ド・ラボーの地位を得ましたのでさっそく王子様を奪って見せます! 理想の王子様を求めて世界へ

二廻歩

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裏切りのワンド王子

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きゃああ!
うわああ!

悲鳴が響き渡る。

まさか乱射王子が押し掛けるなんて夢にも思わなかった。

悪夢再び。


「伏せて! 」

冷静な指示。まるで血が通っていない。

あらかじめ予知していたかのような動き。

「さあステーテル! 」

その声の主はガム。


「ガム? どうしてあなた…… 」

「いいから早く伏せて! 」

乱射王子の異名は伊達じゃない。手に持った銃を躊躇することなく乱射。

晩餐会の悲劇が繰り返される?


「国王! 国王をお守りしろ! 」

親衛隊が突入。国王の盾になる。

ガムの冷静な判断と親衛隊の捨て身によって国王に害が及ぶことはなかった。

「チッ! 馬鹿が何をやっている! 」

苛立つワンド王子。間違いなくこの男が首謀者だ。

「国王をやれ! 早くしろ! 」

ワンド王子は謀反を企てた。首謀者である以上ももう後には引けない。もう隠すことなく堂々と乱射王子に命じる。

「いいか! 国王をやったらうるさい奴らもついでに始末してしまうのだ! 」

乱射王子は頷き国王を目がけて発射する。


「配置に着け! 国王をお守りしろ! 」

リーダの指示で国王を囲む。

防御は完璧。国王を完全に隠すことに成功。

これでは作戦は失敗。計画が破綻することに。

ワンド王子は苛立ちを隠せない。


王位継承を巡っての熾烈な戦いはもはやルール無用となってしまった。

私はどうしたら?

国王を守ることもできずサンスリン様を引き離すこともできずエルス王子の陰に隠れるのが精一杯。

「フフフ…… 往生際が悪いですよ。国王」

「ワンドよ! まさかお前? 」

「どうしても助かりたいと言うなら王位を譲りこの者たちと一緒に出て行け! 」

ワンド王子は取りつかれたかのように喚き散らす。
 
「この愚か者が! 」

お茶目で温厚な国王が鬼になった。

それも致し方ないこと。いくら戦いだとしても強硬手段に出たのだ。

「国王。いえ父上。お立場がお分かりになっておられないようだ。はっはっは! 」

勝ち誇って高笑い。

「この爺に分からせてやりなさい! 」

乱射王子は従うしかない。銃口を国王に向ける。しかしもちろん親衛隊が盾となっている。

睨み合いが続く。


「良かろう。国王は後回しだ。さああの者どもを始末せよ! 」

ワンド王子は弟たちを始末するように命じる。

血の繋がった本当の兄弟だと言うのに何の躊躇もない。本物の悪魔。

「いいかよく狙え。撃ち損じるなよ」

余裕のワンド王子。乱射王子に選択の余地はない。処罰される身。取引に応じたのは止むを得ないこと。


だがもちろんそんなことは百も承知のガムが参戦。手を叩く。

こけおどしのつもりだろうか。だが乱射王子に通じるはずがない。

「おいどうした早くしろ! 」

痺れを切らしたワンド王子が懐から国王のコレクションの一つを取り出す。

「ほら急ぐぞ! 」

乱射王子はエルス王子に照準を合わせる。

「さあやれ! 」


バンバン

再び手を叩き合図を送るガム。

一体何? 刺激するだけ刺激させてどうしようというの?

ガムに反応した乱射王子は照準をワンド王子に合わせる。

「おい何をしている! 相手が違うだろうが! 」

怒り狂うワンド王子。だが乱射王子は聞く耳を持たない。


「ホホホ! 」

国王が間に入った。

「もう良かろう」

「えっええ? 」

ワンド王子は混乱するばかり。

「どういうことだ? 」

焦ったワンド王子は銃を落としてしまう。

「さあ今だ! 取り押さえよ! 」

「確保! 」

一瞬何が起きたのか分からなかった。理解が追い付かない。

これは一体? 何が起きたのガム? 
 
「どういうことだ! なぜだ? 」

ワンド王子は取り押さえられてもなお抵抗を続ける。哀れな男。


「ホホホ…… まだ分からないのか? どうだ二人ともこの答えが分かるか? 」

訳が分からないと呆然とするエルス王子。

頭の切れるサンスリン様はもう気付いたようだ。

「父上。一芝居打ちましたね」

「ふふふ…… サンスリンよさすがだ。一歩リードと言ったところかの」


ワンド王子は取り押さえられ乱射王子も大人しい。とりあえず危機は脱した。

                  続く
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