ファイブダラーズ~もう一つの楽園 囚われの少女と伝説の秘宝 夏への招待状シリーズ①

二廻歩

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告白 見せたいもの

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「どうしたんだ? しっかりしろ! 」

私は大河さん。あなたに悩まされてるのよ。

あなたが居なくなってくれることが一番なんじゃなくて?

だからお願い私の前から消えて!

そしてもう二度と私の前に現れないで!

私はあなたが嫌いなんじゃない。

あなたを見ると自然と一年前の悲劇を思い出してしまう。

忘れよう忘れようとしたけどあなたが来てからはもうこびりついて取れない。

そうもう逃れられないって分かった。


「大丈夫か? おいドルチェ! 」

「いやそんなこと…… 絶対あり得ない。あり得ないんです! 」

「何があり得ないんだ? お前少しおかしいぞ」

馬鹿なんだから。このマウントシーに来た者でまともなのは一人もいない。

まともに見えるのはそう繕っているだけ。

私を含め皆狂ってる。それはハッピー先生だって。


「大河さん。私とどこかで会いませんでしたか? 」

彼があの少年のはずがない。でもそうであって欲しいと願う。

そうすれば罪悪感から悪夢から逃れるのも可能。

「たぶんないよ。変なこと聞くな」

疑いの目で見る大河。当然か。

ただおかしいと思われてるのは間違いない。いや面倒臭い女だと思われてるかも。

「では私を見て何か思い出しませんか? 」

答えに詰まる大河。


「いえやっぱりあり得ない。妄想のせいで勝手に都合の良いように解釈して」

「だから何があり得ないんだドルチェ? 」

困惑する男。

仕方がない。ここは話を進める必要があるな。

「この後時間があったら私の部屋へお越しください。見せたいものがあります」

上の空で頷く男。きちんと聞いてたか心配。


午後の練習を休む。

今はドルチェだ。彼女の精神が心配だ。

これ以上放置すれば最悪心が壊れてしまう。

やはりここは思い切ってすべてをハッピー先生に告白し指示を仰ぐ方が良い。

俺の力ではどうすることもできない。

弱っている彼女に俺は何もしてやれない。

一年前とまったく同じ。

あの男に付きまとわれ無理矢理連れて行かれた。

もしあの時何も起こらずに奴の計画通りになっていたら……

マウントシーも無茶苦茶になっていただろう。

あの時俺を誘ったのは奴を疑っていたから。そして奴から守ってもらいたくて。

ずっとあの時のことを考えていた。

なぜあんな奴と付き合ったのか?

優しい彼女のことだから奴の強引さに負けたのだろうが。

奴さえ俺たちに割り込んでこなければずっと幸せだったはず。

ずっと二人の関係は続いただろう。


二人は一度別れ午後に再びドルチェの部屋で。

トントン
ドンドン

迎え入れられる。

きれいに整理整頓されている部屋を見ると気持ちがいいもの。

まったく敢えて部屋に呼ぶなんてどうしたのだろう。

朝から様子がおかしかった。

偶然朝に会ったものだから動揺してるがよく考えればただの偶然だと分かるはず。

しかしよく片づけられている。

きれい好きなのか几帳面なのかまめなのか。

それに比べて俺の部屋は汚い。

その辺に物は散らばっているしゴミはそのまま。

臭いも強烈。

一週間でどの部屋よりも汚れている。

片すつもりが無いからいいんだけど。

やはりきれいな部屋を見ると心が落ち着く。

まあブリリアントにでも頼めばやってくれるだろうけど余計なことさせたくない。

「どうしました大河さん? 」

女の子の部屋に入るのは慣れてる。

幼いころからお嬢様の部屋に出入りしていた。

だからなんてことない。

「いや緊張するなと…… 」

ブリリアントは俺を慕ってくれるし二人っきりでも楽だ。

今みたいに息苦しくない。

「さっそく本題に」

ドルチェは焦っている?

「あらかじめ断っておきますが私を本当に覚えていないと? 」

またその質問かよ。どう答えてもらいたいのだろう。

「ああ、いやどこかで見た覚えも…… 無くもないかな…… 」

「残念です」


「喋り方に特徴が無いんで識別される要素も限られてしまうと言うか。

うーん君みたいな美人なら忘れないと思うんだけどな」

まったく心にもないことを言っちゃって。これだから男に頼れないと言うのよ。

とりあえずお礼を言うのも礼儀。

「ありがとう大河さん」


「それで見せたいものがあるって…… 」

「私のすべて」

「冗談だろ? 」

後ずさりする。

「何を勘違いしてるんですか? 」

「いや君がいきなり脱ぎだすと思って焦った。いやそんなはずないか」

「もう茶化さないで! 」

本気で怒ってしまったようだ。いや俺にどうしろと?

「ごめんごめん。悪かった」

ひたすら謝る。なぜこんな展開?


「私が見てもらいたいのはこれです」

気を取り直して引き出しを指さす。

「一番下の段を開けてください」

これは告白?

まさか俺を気に入ってくれた?

「分かったよ」

上から順に引き出しを開け始める。


                続く
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