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27話 無効化の魔法

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——コンコン

「はい」

ノックの音にエレナが返事をすると、

「フェリスです。所長をお連れしました」

と、扉の向こうで声がした。

アークが立ち上がって、扉を開けにいく。

「所長、御足労をおかけしました。どうぞ、中へお入りください。

フェリスもすまなかったな」

と2人に挨拶すると、中へ通した。

中ではルーカスと、不安気なエレナが立って待っていて、

所長とフェリスが入ってくるのを見ると、

公爵家の子息令嬢らしく、ルーカスは丁寧に礼を、エレナは簡単なワンピースだがカーテシーをして迎え入れた。

「ああ、目覚めたばかりなのに、そんな気を遣わなくてもかまわんよ、お嬢さん。さあ、どうぞ、ソファへ座って」

と、小太りで70代くらいの人の良さそうなお爺さんといった風体の所長は、ニコニコしながら、エレナにそう言った。

「ありがとうございます。今日はこんな夜にわざわざ足をお運び頂きまして、本当に申し訳ございません」

エレナは本当に申し訳なさそうに詫びたが、
所長は見たことのない魔法と聞いていたので、わくわくしていた。

「ああ、かまわん、かまわん」

と笑顔で言いながら、ソファへゆっくり腰掛けた。

それを見て、全員話を聞くために、神妙な顔をしながらソファへ座る。

アークとルーカスが、ささっとエレナを挟んで座ったのを見たフェリスは、呆れ顔で所長の隣に座った。

所長はたっぷりと蓄えた白い髭を触りながら話し始めた。

「それで、まぁ、大まかな話はこのフェリス殿下から聞いておりますが、

確かにそういうことは今までに例がないし、わしも初耳ですなぁ。

ぜひ研究させて貰いたいものです。

それに、調べないことには、使い道も扱い方もわからんでしょうしなぁ。

だいたい1年から2年ほどあれば、ある程度扱い方もわかるようになるかもしれませんが…

しかし、魔法の力を全て無効化してしまう魔法とは…

…この世界には、この世界にある元素を使った魔法が色々あるのはご存知の通り。

火、水、氷、風、岩などはもともとこの世界に多い元素で、割と扱える者が多いのですがな、

しかし、そこのアーク殿下がお持ちのような雷魔法などは、元素を集合させて起こす電流。

その魔法要素を持つものは少ない。

あとは、あまり知られていないところで言うと、闇と光がありますな。

闇魔法については文献が残っているだけで、この国には今は一人もおりませんし、世界的にもいるという報告は上がっておりません。

わしが知っておりますのは、人の脳内を操れるような、精神に作用する魔法だということくらいですな。

もう一つの光魔法の方は、これも非常に珍しい魔法で、

大体の魔法は攻撃や防御に特化しておりますが、光魔法は治癒の能力を持っております。

これは大変に貴重な魔法ですが、驚くことに、この国で、最近その光魔法を持つ少女が発見されましてな。

来年には魔法学園に入ることになっておるはず。
この国の希望の1人と言えるでしょうなぁ。

わしの知る魔法はここまで。

お嬢さんのその魔法。『無効化の魔法』とでも言っておきましょうか?

それはわしも生まれてこの方聞いたことがない。
非常に興味深いですなぁ。

ぜひ!明日からでも研究所へお越し頂きたいと思っております!」

所長は真面目な面持ちでエレナに言ったが、内心はその魔法が見たくて見たくて仕方ない研究馬鹿だった。
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