ド・ラボーの地位を得ましたのでさっそく王子様を奪って見せます! 理想の王子様を求めて世界へ

二廻歩

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ムーチャットの愉快な仲間たち

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ぎゃあ!
ぎゃあ!

奇声を上げた召喚獣。翼を羽ばたかせ今にも飛びかかろうとしている。

「わ…… 分かった! 国王には手を出さない。だからその化け物を何とかしてくれ! 」

「ふふふ…… もう遅い…… さあやるのです! 」

「止めてくれ! お願いだ! 俺たちが悪かった! 」

隠れ家を襲撃し国王を亡き者にしようとした蛮行は決して許されるものではない。

「もう遅い。遅すぎるんです。ではごきげんよう」

切れたがガムを誰も止めることはできない。

「そんな…… 」

男たちは一目散に逃げだした。

我先にと倒れた者を踏みつける始末。何と醜いことでしょう。

五分もしないであがった土煙が消え、辺りは静寂に包まれた。


「ガム…… 」

「ははは! ああ! おかしい」

「ガム? 」

「召喚獣って何? いる訳ないじゃない! 」

「えっ? 」

「出任せなのに信じちゃうんだから。本当におかしい」

「出任せって? 」

「この子は召喚獣なんかじゃない。ペガサスなんですよステーテル。餌をあげてるうちに親しくなりまして。
ステーテルにはまだ紹介してなかったですね」

「ふふふ…… ははは…… 」

ガムが笑うのでつい笑ってしまう。

「もうガムったら! 人騒がせなんだから」

どこか怖くもあり頼りにもなる。

ガムの演技力とペガサスの鳴き声で相手を震え上がらせた。

ガムの作戦勝ち。

国王を奪還。


「良いか二人とも以後は気をつけるように」

せっかく助けてあげたのにお礼の一つもせず説教。

確かに後をつけられたことに気が付かず誘ってしまった落ち度はある。

でもそれでも王の命を救ったのは私たち。特にガムだけど。然るべき何かがあってもいいじゃない。


隠れ家は焼き討ちに遭い新たな住処を見つけることに。

人は少ない方がいい。

国王と王女に忠実な部下三名。執事とメイドが同行。

とりあえず仮住まいに魔女のお婆さんの家へ。

「まったく困ったわね。人間を入れるなんて何年ぶりだか」

「人間ではなく国王です! 尊い者です」

「それはもちろん…… 」

国王とも旧知の仲。

良くお邪魔をしていた手前断れないらしく嫌々ながら場所を提供する。

「ではこれで」

森の前で別れる。

魔女の家は森の中と言われているがどこかまでかは知られていない。だからこれでいい。

また後をつけられ家を突き止められたら終わりだ。これ以上の失態は晒せない。

「では行きましょうか」

さあこれからどうしましょう?

考えていても始まらない。

西の川へ。


混乱で食事も睡眠も取れなかった。

お肌にも良くない。

でも仕方ない。非常事態ですものね。

歩き続けて一時間近くになる。もうずいぶん明るくなっている。

「眠いなあ…… 」

「我慢してください。ステーテル」

「でもお腹も空いたし…… 」

この辺には食べ物は見当たらない。レストランも宿もない。困ってしまう。

西の川の上流。

ニッシ―がどこにいるか分からないので川の流れに沿って歩く。

おーい!
おーい!

ちっとも反応しない。

まさか釣れるはずもない。

「ねえガム。どうしましょう」

「そう言われましても…… 」

困り顔。

さすがのガムもこの難題にはお手上げ。

「そうだ。召喚獣を使うのはどう? 刺激を与えればそのうち姿を見せると思うの」

「はい? 」

「だからガムが召喚した獣で…… 」

「あれはペガサスだって言いましたよね? 懐いたのである程度はコントロールできると思いますが」

「なら早くお願い! 」

「もうどこかに行ってしまいましたよ。あの時はたまたま近くにいたので一芝居打ちましたが今回は同行してないので無理です。ほらどこにもいない」

「確かに…… ねえ、本当に召喚できるんでしょう? 」

「どうでしょう…… 」

断言は避けるガム。これ以上聴いても無駄。


「ラララ…… 」

急に歌いだしたガム。頭でも強く打ち付けたとしたら大変だ。

「ほらステーテルも」

「どうしたと言うのガム? 」

「この展開だと歌声に誘われてニッシ―が現れるかもしれません」

「まさか…… 」

「試す価値はあると思います」

しょうがないなあ。付き合うか。


「川に住むニッシ―。
どこにいるの?
ここかしら?
お願い出ておいで
怖がらなくていい。
抱きしめてあげるから。ららら…… 」


「そんな歌ありましたか? 」

「ううん。今、適当に作ってみた」

ニッシ―が現れるまで繰り返す。

「ちょっと…… あまりにも無茶苦茶で耳にも良くありません」

ガムの戯言は無視。歌いながら下流に向かって歩き出す。

「耳が! 耳が! 止めて! 」

ガムの訴えは聞こえない。

「もうガムも手伝ってよね! 」

「しかし…… あまりにも危険です」

耳を塞ぐガム。

「そんなに嫌だったの? 」

「とにかく他の歌でお願いします」

「ではニ―チャットの歌でも」

「もう! 」

歌い始めるとすぐ反応があった。

川の流れる音に混じって獣の鳴き声。

どこ?

音のする方向には……

巨大な鳥。

怪鳥の姿が。

                 続く                      続く
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