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11話 お見通し
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(気付いていたの⁉︎)
ルシファーも完璧な女装だと思っていたのに簡単に見破られ、目を瞠ってフィリップを見た。
「…何だ、二人ともそんな顔をして。気付かないわけないだろう?」
と、机に肘をつき、当たり前のような顔をして、フィリップは冷静に続けた。
「いくら顔が女性っぽいとは言っても、服に浮きでた筋肉までは隠せてないぞ?女性はどんなに鍛えてもそこまでの筋肉にはならない。それに剣ダコのできた指を持つ侍女がどこにいる。よっぽど鍛錬してきたのだろう?」
指摘されたルシファーは慌てて両手の指を見た。確かに剣を使う時に擦れる部分がでこぼこしている。
(こんな細かいところにまで気付くとは…この皇帝相当な使い手だな…)
ルシファーの額から嫌な汗がつうっと流れた。
その様子を見て、フィリップは声を柔らかくして続けた。
「気にするな。どうせ正妃になるのを嫌がって、女しか入れない後宮へ入るだろうと思っていたから、最初から女性の付き人だけを連れて来るように言っておいたのだが、正妃で良いのなら従者をそばに置いても構わない」
「も、申し訳ございません、陛下!とんでもない裏切りでございました!煮るなり焼くなりお好きになさってください!ですが、全ては私の責任で仕出かしたこと。どうか、罰するなら私だけにお願い致します!」
エリーゼは膝を付き、どんな咎めも受ける覚悟で謝罪した。
「ちがう!姫様が悪いんじゃない!俺が無理に着いて来ようとしたんだ!悪いのは俺だ!殺すなら俺をやれ!」
ルシファーはエリーゼに駆け寄って必死に訴えた。
フィリップは呆れた顔で、落ち着いて話した。
「…はぁ…物騒な話でまた噂が盛り上がりそうだな…心配するな。私は怒ったりしていない。
こんなところへ来るのに護衛の1人も付けられなかったのは心細かっただろう。私の方こそ考えが足りなかった。すまないな。
部屋にはこちらの侍女を向かわせる。従者殿には王女の部屋の隣に部屋を用意しよう。しっかり守ってやってくれ」
あっさりお許しを出してくれたフィリップにルシファーはほっとすると、きちんと礼が言いたくなって、カツラを取り、丁寧に俯いて、「ありがとうございます…」と言いかけたのだが、しかし、カツラを外した瞬間…
「お、お前!その髪は…⁉︎」
と、今まで冷静沈着に話していたフィリップは、あまりの驚きにガタンッと音を立てて立ち上がった。
「ああ、これですか?さっき姫様が言ってた、いつもよく見ていた黒髪ってのはこれのことですよ」
ルシファーは自分の頭を撫でながら、歯に噛んでそう言った。『いつも見ていた』とエリーゼに言われたのが嬉しくて、自分でもう一度言いながらその喜びを噛み締めていた。
「王女の社交辞令かと半信半疑だったが…まさか、本当にいたとは…ははっ、そうか、お前も私の悪魔仲間」
フィリップは驚きながらもどこか安心したように少し笑って言った。
しかし、ルシファーは悪魔仲間と言われ顔を歪める。
「黒髪仲間ではありますけど、悪魔なんかじゃないですよ?そんなこと今まで一度も言われたことないですし?」
「こらっ、ルシファー!陛下に向かって失礼でしょ!」
エリーゼはいつもの姿に戻ったルシファーを見て、自分もいつも通りに戻ってしまった。
「ああ、構わんよ。それくらいの方が心地いい。怯えられないのは楽でいいんだ。
それにしても、ルシファー…といったか?
お前、この世界で黒髪を持ちながら罵られたことがないなど、よっぽどそこの王女に可愛がられていたんだろうな。
しかし、今まで幸せに過ごせていたのだということに、ここにいると気づいてしまうかもしれん。
もしここにいるのが辛かったら、いつでも国に戻ることを許可するから遠慮なく言うように」
フィリップはこれまでの自分の辛い体験を味わわせたくなくて、そう言った。
しかし、そんな心配はルシファーには無用だった。
「へんっ、そんなもん気にしないね。俺は姫様を死ぬまで守るって決めてるんだからな!」
「ははは、威勢のいい奴だ。それなら安心だな。引き留めて悪かった。もう行っていい。長旅ご苦労だった。ゆっくり休んでくれ」
「ありがとうございます」
エリーゼは最初と同じように丁寧にカーテシーをすると、今度こそルシファーと共に執務室を出た。
ルシファーも完璧な女装だと思っていたのに簡単に見破られ、目を瞠ってフィリップを見た。
「…何だ、二人ともそんな顔をして。気付かないわけないだろう?」
と、机に肘をつき、当たり前のような顔をして、フィリップは冷静に続けた。
「いくら顔が女性っぽいとは言っても、服に浮きでた筋肉までは隠せてないぞ?女性はどんなに鍛えてもそこまでの筋肉にはならない。それに剣ダコのできた指を持つ侍女がどこにいる。よっぽど鍛錬してきたのだろう?」
指摘されたルシファーは慌てて両手の指を見た。確かに剣を使う時に擦れる部分がでこぼこしている。
(こんな細かいところにまで気付くとは…この皇帝相当な使い手だな…)
ルシファーの額から嫌な汗がつうっと流れた。
その様子を見て、フィリップは声を柔らかくして続けた。
「気にするな。どうせ正妃になるのを嫌がって、女しか入れない後宮へ入るだろうと思っていたから、最初から女性の付き人だけを連れて来るように言っておいたのだが、正妃で良いのなら従者をそばに置いても構わない」
「も、申し訳ございません、陛下!とんでもない裏切りでございました!煮るなり焼くなりお好きになさってください!ですが、全ては私の責任で仕出かしたこと。どうか、罰するなら私だけにお願い致します!」
エリーゼは膝を付き、どんな咎めも受ける覚悟で謝罪した。
「ちがう!姫様が悪いんじゃない!俺が無理に着いて来ようとしたんだ!悪いのは俺だ!殺すなら俺をやれ!」
ルシファーはエリーゼに駆け寄って必死に訴えた。
フィリップは呆れた顔で、落ち着いて話した。
「…はぁ…物騒な話でまた噂が盛り上がりそうだな…心配するな。私は怒ったりしていない。
こんなところへ来るのに護衛の1人も付けられなかったのは心細かっただろう。私の方こそ考えが足りなかった。すまないな。
部屋にはこちらの侍女を向かわせる。従者殿には王女の部屋の隣に部屋を用意しよう。しっかり守ってやってくれ」
あっさりお許しを出してくれたフィリップにルシファーはほっとすると、きちんと礼が言いたくなって、カツラを取り、丁寧に俯いて、「ありがとうございます…」と言いかけたのだが、しかし、カツラを外した瞬間…
「お、お前!その髪は…⁉︎」
と、今まで冷静沈着に話していたフィリップは、あまりの驚きにガタンッと音を立てて立ち上がった。
「ああ、これですか?さっき姫様が言ってた、いつもよく見ていた黒髪ってのはこれのことですよ」
ルシファーは自分の頭を撫でながら、歯に噛んでそう言った。『いつも見ていた』とエリーゼに言われたのが嬉しくて、自分でもう一度言いながらその喜びを噛み締めていた。
「王女の社交辞令かと半信半疑だったが…まさか、本当にいたとは…ははっ、そうか、お前も私の悪魔仲間」
フィリップは驚きながらもどこか安心したように少し笑って言った。
しかし、ルシファーは悪魔仲間と言われ顔を歪める。
「黒髪仲間ではありますけど、悪魔なんかじゃないですよ?そんなこと今まで一度も言われたことないですし?」
「こらっ、ルシファー!陛下に向かって失礼でしょ!」
エリーゼはいつもの姿に戻ったルシファーを見て、自分もいつも通りに戻ってしまった。
「ああ、構わんよ。それくらいの方が心地いい。怯えられないのは楽でいいんだ。
それにしても、ルシファー…といったか?
お前、この世界で黒髪を持ちながら罵られたことがないなど、よっぽどそこの王女に可愛がられていたんだろうな。
しかし、今まで幸せに過ごせていたのだということに、ここにいると気づいてしまうかもしれん。
もしここにいるのが辛かったら、いつでも国に戻ることを許可するから遠慮なく言うように」
フィリップはこれまでの自分の辛い体験を味わわせたくなくて、そう言った。
しかし、そんな心配はルシファーには無用だった。
「へんっ、そんなもん気にしないね。俺は姫様を死ぬまで守るって決めてるんだからな!」
「ははは、威勢のいい奴だ。それなら安心だな。引き留めて悪かった。もう行っていい。長旅ご苦労だった。ゆっくり休んでくれ」
「ありがとうございます」
エリーゼは最初と同じように丁寧にカーテシーをすると、今度こそルシファーと共に執務室を出た。
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