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24話 捕らえる権利
しおりを挟むコンコン——
「誰だ?」
「父上、僕です、マクロスです」
「ああ、入るがよい」
ガチャ、とマクロスは王の執務室の扉を開けた。
「失礼します」
「どうしたマクロス?そんな酷い顔をして。顔色が真っ青じゃないか。医師を呼ぶか?」
何かの書類に目を通していた王は、顔を上げて入ってきたマクロスを見ると、あまりに顔色が青ざめているのでそう言った。
「父上…ご心配には及びません。それより、どうか僕の願いをお聞き届け下さい」
執務机の前まで来ると、真面目な、しかしとても暗い面持ちでマクロスは言った。
「なんだ?改まって…?」
「…単刀直入に申し上げます。…兄上を…捕らえる権利を僕にお与え下さい!」
「なんだと⁇…それは一体どういうことだ?」
マクロスは全ての事情を王である父に伝えた。
「…なんということだ…カイルがそのようなことを?…いや、しかし…にわかには信じられんな…それは本当なのか…?」
訝し気に聞いてくる王に、マクロスは真剣な目で答える。
「僕は本当だと思っています。しかし、それが真実かどうか確かめるためにも、一度兄上を拘束する必要があります。
あろうことか!僕の婚約者に無体を働くなど、放っておけることではございません!
兄を捕らえ、真実を精査し、その上で処分を決めたいと思っています!」
「ふむ…確かに事実は確かめねばなるまい。しかし、捕らえるまでせずとも、普通に話を聞いてみても良いのではないか?」
王は顎を撫でながら、カイルのような人間にそのような振る舞いが果たしてできるだろうか、と内心思案しながら言った。
「父上…どこの世界に自分の罪を軽々しく話す者がいるのです?そんな方法ではいつまで経っても真実になど辿り着きませんよ?」
のんびりとした王の態度にイライラしたマクロスは、声に怒気を孕ませながら詰め寄るように言った。
「……しかし、マクロス。気持ちはわかるが真実を聞くまでは早まってはならんぞ?…急くなよ?」
マクロスの剣幕を見て、何やら嫌な予感がした王は先に釘を刺す。
「……分かっております。僕にとっても…大切なたった一人の兄上なのですから…だからこそ、ただ真実が知りたいのです」
そう言ったマクロスの目は…濁っていた。
「…わかった。ならばわしの私兵を貸してやろう。拘束するのに役に立つだろう」
「父上!ありがとうございます!」
「うむ。しかし、くれぐれも無茶はせぬようにな。それと、マリーサはどうしている?腹の子は?」
「はい、いつも通りに過ごしてはおりますが、私も注意して体調の様子などみていくつもりです。
兄上が犯人だろうと、そうでなかろうと、子が宿っているのは事実なのですから、僕はその子の父になって面倒を見ていく覚悟です。
それに、ドルマン侯爵家は桁違いの財力を保持していますから、兄上のことが明るみになりでもしたら、それを理由に王家に牙を向け兼ねません。
僕が結婚前に手をつけてしまったと言って許しを乞う他ないでしょう」
「…難しいことだな。とにかくカイルのことが本当かどうかわからないことには前には進まぬ。ではマクロス、カイルのこと…頼んだぞ」
「はっ、承知致しました!」
マクロスは意気込むと、王の部屋から颯爽と出て言った。
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