“いらない婚約者”なので、消えました。もう遅いです。


婚約者である王子から、静かに告げられた言葉。

――「君は、もう必要ない」

感情をぶつけることもなく、彼女はただ頷いた。
すべては、予定通りだったから。

彼女が選んだのは、“自分の記憶を世界から消す魔法”。
代償は、自身という存在そのもの。

名前も、記憶も、誰の心にも残らない。
まるで最初からいなかったかのように。

そして彼女は、消えた。

残された人々は、何かが欠けていることに気づく。
埋まらない違和感、回らない日常。
それでも――誰一人、思い出せない。

遅すぎた後悔と、届かない想い。

すべてを失って、ようやく知る。
“いらない存在”など、どこにもいなかったのだと。

これは、ひとりの少女が消えたあとに、
世界がその価値に気づく物語。

そして――彼女だけが、静かに救われる物語。


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