上 下
15 / 104

下山 歓迎されざる者

しおりを挟む
五日目 (残り十日)

<おはようございます。今日も頑張っていきましょう。

未だ発見されてない不審者の緊急の対策会議が十一時に副村長宅で行われます。

関係者の皆様にはご出席願います。続きまして気象情報をお伝えします。

先月発生の台風が勢力を拡大し接近してる模様。ここ数日荒天する恐れがあります。

天気の急変に気をつけ台風の襲来に備えるようにしてください>

以上広報部


早朝。

マウントシーの洋館と小屋の間にある小さな泉から一人の少女が駆け出してきた。


白い装束を脱ぎ捨て周りに人がいないのを確認し着替える。

ゆっくりしていると始業の時間に間に合わなくなってしまう。

少し恥ずかしいが誰も見ていない。

この島が、このマウントシーの気候が大胆にする。

私はそんな人間じゃない。

どちらかと言えば皆の中でも大人しい方だし派手なことはしない。

でも時間が無いとなればこれはもう仕方ない。

分かっている…… 下品だって。はしたないって。どうかしてるって。

彼もやって来たっていうのに。

大河さんって言ったけ……

もう暑いな。


今の時期は大忙し。祭りの影響で立て込んでいる。

慣れたと言うのにそれでも思い通りに行かない。

私の順番だって当然自覚してる。でも朝は眠くて眠くてつい。

早起きは問題ない。ただ早寝ができない特別な事情がある。

寝ぼけまなこでは罰が当たる。神聖なものだから。

それに私だけの問題じゃない。マウントシーだけの問題でもない。島全体の問題。

だから目を覚まして真剣に取り組むことが重要。

自分には自分の役割がある。きっちり果たさなくちゃ。

ふう急ぎましょう。

着替え終え身だしなみを整えると脱ぎ捨てた物を袋に入れ濡れた髪をタオルで拭く。

最後にカチューシャを装着。

急いで本館に向かう。


太陽の力も弱まり強風が熱気を和らげ雲が広がっていく。

急激に湧いてきた雲。これは良くない兆候。

下り坂になる前触れ。昼前には雷雨となるだろう。

どうやら近くの島ではもう雨が降りだしてるようだ。


本館では一人を残し着席していた。

「今日は緊急会議参加の為大河さんはお休みです。

マウントシーを離れるそうです。残念ですね皆さん」

「あのハッピー先生…… 踊りの練習はどうすればいいでしょうか? 」

昨日ペアで練習したので当然今日もと思ってたらこれだ。私はどうすれば?

「ええ、そうですね。本日は台風接近の為練習は行いません。

各自午後は大人しく館内で過ごしてください。

私は食糧の調達に行きますので留守は任せましたよ」

「はい」

少々不満だが従うしかない。まだ祭りまで日数がある。ここは無理する時ではない。


その頃……

山を下り徒歩で副村長宅に向かっているところ。

遅刻しそうなのでダッシュ。

山を下りると副村長宅へ一直線。

こっちで間違いないよな。

付近までたどり着くと目印を頼りに副村長宅へ。

一度お邪魔したことがあるので迷いはしないが細かくまでは覚えていない。

道中それなりに島民を見かけたが挨拶してもすぐに引っ込んでしまい話にならない。

これは歓迎されてないな。

俺が一体何をしたと言うんだ? 今年はまだこの島の者に迷惑をかけた覚えはない。

やはりこの島の連中はよそ者を嫌っている節がある。

俺がいくら努力しようが無視されてはどうにもならない。


午前十一時。定刻通り緊急会議が開催された。

まず副村長から一言。

「ええ、詳細は後述するとして島内に潜む不審者が何者か話しておきたいと思う」

正装のアロハシャツが開けっ放しの窓から入ってくる風でたなびいている。

外では中の様子を神妙な面持ちで数人の島民が窺っている。


二日目のシャツにネイビーの半ズボンで臨む。ポリポリと背中を掻く。

さっそく目ざとい参加者の餌食になる。

「あの副村長。この方は? どこから取ってきたやら…… 」

「ええまったくですよ。困った人だ」

「まさかこいつ例の不審者? 何しにきやがった! 」

不満を露わにする島民。

「静かにせんかみっともない! 今紹介するところだろうが! 」

副村長の一喝で皆黙る。


「この若者は儂の紹介でマウントシーの洋館に滞在している。

ここ最近目撃されていなかったのはそう言った事情からだ。

マウントシーはご存知の通りここから随分離れている山の上。

わざわざ登りにでも行かない限り会うことはないだろう。

お主らに誤解される前に正しておこうと思って集まってもらった。

いたずらに恐怖されてはそのうち伝染してしまう。

お主らなぜつまらない妄想を抱くのだ。彼は見てのとおり立派な青年ではないか」

副村長が吠える。


こうしてようやく島民に受け入れらたかと思われたが……


                  続く
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ロリ巨乳化した元男性 ~快楽なんかに絶対負けない!~

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:92pt お気に入り:56

誰かが彼にキスをした

青春 / 連載中 24h.ポイント:4,232pt お気に入り:1

やらないでください

ホラー / 完結 24h.ポイント:2,811pt お気に入り:0

雨といっしょに

SF / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

愛と浮気と報復と

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:163

闇ギルドの影は目的を果たすために戦い続ける

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:44

処理中です...