ジミート チート神を探して神々の森へ 追放されし三人の勇者故郷を救え!

二廻歩

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崩れ去った希望

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ドコダシティーを離れる。

「兄貴? 兄貴? 兄貴ってば? 行きますよ! 」
パックが促す。

「ああ、そうだな…… 」

「急ぐぞ! ヒック。へへへ」
モッタを先頭に歩き出す。

プラスティ―が甘えた声で囁く。

「ねえ、あなたの部隊ってどうなってるの? 詳しく教えてお願い! 」
「うへへ。教えてやらんでもないが…… 」

「いいでしょう? 」
「ええ、面倒臭いなあ。分かっだ。教えてやるだ」

モッタは頼られることがなかったのだろう。あっさり承諾。

「一回しか言わねいぞ! 」

「まずリサイクル卿が率いるのが本隊。
要するにリサイクル卿は本隊長。その部下が俺らだな。
だいたい五十人前後。それと村々からかき集めた男共。その混合部隊」

「第一部隊はコップが率いる。
その下に約二十五人の精鋭。
彼らは常に団結していて他所から集めることは無い」

「第二部隊はSDGs卿が率いる。
約五十名の部隊と村々からかき集めた混合部隊」

「数では本体を凌ぐ。
その為か野心が少しずつ見え隠れしている」

「まだ若くその分考えが浅い。
異常なほど向上心が高く相手を見下す傾向がある。
リサイクル卿とも対立することがしばしば。
その為リサイクル卿と距離を取っている」

「本当に困ったものだと誰かがそう言っていた。
ヒック。以上が我が隊の内情」

いつの間にか酒が復活した。
奇妙なことに残りわずかだったはずの酒が回復。

「それ…… 」
「ああ、これか。ねいちゃんも飲むか? 」
「冗談でしょう! 」 
「へへへ。ちょっと頂いてきたのさ」

抜け目のない奴。酒の補充が目的だったのか?

「しかし暗えなあ。ヒック。
モッタは酒片手にふらつく。

陰に隠れたかと思ったらズボンを下げた。
「ふう気持ちい。ヒック」

「いやあ! 」
プラスティ―が目を瞑る。

「自分も限界。我慢してたんっすよ」
パックもついでに用を足す。

「きゃあ! もう嫌! 」

まったくこの二人は下品で仕方ない。
ホントいいコンビになりそうだ。

プラスティ―の災難は続く。

「こっちに向けないで! 」
逃げ惑う。

「危ないよプラスティ―! 勝手に行ってはダメだ! 」
「そんなこと言ったって…… 」

「早くしまってよ…… 」
「まあまあ。悪気があってやってないから許してやって。自然現象なんだから」

俺もって言ったら怒られるだろうな。
これ以上のショックはプラスティ―には良くない。
我慢。我慢。

歩き出す。

すぐにパックの村が見えてきた。
ここは被害が無いようだ。

「兄貴寄りますか? 」
「いやいい。元々ここは人が住んでいない。攻撃の対象から外れたのだろう」

「爺さんは住んでますぜ」
「ああ、忘れていた。パックの恩人だったな」

パックの命の恩人であり俺にとっての恩人でもある。

「まあ確かにそうっすね。爺は元気かな? 」
「大丈夫さきっと」

「時間が無い急ごう! 」

どこからか火の手が上がった。
遠すぎて限定はできないがサウスドコダの恐れもある。

急げ!
アル―!
待っていろよ!

故郷はもうすぐだ。逸る気持ちを抑え突き進む。

「カン! 」
「兄貴! 」

もうダメなのか?
アル―!

先頭を引っ張る。

早すぎたのだろう。後ろが見えない。声だけが追ってくる。

「待ってください兄貴! 」
「カン! 」
「ヒック。ウイー」

「アル―! 」

ダッシュ!

無事でいてくれ! アル―! 親方! 皆! 

もうすぐだ。 早く! 早く! 
全速力!

限界まで足を上げ手を振る。

「アル―! 」

後ろを振り返るが走ってくる姿は見られない。
独りぼっち。迷子になった気分。
だがもうそんなことはどうでも良い。

始まりの場所へ全速力で駆ける。

サウスドコダ。
もうそろそろのはず。

もう少しと言うとこで足止めを喰らう。

「おい止まれ! 止まらないか! 」

敵か? 味方か? 
男たちが立ち塞がった。

「何をしている? ここの者か? 」
「急いでいる! そこをどけ! 」
「何? どこへ行くと言うのだ? 」
「サウスドコダに決まっているだろ! 」

「はっははっは! もう遅い。
今さっき火を放ったところだ」

「何! 嘘をつけ! 」
「嘘なものか。我々が直接火を放ったんだからな。そうだろ? 」

後ろに数人の人影。

「お前ら! 」
「何だ? やろうっていうのか? 」


三対一。しかも大人と子供。

相手は精鋭部隊の屈強な男たち。

故郷を襲った悪魔。

許せない!
しかしこちらはあまりに不利。

それに後ろには仲間が控えている。
三人だけとは限らないのだ。

震える手を片方の手で掴む。
大丈夫。大丈夫だ!

「かかってこいガキ! 相手してやるよ」

「はっはっは! やれ! やれ! 」
後方から煽り立てる。

仕方なく受けて立つ。

「うわああ! 」
体当たりを仕掛けるがかわされてしまう。

もう一度。
怒りに身を任せ体当たり。

「うおおお! 」
直前で横に動き上手くかわされる。

相手はからかっているのか笑いながら挑発する。

「おいもう一度! 」
「クソ! 」

「フウウ…… ガキを相手にするのも疲れる。
大人しく捕まってもらおうか」

「はっはは! 」
勝ち誇ったように笑い出す。

「うおお! 」
「やれ! 」

ファイヤードリルを取り出し構える。

「どうしたそんな玩具で何ができる? 」
「うるさい! 」
 
ドリルが勝手に動き出す。

ウイーン!
ドリルが突き刺さる。

「何? 血が血が! やりやがったな! 」

容赦なく上から下へ。
「止めてくれ熱い! うわああ! 」

名もなき男はその場に崩れ落ちた。

「まずいぞ! こいつは本物だ」
「引け引け! 」 

慌てて男を残し去っていく。

プラスティ―とパックが駆けつける。

「おーいカン。大丈夫? 」
プラスティ―の言葉に我にかえった。

「これは兄貴が? 」
「ああ…… そうだ! 」

「残酷よ! カン本当にあなたがやったの? 」
「うん…… でも…… 仕方なかった」

震えが止まらない。

「プラスティ―なら…… 分かってくれるだろ?
村の仇。アル―の仇」

「大丈夫よカン。あなたは悪くない」

プラスティ―は優しく慰めてくれた。

「さあ、行きましょう」
「うん…… ありがとう」

震えは自然に治まった。

「兄貴? 」
「急ぐぞ! もうすぐだ! 」

モッタの到着を持たずに先を急ぐ。

                   続く
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