永遠のトナラー 消えた彼女の行方と疑惑の隣人

二廻歩

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犯人

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大事件に発展する。いやもうすでに進行中かもしれない。
そんな風に脅しをかけ驚く姿を楽しむ困った同僚。
「事件って例えば? 」
ただの根拠のない妄想。無視しても構わないがあまりに自信満々なので聞くことに。
「失踪したのではなく…… 殺されたとか? 」
警察官のくせに不謹慎な奴だ。これは報告ものだな。

「殺された? 誰に? 」
「だから今の男に決まってるだろ」
同僚の妄想では男が喧嘩してもみ合いになり刺殺したと具体的。
刺殺? 揉めてのことなら鈍器で撲殺では?
いつもの悪ふざけだろうが付き合ってられない。書類整理に戻る。

「おい聞いてるのか? あいつが殺してどこかに埋めた…… 
いや部屋に隠したのかもな。だっておかしいだろ? 
近所に聞き込んでも男は見かけるが女は見ないなど常識ではあり得なくないか? 」
同僚の悪ふざけがエスカレート。
「はいはい」
「きっと殺したその罪悪感から。いや不審に思われないよう工作したに違いない」
もうここまでくるとただの妄想と言うより二時間モノ。
サスペンス好きだもんなこの人。暇になると見てるし。
ただそのおかげで近所の奥様方と話が合うので助かってるが。

「裏のおじいさんが見たと証言してましたよ」
「それはここに引っ越してくる前に近くのショッピングモールでだろ?
 来てから一度も見かけないのは爺さんの証言からも変だと分かるだろ? 」
「そうなんですよね。偶然出会った時は彼女を見た。
しかしそれ以降見てないのは確かに不自然。異常なほどですが…… 」
「どうした何か気になるか? 」
いい加減仕事して欲しいな。この事件に掛かりっきりでいいはずがない。
同僚のやる気が変な方向へ。また迷惑を被ることに。
「彼女さんは人と会うのが苦手で家にずっといるなんてことは? 」
「おいそれはないさ。何の為に引っ越してきたんだ? 」
家から出ないなら敢えて引っ越す必要はまったくない。
だからそれはあり得ないこと。ただ失踪した時期が男の話より前なら不思議はない。

「取り敢えず両親に連絡を取ってみますね」
「ああそうしろ。だが言葉には気をつけろ。ショックでどうなるか分からないぞ」
ただ面白がってるだけの同僚ではない。
それから男の実家にも確認の意味で連絡することに。
やれることはやってから結論を出しても遅くはない。
謎の失踪事件はどのように決着がつくのか?
最悪の事態だけは避けたい。
とは言え男が犯人ならそれもあり得る。
ついに男への疑惑が噴出する。
ただの失踪事件の関係者がいつの間にか容疑者に早変わり。
よくあることだが…… 二時間モノではね。

翌日。
昨日伺えなかったお家へ。
まずは左横田さん。
写真を出して様子を見る。
「はいはい。わざわざ申し訳ありません。あの男が捕まったんですね? 」
警察が来たと大喜びの左横田さん。
どうも勘違いしてる気がしてならない。

「実は現在この方の申し出によりあなた方隣人から話を伺ってるところです」
勘違いされたままでは捜査が進まない。
とにかく誤解を解く。
「ではこの男はストーカー規制法で逮捕されたのではないんですね? 」
早とちりでしたわと笑う。
「はい、ストーカーでも痴漢でもありません。まずそこからご理解願います」
どうやら彼女は男からストーカー被害を受けてると考えてるらしい。
警察が来たものだから都合よくストーリーを作り上げたのだろう。

「それで彼女の行方に心当たりありませんか? 」
「あの人。彼女が居たのにストーカーしてたのね。信じられない! 」
勝手に話を作ってしまう。
「ですからご存じないかと? 」
「知るはずないでしょう! この人誰よ? 」
怒り狂う左横田さん。
「だからこの方の彼女さんですよ。ご存じない? 」
ここから始めるのかよ。まったく困ったな。
「この人ですか…… さあ見かけた覚えはありませんね。
私一度見かけたら性別に関わらず覚えてますので。ほほほ…… 」
「執念深いと? 」
「はい? 何か言いました? まったく不愉快だわ! 」
うわ…… 怒らせたかな? 仕方がないここは早く済ますか。

「それでお話ついでにお部屋も見せて頂きたいのですが」
「まさか冗談ですよね? 私女性なんですが」
確かにそこは気を使うべきところ。私だって本当は嫌なんだけどな。
「ダメじゃない! お巡りさんを困らせては」
見かねたお母様が遮る。
「もうお母さんは黙ってて! 」
「お茶も出さずに。お巡りさんを困らせないの! 」
「まあまあお二人とも落ち着いてください」
興奮状態では真偽不明の偽情報を掴まされることになる。
特に勝手に話を作り上げる娘さんには要注意だ。

                続く
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