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62話 カトリーナの戦略

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———それから、3日後の朝、エレナは家族と門の前で別れを告げていた。


「じゃあね、ルーカス、元気でね。
お父様、お母様、行って参ります」

エレナは家族全員と抱きしめ合った後、そう言って、朝、いつも通り迎えに来た馬車に、アークにエスコートされながら乗り込んだ。

学園に着くまでの間、アークは隣に座るエレナに今後の説明を聞かせた。

「王宮の方のエレナの部屋の準備はできている。
エレナの警備についても手配済みだ。

何も心配いらない。

あとは、今日中に公爵家からの荷物が王宮へ移されるから、エレナは今日の学園の帰りから俺と一緒に王宮へ帰ろう」

アークは嬉しそうにエレナに伝えた。

「はい、ありがとうございます、アーク様」

エレナも嬉しそうに微笑み返す。

毎日王宮でアークと一緒に過ごせると思うと、幾分気持ちも安定し、以前の穏やかなエレナを取り戻しつつあった。


しかし、学園に着き、教室に入ったエレナに、青ざめた顔をしたマーガレットが慌てて駆け寄ってきた。

「エレナ!大変よ!カトリーナが大変なことを始めてるの!来て!こっちよ!」

マーガレットはエレナを食堂に引っ張って行く。

それを見た王子2人も慌てて追いかけた。

食堂は朝だというのに、外に声が漏れ出すほどがやがやしていた。

そこから順番に出てくる生徒たちは、皆、一様に惚けたようになって、何か手に持ちながら眺めている。

「おい、ちょっといいか?」

アークはその中の1人を呼び止めると、その手に持っている物をチラッと見た。

「これは…!君、悪いがこの紙ちょっと貸してもらえないか?」

「…いくら殿下でもこればっかりは無理ですよ。中で聖女さまが配られてますから、どうぞそちらにお並びになってください」

と、呆っとしながら去って行く。
アークは唖然としてその後ろ姿を見送った。

「アーク様?先程の方、何をお持ちだったんです?とても大事そうでしたけど?」

エレナはアークに尋ねた。

「それが…あの女、自分の絵姿と、『治療が必要な方はいつでも私のところへ来てください』と書かれた紙を配ってるらしい」

「…もしかして、それを口実に全員の目を見て何かしてるんじゃ…」

フェリスは険しい顔をして言った。

「確かにさっきの生徒の様子も、どこか呆っとしておかしかったな…

だとしたら、まずい!

このままではほとんどの生徒が洗脳されてしまう!

大貴族の大部分の子息令嬢が集まっているこの学園で、洗脳を広められてしまったら…

王妃にカトリーナを推す声が上がり出す可能性がある…

早く止めないと!」

アークはそう言いながら、もう人混みの食堂の中へ飛び込んでいた。

「あっ!兄上!気をつけてください‼︎」

フェリスの声が後ろの方で聞こえたが、アークはそれどころではなかった。
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