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60話 うちへおいでよ

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「やはりカトリーナの動きは怪しかったな」

「ええ、そうね…」 

アークとエレナは馬車に揺られながら、学園からの帰路についていた。

「エレナ、お互い離れないように、できるだけいつも一緒にいよう。カトリーナに隙を与えるのは危険だ。

それから、食べ物にも気をつけておかなければならないな。

カトリーナが殺害に及ぼうとする時が一定でない以上、毒にはいつも警戒していないといけない。

俺はもともと王族だからそういう警戒はさせられているが…

そうだな…毒見役やそのやり方など、王宮の警護の方が安全かもしれないな。

カトリーナが入り込んで来たその婚約発表の時の殺害に関しては例外だが、

あの女が王宮に足を踏み入れない限り、王宮の方が安全かもしれない。

…エレナ?うちに来るか?

王妃教育でよく通ってくれているが、住み込んで最後の1年みっちり学びたいとか言えば何とかなるだろう」

アークはエレナの顔を覗き込んだ。
エレナの目は輝いて、アークの胸に飛び込んだ。

「はいっ、アーク様!私王宮へ参ります!アーク様のおそばにいたいです!ずっと離れたくない!」

「うわっ、エッエレナ!そんなにくっついたらダメだろう」

アークは積極的なエレナの態度に照れて、
手の置き所に困り、腕を宙に浮かせた。

エレナは二度の死と二度のアークの裏切りを経験し、もうなりふり構わなくなっていた。

しかし、アークにとっては急にエレナが変化したようにしか思えないので、お淑やかだったエレナの急変に戸惑っていたが、

自分のことをとにかく離さないようにするエレナがいじらしく、これまで以上にアークもエレナを愛おしく思った。

また離れなくなってしまったエレナを、宥めるようにそっと抱きしめて背中を撫でてやる。

「大丈夫。大丈夫だ。おれは今日も明日も死ぬまでずっとエレナを愛してるよ」

信じないと分かっていても、アークは繰り返しそう伝えた…

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