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突入!

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イーチャットに戻された太郎王子。

処刑まで残された時間はわずか五日。

太郎待っててね。必ず助けに行くからね。


夜明け前。辺りはまだ真っ暗。

「さあそろそろ支度しろよ」

ドッドが急かす。

「ちょっと待って! あの光は何? 」


ドッドが言うにはこの小屋は隠れ家みたいなものでハッシャの仲間にも知られていない場所。

仮に把握されていたとしても地元の者以外ここを知らないはず。

だからハッシャから裏切り者が出ない限り疑われるはずはない。

そう言う意味ではここは最適な場所。

だがドッドの裏切りを察知されていては無意味だ。


光が揺れる。それも一つや二つではない。

外が騒がしくなってきた。

このまま大人しく夜明けまで待っては危険。

「ドッド…… 」
 
「済まねえ。俺としたことが…… 」

松明を持った男たちが喚きたてる。間違いなくハッシャの連中だ。

「早く出てこい! 」

「ふざけるな! 」

ばれたようだ。さあどうすればいい? ここに籠城するわけにもいかないし。


光の数がどんどん増えていく。夜明けと同時に突入する考えらしい。

「ほら大人しく降参しろ! 」

脅すだけ脅して決して中に入ってこようとしない。

「くそ! 舐めやがって! 」

「ダメ! もうお終いだわ」

「諦めるなんてスティーらしくない」

「だってもう無理。逃げ切れるわけがない」

「ふふふ…… まあこんな時の為に裏口がある」

「嘘? 」

「ドッド様に抜かりはない! 」

「ドッドあなた…… 」

「あーあ! 仲間はやっぱり裏切れねいや」

意味深な発言。まさか怖気づいた? 確かに今ならギリギリセーフ。

留まるのもドッドの自由。この状況では彼を責められない。

引き渡せば許してもらえるかもしれないのだ。

「そんな顔するなよ。大丈夫だって! 仲間を信じろって! 」

ドッドの励まし。そう彼は昔の仲間。即ち我々に着いたのだ。

「さあ逃げるぞ! 」

投降するわけにはいかない。ここはドッドに任せよう。彼のテリトリーなのだから。


「ステーテル? 」

ガムが異変に気付いた。

「それでは太郎王子はイーチャットに戻ったんですね? 」

ドッドと話し出す。

「交代。夜明けまでもう少しあるので仮眠でもしていてください。私はこの男と話がありますので」

仲間外れになった気分。しょうがないから王子の様子でも見に行きますか。

準備完了。すぐにでもここを抜け出せる。

王子はドッドに任せて太郎を追うことにした。

今太郎はイーチャットにいるらしい。

ドッドの話ではクールシチャット付近に空飛ぶ馬車が置いてあるとのこと。


空飛ぶ馬車。

実際にあるなんて思わなかった。タレイのホラ話だと思っていたがドッドが見ているとなるとほぼ確実。

空飛ぶ馬車で一気にイーチャットまで飛ぶ。

そうすれば少なくても太郎が処刑される前に辿り着くことができる。

危険な賭けだがこのままナナチャットから戻っては絶対に五日以上かかり太郎の命が無い。

どうすればいいかは分からないがもう迷う暇も意味もない。

すぐにでも空飛ぶ馬車を見つけなくては。

でもできればイーチャットにはあまり行きたくないな。随分悪さをしたもの。


松明を持った男たちが前方を包囲し始めた。

もうここも時間の問題。

「よし準備完了。そっちはどうだ? 」

「こちらも問題ありません」

「よし俺はこいつを担いで逃げる」

「気をつけて! 」

「ああそっちもな。俺も王子を送り届け次第合流するつもりだ」


夜明け。

大人しい。どうやら外にいる者も突入の準備ができたようだ。

後はリーダーの突入の合図を待つだけ。

焦ってフライングするせっかちな奴もいるだろう。

「突入! 」

リーダーの指示で雪崩れ込む。

「おい! 居たか? 」

「こっちには誰も」

「同じく! 」

「ちくしょう! 一歩遅かったか。いいからよく探せ! どこに隠れてるとも限らない」


突入の混乱に乗じて裏口から逃走。

ドッドと王子はコンプラ王国へ。

二人はクールシチャットへ。


                      続く
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