永遠のトナラー 消えた彼女の行方と疑惑の隣人

二廻歩

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告白

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アトリ計画。来年発表予定の人類の希望となるもの。
社長以下数名しか詳細を知らない極秘プロジェクト。
具体的には何一つ。ただ最終報告書で全容は知れ渡ることに。
書類に目を通しただけの俺では到底理解できない代物。

前田さんの挑発に乗る形で上司は自ら機密情報をぶちまける。
だがそれは同時に俺も知らない事実が浮かび上がることに。

「先月こいつから話があったんだ。酷く振られたと。しかも同棲寸前にだ。
可哀想だと思い話を聞き力になってやろうと現在開発中の商品を試した。
そして最終的に社内モニターにまで選ばれた訳だ」
「はあ? 何を言ってるんですか? 」
これはどう言うことだ? 俺の為に? まさか信じられない。
上司の告白によればトワに振られおかしくなった俺を慰めようと試作品を。
まさかいくら社員だからって人体実験のようなことをするとは信じられない。
会社のモラルが問われることに。

「何でそんなことを? 俺は望んでいない! 」
「望んでない? 嘘を吐け! お前の願いを叶えたんだぞ? 」
「俺の願い? 」
俺はあの時一体何を願ったんだ? トワともう一度やり直すだとしてもおかしい。
そもそもこの上司は追い詰められて勝手に話を作ってるのでは?
上司に泣きついたとでも? だからって新商品でどうにもなるものでもない。
仮にすべて真実だとしてもそれが何だと言うんだ?
アトリは戻ってこないじゃないか。

俺は元カノのトワではなく現在同棲してるアトリを探してるんだ。
しかも先月は関係ない。
彼女が消えたのは今月に入ってから。
どうしてアトリを誰も探してくれないのだろう?
俺が仮に狂っていたとしてもそれでもアトリは存在する訳で。
アトリは一体どこへ行ったと言うんだ?

「すべてはお前の為さ。元々そのような人の為のもの」
上司は丁度いいと試作品を装着させ変化を見守った。
そして正式なモニターにまで選ばれた。
ここまではどうにか理解出来るんだが俺には装着感がない。
中間報告ではそのことも報告したが上司たちはそれを喜んでくれた。

「うむ。それでどのようなものなのじゃ? 」
爺さんが興味を示す。
「それが実は…… 」
説明出来るなら包み隠さずに話してるさ。
「申し訳ないがそれは企業秘密ですのでお答えできません。
とにかく彼にはモニターとしてよくやってもらいました」
勝手に話を遮る上司。
「そう言わずに。今着けてるのであろう? 」
興味津々のお爺さん。まさかモニターになる気か?

「おいおい! 俺は奴が付けていた姿を見て無いぜ」
「ブブンカも見て無いよ」
前田さんもブブンカも銭湯仲間。
当然裸の付き合いをしてる訳で。だから見ているはずだ。
「それはおかしいですね」
お巡りさんも不思議がる。

「今でもその試作品は着けてるのであろう? 見せてみい」
爺さんの強引さにやられそうになる。
「それが俺にはさっぱりで…… 」
「お前には悪いが今月になって外しておいた。
だからここにはないし装着もしてない。
だから残念だが試作品を見せられない。企業秘密だからな。
どうしても知りたければ来年発売されるだろうからそこまで待ってもらいたい」
上司は会社に忠誠を誓っている。
だからこれ以上は無駄だと主張する。
装着感もなく今は取り外されている。
これではどうすることも出来ない。

「ここまで迷惑を掛けたのは自覚している。
すべては可愛い部下の為。もし何もしなかったら塞ぎこんだかもしれない」
上司は俺を思ってやったこと。咎めるなど出来ない。
教えてくれても良かったのにな。
「いいか。逆恨みをしたかもしれない。ストーカーに変貌したかもしれない。
力になってやろうと夢を見させてやったんだ。
だってそうだろ? こいつのは話を聞けばフィギュアが原因。
別れたと悟られずに恋人と楽しく同棲を続けていると思わせられれば心が安定。
仕事にも身が入ると思ったんだ」

上司の優しさがようやく伝わって来た。
自分勝手で人任せな上におしぼりをどこにでも投げる最低人間だと誤解していた。
今の今まで上司のことを完全に誤解していた。
もしかしたら理想の上司なのかもしれない。

「ただこの試作品にも弱点と言うか欠点があってな。
効き目が強すぎたことで思い込みが激しくなり現実と妄想の区別がつかなくなった。
狂ってしまった。これはすべて俺のせいだ。
本来だったら別れたことに自然と気づき次の恋へ」
新商品にはとんでもない欠点があるそう。
ただ俺にはいまいちピンと来てない。

               続く
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