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6話 入学式
しおりを挟む——入学式の会場では、大勢の生徒たちがひしめき合うように座り、
よくわからない教師たちの、よくわからない長話を、延々聞かされ続けて、もう随分な時間が経っていた。
そろそろ疲れているはずなのだが…
急に背筋をぴんと立てると、全員静かに壇上を見つめる。
第一王子として、そして主席として、アークが祝辞を述べるために、壇上に上ったからだった。
静かだった会場から、たまらず黄色い悲鳴が上がり、中には失神する女生徒まで出た程、アークのその地位と美貌と能力は生徒たちの憧れの的だった。
そんな中、アークは祝辞の最後に定型文が書かれた紙を置き、自分の言葉で話し始めた。
「私事で申し訳ないが、皆聞いて欲しい。
この学園に、今日、私の大切な婚約者も入学してきている。
私たちは、いずれこの国を背負うことになるだろう。
その時、皆を幸せにできるよう、ここで多くを学び成長したいと思う。
どうか、皆もこの国のために、共に学び共に成長しよう!」
おおお!
王子バンザイ!未来のお妃様バンザイ!
と、黄色い声だけではなく、男女入り混じった生徒全員の拍手喝采が式場内に沸き上がった。
その式場内で、フェリスもその様子を見つめながら他の生徒たちと同じ様に拍手をしていた。
あまりに沸き立った式場にアークは不安になる。
生徒たちにとっては国を思う王子の有難い言葉だったが、
アークにとっては、山のようにいる貴族令息に対して、俺の『大切な婚約者』に近づくなと牽制したかっただけなのだ。
…こいつら、わかってるのか?エレナに指一本触れてみろ。八つ裂きにしてやるからな…
そう思うアークの心が透けて見えたフェリスだけは、付き合いで拍手しながらも、やれやれと言う顔になっていた。
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