夢で見た話をまとめてみた

とみー

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とある高架線の下で

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目の前には、いつも生活を共にしていた両親が横たわる。
さっきまで乗っていた車は横転し、横たわる両親の奥で煙をあげる。
俺に背を向けて立つ黒衣の男が、右手に持ったダガーナイフを震わせながら呟く。
「俺は、パンダは、全員殺す・・・」
心なしか辛そうに聞こえた男の声は、俺に向けられたものではなかったが、相当な憎悪がこもっているものだとわかった。
「おい・・・っ」
立ち上がり、男に掴みかかろうとしたが、力が入らず膝から崩れ落ちる。
ああ、そういえば横転した車から出て両親が襲われるのを見た時に、何ヶ所か刺された気もするし、銃声も聞こえたっけ。
白いワイシャツに赤い跡がはっきりと見える。
これは、俺の血か。
「くそ・・・・・・」
いつの間にか、男の姿はない。
かわりに見慣れない、だが敵ではない人間が何人かこちらに向かってくる。
「運べ!」
「まずは倒れてる人からという話だ」
「坊っちゃんは俺達と一緒に」
傷ついたわき腹を庇いながら、男達と一緒に走る。
人通りの多い大通りに出る前に、傷を隠すように上から大きなコートを羽織らされた。
「坊っちゃん、大丈夫ですか、まもなく叔父さんが来ますから、安心してください」
返事をしたいが、声がでない。
傷ついているわき腹も痛みを感じない。
とにかくこの人達についていくことにしか、今は集中できなかった。
叔父さん。父親の兄貴。
俺の尊敬する人だ。
あの人が来るなら安心できる。
例え、今のような状況でも。
「坊っちゃん!」
駅前にでると、とうとう足が動かなくなり、倒れてしまった。
それでも必死に立ち上がり、一緒に来てくれた男の肩を借りる。
引きずられるように歩いていると、突然周りの人の足が止まり、ある方向を向いた。
俺は、歩くことも意識も限界でその場に座り込んでしまう。
「遅れてしまったかな、待たせたならすまないね」
「お疲れ様です」
周りの人間が答える。
俺は下を向いたまま、叔父さんの方を向くこともできずにいた。
「坊っちゃん、わかりますか」
声がとても遠くに聞こえる。
わかる。わかるんだけど。
「坊っちゃん、聞こえますか、旦那が到着されましたよ」
聞こえる。
でも、答え、られない・・・・・・。
「これはまずいねえ、早く・・・・・・」
叔父さんの言葉を最後まで聞けないまま、俺は意識を失った。
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