるところだ」
警察車両とバスが見えた。
「あれバスも? 」
「先生は初めてですよね? 皆さんこのバスに乗って来たんですよ。
運転手と仲良くなって色々お話を聞いたんです。それから…… 」
ストップ! 話が長引きそうなので一旦止める。
刑事さんがイライラし始めている。これは気をつけなくてはいけない。
助手はまったく気にしてない様子。良い性格してるよ。

「よしまずは第一の事件から」
やることは真犯人からの聞き取りと推理を混ぜたもの。
楽と言えば言い過ぎだがもう事件は解決してる。
時間が許す限りゆっくりすればいい。
もう誰も殺される心配がないのだから。
そんな緩んだ状況で悲劇が起ころうとしている……

「では探偵さん。そろそろお話しましょうか」
山田さんはさっきの続きをしてくれるそうだ。
「どうします刑事さん? 」
山田さんがひた隠しにしていた秘密が今明かされようとしている。
「おいおい! いい加減にしろよな。こっちは忙しいんだから」
刑事は面倒だと言わんばかりの態度。ため息を一つ吐く。
「探偵さん約束でしたよね。刑事さんにも重要なこと。
今回の事件にも関係があります。どうか静かに聞いてください」
「分かった。まったく何なんだこいつは? 犯人の癖に。
まあいいや。だったらとっとと始めやがれ! 」
許しを得る。

さあこれでいい。
「ではもう一度質問します。なぜ雑見氏を殺害したのですか? 」
「うーん」
山田さんはなぜか時間稼ぎをする。まるで焦らすかのように。
「山田さん! 早くお願いします! 」
「なぜ…… やはり詐欺仲間でそれなりの立場にいるからですかね」
「はあ何を言ってやがる! 俺にも分かるようにはっきり答えろ! 」
呆れる刑事。
確かにここまで来てまだ隠しているような感じは納得できない。
「黒木さんも出て行かれました。もういいではありませんか」
条件を満たし本人の希望で話す機会を与えたのに一体何を迷っているのだろう?

「その…… 」
止めろ!
外から男の叫び声。
一体何が起きている?

ドスグロ山は天候が回復し小雨がぱらつく程度。
まるでドスグロ山の雷人が祝福しているかのよう。

「おいお前ら。大人しく乗ってもらおうか」
小駒さんたち五人は警察車両二台に分けて乗せられる。
「止めろ! 触るな! 」
黒木が抵抗を見せる。
「あんた何を嫌がってるんだい? やっと脱出出来るんだよ」
小駒さんが呆れる。
「うるせい! 婆さんも警察も邪魔なんだよ!
俺はただの被害者だ。警察車両に乗るなんてまっぴらごめんだ! 」
黒木はなおも抵抗する。
「いい加減にしないか! 」
暴れる黒木を見かねて大声を出す若い刑事。
「うるさい誰がこんなのに乗るか! そのまま連行する気だろう? 」
罪が発覚する恐怖から強硬な姿勢を崩さない。
黒木にとってやはり警察は敵。関わりたくないと思うのが犯罪者心理。

「いい加減にしないか! 」
「俺が何をした? ふざけるな! 」
「あんた警察に洗いざらい話すと約束したろ。今さら何を? 」
小駒さんが説得だか挑発だかをする。
「あれはそうしないと逃げれそうになかったからで。本気じゃない」
黒木は警察車両には乗らないと駄々をこねる。
それに付き合う刑事も一苦労。

「まったく仕方ない奴だな。だったらどうする気だ? お前歩くつもりか? 」
「バスがあるだろうが! あれに乗って来た。帰りもバスに乗って帰る! 」
「我がままを言うな! 」
どちらも引かずに押し問答に。

「お前らに俺を拘束する権利はないだろう? 」
「確かに…… だが安全にお前たちを下山させる義務がある」
「だったらバスでも良いだろうが。違うか? 」
「勝手にしろ! 」
刑事の方が折れる。
黒木は被害者或いは関係者なだけなのだから強くは当たれない。
証言を拒否されても厄介。

「へへへ…… ようやく理解してくれたようだな刑事さん」
そう言うと黒木はバスへ。


                 続く
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