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デスゲームです!
しおりを挟むヤバい、ヤバい、ヤバイ……
このままじゃ死ぬ!死ぬ、しぬ、シヌ…………
ああ、こんなことになるならデスゲームになんて申し込むんじゃ無かった!
こたつが恋しくなる冬の事だった。
息が詰まりそうな狭いアパートの一室で、いつものように自堕落にネトゲ生活を送っていた俺ことアキバは、生きがいとしていたゲームすら楽しめなくなっていた。
かといってテーブルの足の隅に置かれた、おかきやホコリにまみれた就職案内雑誌を開く気にもなれず、天井を電池切れの機械のようにじっと見つめていた。
「ああ、なんかないかなぁ、俺の天職が舞い降りてくるイベント的なさ、『君、うちのところで働いてみないか?』って大企業の社長に言われて、そこで働いてみたら俺大活躍!みんなから称賛されて、尊敬されて……それでー」
などと、くだらない妄想をしていると、机の上のスマホからテレテテレテテレテテン!テレテテレテテン!と電話の着信音が鳴る。ガムみたいにべったりと床に張り付いた体をひっぺがし、スマホを取って画面を見てみると、大学時代の友人だった「中村」の名前。長らく人と話していなかったので、久しぶりに人と話せることを少し嬉しく思いながら、電話に出る。
「中村か?」
「おお、アキバ!久しぶりだな!元気にしてたか?」
ハキハキと活力が溢れる声が聞こえてくる。
「まあ、奇跡的に病気にはなってないな」
「まったく、ダメだぞ!ちゃんと外出なきゃ」
「おい、勝手に引きこもりだって決めつけるなよ」
電話に出て早々にディスってきやがって。なんだこいつ。
「だって実際そうだろ?」
「そうだけど……」
勝手に引きこもりと決めつけられた怒りに任せて電話を切ってやろうと思ったが、それを堪えて話しかける。
「で結局、要件は何なんだよ?」
「あ、そうそう、久々に会って話でもしないか、って誘おうと思ってさ」
「それはいいが……今は外食できるような金持ってないぞ俺」
「『今は』じゃなくて『今も』だろ?」
「……そんなこと言ってると友達いなくなるぞ」
いちいち痛いところをついてくるやつだ。話していてイライラする。
「まあとにかく、俺が奢ってやるからいつものとこにこいよ、それじゃっ!」
「あ、ちょっ」
ブツっ、プー、プー、プー……あいつ勝手に電話切りやがって。スマホを布団の上にボスっと投げ、床にゴロンと寝転がる。
さんざん侮辱された挙句勝手に電話を切られ、苛立ちが込み上げてきたがそれよりも久々に友人に会えるということに、アキバは非常に舞い上がっていた。思えば、この軽率な感情がこれから起こる事件の引き金となってしまったのかもしれない。
………体育館ぐらいはある、広めのホールの中。その灰色のホールは薄暗く、その中央には20人くらいの男女が横たわっていた。そのうちの一人の男が目を覚ます。ボサボサ髪のその男は眠たげな目で、横たわった人たちや周りを見回す。しかし、男はその見覚えのない景色に、明らかに戸惑っているようだった。男がしばらく困惑していると、他の人々も段々と起き上がり始めた。そして、その誰もが同じようにこの状況に動揺しているようだ。その中の大柄な男が、ボサボサ髪の男に話しかける。
「なあ、あんた何かこの状況知ってるか?」
ボサボサ髪の男は答える。
「さあ…‥俺も全く分からないんです。友達に飲みに行こうって誘われて店に向かっていたら急に目の前が真っ暗になって……」
「それで、気がついたらここ、ってわけか」
「はい……」
「そうか……実は俺もあんたと同じような感じなんだ。気がついたらここにいて……」
近くにいた長髪の小柄な女性も、2人の会話に入ってきた。
「どうやら、ここにいるみんながそうみたいね……。一体どういうことかしら?」
「わからないですね……でも、ここにずっといるわけにもいきませんし、とりあえずここを出ましょう」
「そうだな」
他のあたりでも段々とざわつき始めた。それぞれが不安や動揺を顔に浮かべている。
そして、ボサボサ髪の男と大柄な男が出口を探そうと動こうとした時、ホールの前方のステージがカッ、という音と共にライトアップされた。まるでここだけに注目してくれ、と言わんばかりに必要以上に眩しく照らされたステージ。あまりの眩しさにその場にいた皆が手で顔を覆う。
そして、ステージの舞台袖から、コツ、コツという足音が聞こえてきた。
「な、なんだ?」
中央にいた人々はみんな急な展開に動揺していた。そして、その舞台袖から現れたのは、1人のピエロだった。そしてそのピエロは、明るく、ハキハキとした口調で、しかしどこか不気味な声で、こう言い放った。
「みなさん、今日はお集まりいただき誠にありがとうございます。
唐突ですが、今回、皆様には『デスゲーム』に参加していただきたいと思います!」
「え?デスゲーム?ちょっと待って、どういうこと?」
「そんなの聞いてないぞ⁉︎」
「なんかのイベント?」
中央にいる人々は『デスゲーム』という意外すぎる言葉に皆、驚き、困惑しているようだ。
この状況をまだ把握できていないのか、オロオロしている人、デスゲームなど冗談に決まっている、とたかを括っている人、不安と恐怖で怯えている人、それぞれが別々の反応を見せる。その中には、当然、急にここに連れてこられ、デスゲームに参加しろなどとふざけたことを言ってくることに対して、怒りを露わにする人もいた。
さっきボサボサ髪の男と話していた、大柄な男である。男は前にいた人たちをかき分けて、ステージ上によじ登った。そして、ピエロの胸ぐらをガッと掴むと、
「おい、ふざけたこと言ってねぇでさっさとここから出せ」
と、冷たい口調で、しかし殺意に満ち溢れた目で睨みつつ、そう言った。
しかし、ピエロは特に驚きもせず、
「やれやれ、こまるんですよねぇ、こういう人がいると」
と、まるでいつも通りかのように言うと、左手を出して、パチン!と指を鳴らした。
パン!と言う銃声がホールの後ろ側から響くとともに男の首がガクン、と勢いよく振れる。そして、俯いた男の顔を見るとピエロはやけに明るい口調で話し始めた。
「はーい、ま、こんな感じで皆さん、反抗してきたらすぐに容赦なくぶっ飛ばしていくので、よろしく!…………って、いつまで掴んでんだ?コイツ。いい加減倒れ
「おい………痛てぇじゃねぇか………」
ピエロを掴んでいた男がそう言い放つ。ピエロはギョッとした表情をして、
「な、ななんで生きているんだ⁉︎の、頭に直撃したのに!」
と、困惑の表情を見せるが、男はそんなことに構わず、
「ふざけてんじゃねぇぞクラァ!!」
と叫んだかと思えば、左腕で胸ぐらを掴んだまま、ピエロの顎を思いっきり殴り上げた。ピエロは
「だわびゅ!」
という断末魔を上げながらホールの天井に頭をぶっ刺さした。
ピエロは手足をぶらん、ぶらんと力なく揺らしている。
…………………え?ええ?ナニコレ?俺だけではなく、周りのみんなも、ただ唖然としていた。
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